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桜の色

早咲きの桜があちこちで咲き始めた。
若い頃から、桜はあんまり好きじゃないと思っていた。
春になると「さくら、さくら」と騒ぎ立てる世の中が、好きじゃなかったのかもしれない。
でも近頃は、素直に「さくら、いいなぁ」と思う。
来年も見られるかどうかわからない。そういう年齢になったせいかもしれない。

今の時期は河津桜が満開だ。
河津桜はピンクが濃くて、一昔前の小さな女の子のほっぺのようだ。
一足早い春を楽しめるからだろうか、最近は河津だけでなくあちこちで見かけるようになった。
くっきりと濃い色、艶やかなピンク色も味わいがある。
桜に限らず、この頃は強い色合いの花が増えてきたように思う。
4Kとか8Kとか、鮮やかな色彩を映し出すものがもてはやされる世の中だから、視覚もより強いものに反応するように変わっていくのだろうか。

私は、夢のように咲いて散っていく桜を美しいと思う。
そして、白にわずかに桃色がかった淡い色合いを美しいと思う。
自然の色は、たぶん4Kや8Kの色とは少し違う。
純色の中に白や黒の絵の具を少しずつ混ぜた、微妙なグラデーションで成り立っている。
くすんだ色合いもまた、美しい。

大きな音ばかり聞いていると、小さな音が聞きにくくなるように、強い色ばかり見ていると、淡い色、わずかな色味の違いがわかりにくくなるんじゃないかしら。
少し心配になる。

あとひと月ほどすると、ソメイヨシノの花が咲く。
山桜も、私の好きな大島桜も。
あまり人の多くないとっておきの場所へ、今年も花見に行こうと思う。

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