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「恋は光」に恋した話

「ただ、可愛い」
「ただただ、可愛い」

『恋は光』を観た感想は以上です。


ネタバレなしで、完璧に僕の気持ちを表した言葉が出てきたので、もういいんじゃないかな。でもネタバレ全開で書いてみたい気持ちもあります。というか書きたい。なので、ここからは、ネタバレありで書こうと思います。さすがに結末は書かないでおこうと思うのだけれど、それ以外は書いちゃおう。予備知識なしで観たい方は読まないで。でも、多くの人にこの作品の良さを知ってほしいなあ。むむ、僕はどうすれば。

観に行ったきっかけは、予告編を観て面白そうと思ったから。3回目のワクチン打ってからはなんだかんだで毎週のように映画を観に行ってる気がします。なので、春ごろ毎週のように予告観てました。恋愛がテーマの邦画は、基本対象外だろうなという目で見る事がほとんどですが、これはなんだか引っかかった。「楽しそうだな」と。その時は漫画が原作であることすら知らない状況でしたが、とにかくその直感に従って、仕事帰りに劇場に向かったのでした。仕事帰りはクタクタなので、予告の数分目を閉じて休憩タイム。2時間頑張る体力と気力を回復です。映画泥棒が終わったら本編の始まり始まり。

冒頭のカットでいきなり目を奪われます。She&Himの「Sentimental Heart」という歌が流れる中、ゆっくりと、ジュースを頭から浴びる女性。本作の主要キャラの一人、宿木(やどりぎ)さんがずぶ濡れで、友達に心配されるも「別に」と言い放つ。予告では人のものを欲しがる女性として紹介されていましたが、このカットだけで、それだけではない、とても可愛い女性であることを理解した。もう、このあとどういう展開になっても、この映画は信頼できる。冒頭の数分でその事を確信したのでした。

このあとカップを握り潰すところ、痺れます

この作品は、恋する女性が光って見えるという特異体質の主人公・西条(さいじょう)君。そばには彼のことを昔から好きな幼馴染の北代(きたしろ)さん。この二人の間に、西条くんがノートを拾ったことがきっかけで知り合うことになる東雲(しののめ)さんが加わって恋の三角関係に。そこに冒頭で紹介した宿木さんも加わり、お話が展開していきます。とても不思議な映画です。恋を語る映画です。恋を知る映画かもしれません。好きな人を想いあう映画なのですが、嫌みなところがほとんどない。少なくとも僕にはそう映る。

冒頭で心を鷲掴みにされ、その気持ちは最後まで途切れることはなく、僕はこの映画に恋をしてしまったのですが、どこが好きかと聞かれますと、まず「全編通して会話が心地よい」と答えます。とにかく心地よい。本能のままに言葉を発する宿木さん、理屈っぽい芝居じみたセリフが多い西条君と東雲さん。そのどちらにも合わせて言葉を繋ぐ北代さん。この彼、彼女らの会話をずっと聞いていたい。ここ数年で対面での会話が減り、リモートでの会話ではそれぞれの意見を述べるに留まりがちな現代で、この言葉を重ね紡いでいく心地よさは、とてもうらやましいものにも映ります。そういうものに飢えているのかもしれませんね。映画の中での彼らの言葉一つ一つが心地よく、心に沁みました。

この掛け合い好き

先に会話の心地よさを書いてしまったけど、やっぱりここが大事。三人の女性がみんな可愛い。三人ともみんな可愛い。大事なことなので2回言いました。

まず一人目。馬場ふみかさん演じる宿木さん、可愛い。人のものを欲しがる悪い女性という設定なのに可愛い。冒頭の、彼氏を奪われた女性からジュースぶっかけられるシーンの強さのまま、なかなかひどい性格なのに嫌みな感じがない。原作ではもう少し気持ちがぐるぐるしたところがあった気がしますが、映画ではそこからは一歩引いて、三人の関係を引っ掻き回しつつ、みんなの背中を押していく恋の交通整理係だったように思います。とはいえ存在感はしっかりあっていい。西条君と飲んだ後の勝ち誇った顔。そういった面を見せつつ、画廊で連絡先をゲットしてきたり、東雲さんの背中押したり、パジャマパーティ楽しみにしてたり、可愛い人です。最後の彼女めちゃくちゃ可愛いですよね。実は主人公かもしれません。宿木さんが幸せになることを心から祈ります。

続いて、平祐奈さん演じる東雲さん。とても可愛い。凛として清楚。スマホもパソコンももたず、身の丈に合った範囲でつつましく生きる。パンフに書いてあった、監督からの「スタジオジブリに登場するキャラクターのイメージで」というオーダーには爆笑してしまいましたが、たしかに、作中の雰囲気はマンガかアニメにしかおらんやろうという立ち振る舞いと可愛さです。リアルとファンタジーを行き来するような作品ですが、東雲さんは2.5次元だったのかもしれません。学校で宿木さんを前に嫉妬心に焼かれる自分を分析し大いに語る東雲さんも最高ですが(よっ、東雲屋!)東雲さんで度肝を抜かれたのは、意を決して西条君とデートに行くシーン。緊張で飲みすぎたのか、路地裏で、西条君の目の前で吐きます。銀魂ならまだしも、こんな女の子がキラキラした映画で、劇場版あしたのジョー2のキラキラしたゲロでも、海外アニメでよく見る虹色のそれでもなく、リアルにゲロを吐く。ジブリの主人公でとか言っといて吐く演技をさせる小林監督は鬼か変態です。しかしあのシーンは間違いなく東雲さんを魅力的にしていて、この後に、恋と、西条くんへの気持ちを語る東雲さんのセリフに重みを与えています。清楚キャラ、一周回って嫌みが増すこともありますが、あの嘔吐シーンを前にするとそんな気持ちを持つ人はいないんじゃないかな。と思います。凄いです。小林監督天才かもしれません。いつか岡山は倉敷の美観地区に行き、東雲さんが吐いた場所を僕のスマホの写真フォルダに残したいと思うマダオであった。

