見出し画像

三日坊主日記 vol.77 『上映中止につき払い戻し』

先日、珍しく妻と映画を見に行った。

妻は勤め人なのでなかなか時間が合わないし、生活する上での優先順位をつけていくとどうしても一緒に映画というのは少なくなる。映画は一人で観た方が浸りやすいというのもある。が、今回はいろんな条件が噛み合って一緒に出かけた。

90席ほどの劇場なのだが、その割にスクリーンが遠い(単なる印象かも知れない)気がした。予告編が始まると映写サイズが合っていない。つまりスクリーンに対して半分ほどの面積で上映しているのだ。それでなくてもスクリーンが少し遠い印象を受けたのに、これでは更に遠い。なんだか釈然としないが、まさか本編ではこんなことないだろうと、努めて気にしないようにした。

90席に対して客は10人ほどだろうか。以前は客が少ないと何だか得したような気分になっていた。しかし、自分が映画を撮るようになって、配給や宣伝の仕組みを知ると、とても喜んでばかりはいられない。というか、こんな入りで大丈夫だろうかと余計な心配をして胃が痛くなる笑。とはいえ、やはり空いている方が嬉しいんだけどね。

などと考えているうちに、いよいよ本編が始まった。まさかというか、やはりというか、本編も映写サイズは小さいままだった。これはどう考えてもおかしい。異常事態であるが、僕が席を立って状況を訴えに行くものでもないし、他の客は何も言わずに見ているし、僕もそのまま見ることにした。

画面が小さいこと自体よりも、左右と下に余白があることに違和感を持つ。暗闇にぼんやりと浮かび上がる余白が、集中を妨げる。が、しかし、映画というのは大したもので、物語が進むにつれて徐々に人を惹きつける。どんどん集中していき、映写サイズがほとんど気にならなくなった頃に画面が揺れた。カメラのズームリングを微妙に動かしているような状態。画面が小刻みに少し大きくなったっり、小さくなったりする状態が暫く続いて、映像が途切れた。

時計を見ると、本編開始から約15分経っている。さて、これからどうなるのか。再上映するとして、この15分をもう一度最初から見るのか、この15分の続きを見るのか、後の予定に関係する。さて、どうしたものかと考えていると、係のお兄さん(多分バイト)がタブレットを持って入ってきた。

平謝りしながら少しお待ちくださいとアナウンスしている。可哀そうに。彼らにはどうすることもできないのだろうが、復旧を目指しているからお待ちくださいと。その時の客の反応。「復旧しても終了時間が変わるだろうから非常に困る」「小さい画面のままでいいから続きを見たい」「この映画は上映館が少ないからなかなか見れないのに困る」どれも尤もな意見だ。

10分ほど時間をおいて中止が決まった。料金は払い戻し。久しぶりに夫婦で映画を見にいったのにね。これが自分の映画だったらと考えると冷や汗がでる。誰のせいでもないんだけれど、なんだかなぁ。

しかし、ちょっと意地悪な目で見ると、払い戻しだけで良いのだろうか。お客の時間を無駄にしてしまったのは結構罪なことだと思うんだけど。僕の映画なら払い戻しは当然として、例えば無料鑑賞券をプレゼントしたいと思うんじゃないだろうか。もちろん、あのアルバイトのお兄ちゃん達もそうしたかったのかも知れない。でもそれができないのは劇場のシステムの問題なんだろう。

また、こういう場合の配給収入はどうなるんだろう。やはり劇場負担なんだろうか。なんだかいろいろと考えさせられる夜になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?