見出し画像

岐阜新聞 素描 第二話『空間に波動があればよい』 2022年11月9日(水)掲載

10年という月日は、ものごとを括るのに都合がいいものなのかもしれない。

もう、それを6回ほど繰り返してきたが、それぞれの10年が、割と均等に節目となって、その都度リセットされている。
リセットすれば、次は全く新しい章になるわけで、それぞれ独特な顛末がある。
振り返るとおもしろい。
自分が何を考えて変化していったのか見えてくる。

新聞に掲載する文章を書くなんて、とんでもないことだ。
というのが、依頼を受けて最初に思ったことだった。
だけど、こんな機会はもうないだろうなあ、とも。

もうひとつ、思い出せたことが。
岐阜新聞の素描への執筆の依頼は数年前に一度あった。
ちょうどコワーキングスペースをオープンする準備で、目まぐるしい毎日を過ごしていて、とてもその気になれなかった。
打診されたが、返事する暇もなく過ぎていった。
あの時はそんな感じだった。

ただし、今回は状況が全然違って。
少し落ち着いて、しっかり検討することができた。

コロナ禍になったこの2年ほどで、自分の日々の暮らし方のあらゆることが変わった。
その前は、嘘みたいに、ひと月に一回は大きめのイベントを計画していて、その準備とその運営で、人に会いまくっていた。
会っているだけで、その後に、何かを深めるということができないまま過ぎてしまったが、「今はまず、はじめの一歩を刻むしかない。」と覚悟してあえて自分を忙殺していた。
ただ、それでも少し抗うように、そんなガチャガチャした混沌の隙間を盗むように、心の奥に澄んだ瞬間が断続的に現れていた。

今回は、それらを思い出せる心の余裕があった。

そうか、まずあの瞬間を書こう。
ちょうどこの10年の、一番新しい章の『起』。
そう思って綴れた文章です。

忙殺される毎日の中で、澄み切った心境がありました。
自分でも驚いたのですが、固い決意と、覚悟も。
自身の真意に、誠実に向かいあうことを、一番大切にしていた時期だったと思います。

岐阜新聞 素描 2022年11月9日(水)掲載 第二話『空間に波動があればよい』


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?