この後の「出ませんでした」の破壊力も凄いです。


最後のひとり、の前に、もう一人重要な人物について書いておきたいと思います。作品も終盤に向かうところで、西条君と同じ、恋する女性の光を見ることができる体質の子が出てきます。伊藤蒼さん演じる大洲央(おおすなかば)さん。伊藤蒼さんは、最近目にしたドラマや映画ではちょっと陰のある役が多い気がするんだけど、この作品ではめちゃくちゃ可愛くてキラキラしててよかった。先輩への恋心を語るシーンも、去り際の一言もとても可愛かったですね。こういう演技ももっと見てみたい気がします。

さてさて、最後は西野七瀬さん演じる北代さん。最高に可愛い。可愛いを連呼している自分がだんだん気持ち悪くなってきましたが、ほんとに可愛いので仕方がない。北代さんは、可愛くて切ない。西条に恋してるのに、西条からは光って見えない。という時点で振られている。という思いを抱きつつ、西条の友として居続けたいと願う北代さんが健気すぎる。しかも、東雲さんの問いかけにも真正面から答える。答えた上で、西条の幸せを願う。宿木さんも東雲さんも本当に可愛く描かれてるんだけど、僕はこの健気な北代さんが一番好きです。些細な表情のひとつひとつが愛おしい。西条君と北代さんの会話はただただうらやましいの一言。二人で飲んでるところ、釣具屋でのやりとり、釣りに行くシーン、電車のシーン、それから……、全部ですね。全部いい。北代さんは髪型も色々変わって可愛かったです。衣装も三者三様でとてもよかったのですが、北代さんはヘアアレンジも見どころでしょうか。あとメガネ。メガネかけてもりもり食べるシーン最高でした。そんなこんなで、今作で一番可愛いのは北代さんだと思います。僕は。

この三人、よく飲みます。飲んでるシーンが多い。普段、会社で飲み会に参加する時以外ほぼ飲まない僕が、あの幸福な空間に紛れ込みたいと、映画観終わったお昼ご飯に思わずお酒を頼んでしまったほどに楽しそうに飲んでます。宿木嬢は少し楽しくないかもしれないけれど。でも楽しそう。女同士の恋の火花が散ってもおかしくないという状況で、東雲さんと北代さんは、嫉妬心まで吐露しながら、西条君を肴に楽しそうにお酒を飲んでいる。こういった関係は成り立つものでしょうか。ある意味、恋する光が見える西条君よりファンタジーなのかもしれません。もし現実でこういう関係性が成り立つのであれば、それはほんとに素敵なことだと思うのですがどうでしょうか。どうでしょうか。とにかく、その様子を眺めているだけで大変幸福な気持ちになります。

可愛い女性三人に囲まれた西条君のことは特に触れなくてもいいかな。と思いましたが、そうもいかないか。東雲さんと北代さんが好きなのは西条君です。魅力がないはずはなく、なんというか、面白い。原作より理屈っぽさが抜けていい。そうなのだ。こんなに嫌味のない男子も珍しい。そこは恋する女性が光って見えるという要素が大きいかもしれません。特殊能力を持ってるが故の、恋愛との距離感がありますが、その前に彼は誠実です。西条君の誠実さは間違いなく、この作品に欠かせない要素の一つだと思います。しかしうらやましい。あんなにかわいい子達にチヤホヤされるなんて。ほんとにどうすんだ西条!と詰め寄りたい気分で最後の瞬間まで観てました。

宿木さんに引っ掻き回されつつ、東雲さんは西条君に告白します。大洲さんとの出会いをきっかけに、西条君に自分の気持ちを知られてしまう北代さんも想いを伝えます。クライマックスの舞台は岡山県立美術館。西条君の決断を見届け、最後のカットの後、タイトルと共に流れるShe&Himの『In The Sun』。「素敵な映画を観た」それ以外の感想が浮かばない。出演者のクレジットが終わり、スタッフロール前に1カット差し込まれ「最高の映画観た」という感情が上乗せ。観た後の感じがあまりに良すぎて、また味わいたくて、僕は結局初めて観たあとの1週間で合計3回も観に行ってしまいました。あの笑顔を大きなスクリーンで見れたのは本当に幸運だったなあ。観た後のご飯はいつも以上においしくて最高です。

僕はいいおじさんで、成人した娘もいますので、今恋愛映画を観るとお父さん目線で見てしまうことも少なくないんですが、これは『恋』について考える映画だったせいか、お父さんの気持ちが沸きあがることもなく楽しめたのもよかったかもしれません。年甲斐もなく「恋は素敵だな」と素直に思える。素敵な映画でした。

以上、『恋は光」の感想文でした。
劇中の歌のチョイスだけでなく、無音の使い方まで含めて、音楽も素敵な映画でした。作品を品よくしていた。ロケ地の岡山の風景も美しかった。叶うなら岡山を旅したい。釣りは無理だけど、飲みながら電車に揺られたい。

夏の大作を前に、そろそろ劇場上映は終わっちゃいそうな気もしますが、どうにかロングランしてはくれまいか。もし機会があればぜひ劇場で。


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