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崩れるワルツ
三角形は、外部の力の影響を受けづらい頑丈な図形であるという。
東京タワー、鉄橋、水分子構造、三位一体。世界のあちこちが三角形で溢れている。
ところで、命は「調べ」だという。畢竟ひとつのメロディーであるという。
ならば、かつての私の生はワルツであった。
簡潔で無駄のない、気高き3拍子。
そんなワルツの中に閉じ込められて、私は私のダンスフロアを独りきりでグルグルと廻り巡っていた。
床には決して陽の射すことがなく、リズムを刻めば刻むほど、孤独と厭世ばかりが黒いシミの様に拡がっていくばかり。
そうして幾夜を染めたことだろうー。
或る日、突如として陽が射した。
冷たいカーテンの向こうから柔らかな眼差しが幾重にもこの身に注がれたのだ。
そして私の愚かな努力を清々しいほどに打ち砕く。
孤独からの降板、あふれる涙。
ひとがひとである限り、所詮愛には敵わないのだ。
様々な人達との出会い、くれた言葉、触れた感性、背筋の凍る様な知性、霊性。
ほんとうに沢山のものを賜った一年だった。
かくして私の高潔なるワルツは崩れゆく。
3拍子たす1。
私の肉、霊、魂。そして、あなた達の眼差し。
四角形は衝撃や力にすこぶる弱く、脆い。
それは絶えず変わりゆく関係性の只中に身を置き生きるということ。
この世に遍くすべてのものに覚悟を持って関わるということ。
空間を凝固させていた蔦は枯れ、いちめんに花咲き誇るダンスフロア。
(何故ならいつか終わりゆくものだから)
願わくば、私の眼差しによってあなたの世界をも開かれますよう。
私のエッセイに目を通して下さった皆様へ。
今年一年、本当にありがとう。
2023.12.31 アサギマダラ