シェア
田中あき子
2023年9月1日 22:58
落葉の章ハクシン(11) 広間から連れ出されたハクシンとアンジュは、身分を剥奪され牢に繋がれた。 明日はハクシンが幽閉の塔へやられるという日の夜、皇太子と皇太子妃がハクシンに別れを告げにきた。 皇太子は、ハクシンが好んだ果実酒を小さな盃に満たした。塔で我が身を振り返り、皇帝の赦しを待つように言う父に、ハクシンは皮肉な笑みを返した。「お父様は、やっぱりお父様ですね。お望み通りにいたしましょ
2023年8月31日 21:49
落葉の章ハクシン(10) 白玲は、力が抜けたように椅子の背にもたれて、ぼんやりと空を見つめていた。隣に座ったシノンがその手を握った。そんな二人を守るように、ナダルがじっと立っていた。 広間に満ちていた淡い光が赤みを帯びて、窓際に置かれた香炉の影が、長く尖って床に伸びた。「私、信じたくなかったの。ハクシンが私を嫌っていること」 ようやく我に返ったように、白玲がぽつりとつぶやいた。「私は
2023年8月29日 23:20
落葉の章ハクシン(8) 叩きつけるような白玲の言葉に、ハクシンは初めて顔色を変えた。「あなたに、私の何がわかるっていうの?」 余裕のある笑みが、ハクシンの顔から滑り落ちた。「私は自分の夢を叶えるために、自分の足で歩いていくことができなかった。そのもどかしさが、あなたにわかる? 友だちもなく、空想の中でしか自由に生きられない悲しさが、わかる? あなたを見ていると、本当にイライラする。あ
2023年8月28日 23:56
落葉の章ハクシン(7)「……それなのにあなたったら、ろくな防備もしないのだもの。頭が悪いだけじゃなく、詰めも甘いのよ」 蒼白になった皇太子が、ハクシンを黙らせようと手を伸ばした。 ハクシンはその手を振り払った。「私はずっとネイサン叔父様が好きだった。それは、叔父様だけが本当の私を見つけてくださったからよ。 愚かな大人たちは、私の見かけに騙されて、なんでも言うことを聞いてくれた。でも