見出し画像

さよならクター、こんにちは

クリック
クリック
クリック

1999年、ディスプレイの前で、なわとびをするためにマウスを連打する手は止まらず、気づいたらマウスが壊れていました。

「一体ぼくはなにをやってるんだろうか」

そう思いながら、バスに乗り、新しいマウスを買いに向かうのでした。

新型コロナの影響で本当に大変だった2020年もあと2日で終わります。そして、2020年とともに終わるものがもうひとつ。Adobe Flash Playerのサポートが2020年12月31日をもって終了します。1996年の登場以来、色々なところでお世話になりました。大好きなゲームの公式サイトからブラウザゲームまで、これまでのインターネットライフでなくてはならないもののひとつでありましたが、時代の進化とともに、その役割を終えようとしています。Flashのゲームにも沢山出会いまして、年が変わると遊べなくなるというのは、ちょっと寂しくなるけれど、永遠に続くものはありませんし、仕方ないと思いつつ、その思い出を刻もうと、今、画面に向かっております。

さて、みなさんはFlashのゲームといえば何を思い浮かべるでしょうか。ほんとにいろいろありますよね。僕は何かなあ、と考えて思い浮かんだのが、札幌にあるゲーム開発会社、ギガ連射が1999年にリリースした「クターのナワトビ」を皮切りに数々のミニゲームをリリースしてきたクターシリーズ。これを書きながら「まぐまぐのメルマガ登録して新作楽しみにしてたよなあ。」なんてこと思い出し、思わず目を細めます。

カジュアルなゲームとの初めての出会いだったかもしれません。ぼくとビデオゲームの出会いは1977年頃のゲームセンターから始まり、そこからはビデオゲーム史1周目の最後尾を走り続け本日まで沢山のゲームと過ごしてまいりましたが、1977年から1990年中盤頃までのビデオゲームとのお付き合いは、それなりの投資と覚悟が必要な存在でありました。それがインターネットの登場で、気軽にゲームに出会えるようになりまして、その時に出会ったのがクターでした。

思い返すと、ゲーセンでコイン握りしめてた頃からカジュアルっぽいものに出会ってましたが、あの頃はワンコイン入魂の真剣勝負。1980年代のパソコン雑誌の投稿の中にもすでにカジュアルな息吹きがあった気がしますが、あれはプログラム腕自慢な場所でそもそも遊ぶのはプログラムを嗜む猛者ばかり。1990年に本格的なCD-ROM時代が訪れると雑誌の付録としてゲームがつくようになりましたけど、これも雑誌の付録という印象で僕の中でこれはカジュアルって感じはない。この時代、松本弦人さん率いるサルブルネイのジャングルパークやラショウさんが手掛けたイタチョコシステムの作品群に、アーケードやコンシューマにないゆるさを感じましたが、作家性も強くアートな気配がしてましたし、やっぱ違うなあ。カジュアルじゃない。この頃カジュアルと思えるのは、今考えるとポストペットぐらいか。

そんなこと考えながらぼくとビデオゲームの歴史辿っていくと「これはカジュアル」と言い切れる最初のゲームはクターになりそうです。

カジュアルなゲームってなんでしょうね。気軽なゲーム。格式ばらないゲーム。くだけたゲーム。シンプルなゲームであることは間違いないと思うけど、シンプルでも濃いゲームもあるしカジュアルってなんだよ!と、ゲームで遊びすぎたぼくは考え始めると底なし沼にハマってしまいますので、ここはバッサリと、カジュアルに、言い放ってしまうことにしよう。

ぼくが過去を振り返って、クターをカジュアルなゲームとの初めての出会いだと思っているのは、そうですね、かわいさかな。

いや、ゲーム内容がシンプルというのもあります。また、他の人や自分自身と競いやすいというのもあるかな。これけっこう重要な要素かも。超重要な要素な気もしてきた。でも、やっぱりかわいさかな。

「おまえなんやねん!ネコか!イヌか!」という、ネコ派にもイヌ派にも受けそうな風貌。その謎の生き物がナワトビに引っかかったり、牛乳吹いたり、リフト乗り損なったりした時に見せる間抜けさに、僕は誰からも好かれる間口の広さ、懐の深さ、そしてカジュアルさを強く感じてしまいます。ソリティアやマインスイーパやさめがめにはない、子供からお年寄りまでを一瞬で虜にしてしまうカジュアルさを感じているのでした。

画像1

そんなクターのFlashゲームで遊べるのもあと2日。さよならクター。ありがとうクター。クターは永遠に不滅です!

と、別れを惜しもうかと思いましたが、よくよく考えると、クターはフライハイワークスより3DS版が10作品ほど出ています。そしてそして、なんと、昨日2020年12月29日に、iOS版がリリースされました!

クターさん、こんにちは。

撤去されたら、ハードが壊れたら、サービスが終了したら、そこで終わってしまう世の中ですが、クターはもう少し、僕らの時代に留まってくれるようです。クターを思い出に刻むために書き始めたのに、投稿直前でまさかの展開に戸惑ってるのはナイショだよ。

まあ、とにかく、明後日には動かなくなるものも少なくない中、楽しい作品が残っていくことはいいことですね。素直に喜びましょう。ありがとうギガ連射、ありがとうクター。願わくば、1日も長く現役でいてくれますように。

サポート頂いたものは概ねゲーム会社に回ると思います