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また一歩踏み出す友へ

今日は久しぶりに晴れた。
都心の桜は満開で、少し強めの風に花びらが舞い上がる。
学生時代の友人に会ってきた。

彼女は去年、会社を退職した。30数年勤め上げた、外資系の会社を。
男女雇用機会均等法ができた時に就職したから、彼女はいつも「前例」になる立場だった。
「総合職」なんていう言葉はできたばかりで、大企業で男性に伍して働く女性はまだ少なく、働く側も雇う側も試行錯誤の連続だったに違いない。

その中で、文字通り戦ってきた友人。
去年の今頃は「もう疲れたから、好きに生きるわ〜」なんて言っていた。
この一年、学生時代に戻ったみたいに、一緒に食事をしたり、出かけたりした。
彼女の話は、ずっと専業主婦だった私には珍しいことばかり。
きっと、すごく薄めていた苦労話で、世の中の厳しさを垣間見せてくれた。

そんな彼女が、また働くことになった。
4月から、今度は日本の企業でスキルを活かすそうだ。
今日はそのお祝いだ。
「やっぱり働くことが好きなのかな」
そう言って笑った。
「お金をもらうのは嬉しいけれど、この年になると『社会とつながる』『役に立つ』という方が大事」
そうだねえ、と相槌を打ちながら、ちょっと心配になる。
彼女は、天然なのか故意なのか、不器用なくらい率直な物言いをするから。
優しいのに誤解されやすい。

無理はしないでね。体、大事だよ。
女性は90歳くらいまで生きる、とか言われていても、みんながそうとは限らない。
好きなことをしたくなったら、我慢しないでわがままになるといいよ。
無責任なヤツ、と思われるかもしれないけれど。
彼女には、笑っていて欲しいと思う。

今度、ご飯食べるときは、楽しい話ができるといい。
来年は私の好きな桜を見に行こう。案内するから。

新しく一歩を踏み出す人に、やっぱり桜はよく似合う。

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