三日坊主日記 vol.130 『いわゆるイマーシブといわれるもの』
世の中ではイマーシブといわれる没入型のコンテンツが人気を集めているようだ。
どっぶりとというか、本気でのめり込んで実際に体験したい訳ではないんだけど、ちょっと気分を味わってみたいとか。危険を冒してまで実体験はできないけれど、世界観は体感してみたいとか。気軽に手軽に非現実空間に身を置いてみる。そんなニーズに技術が追いついてきたという事なんだろうか。
映画でも3Dや4DX、IMAXもある意味同じようなものなのかも知れない。観客目線でいえばとても面白いと思うが、作る立場で言うと、そんなに興味を惹かれるジャンルではない。というか、カテゴリーがちょっと違うと思うのだ。
ただし、僕が『ニジェール物語』という短編アニメーション映画を作った時は例外だった。文字で伝えるのは難しいが、あのアニメーションだからこそ、あの表現方法だからこそ、没入型のコンテンツにしたいと思った。
『ニジェール物語』と言うのは、サハラ砂漠を舞台にした七話からなる寓話集で、夢のような現実のような不思議な世界観を持っている。絵本の原画を元に作った、二次元とも三次元ともつかない表現方法がユニークだと自負している。
そんな大した仕掛けをしなくても、びっくりするような映像技術を使わなくても、ただそこにサハラ砂漠の風が吹くだけでもいいと思った。砂漠に滅多に降らない雨が降る時に、雨の匂いがしたらいいと思ったのだ。そのちょっとしたことが子供たちの果てしない想像力を刺激して、彼らなりの砂漠の世界へ、ニジェール物語の世界へ没入できると思ったし、して欲しいのだ。
いつかそのコンテンツを持って、日本中を、世界中を回ってみたいというのが僕の夢になった。いつになるのか、どんな方法なのかは分からないけど、きっと実現させようと思った。
あれから8年。にわかに信じられないが、僕のその思いに共感してくれる人が現れたのだ。もしかしたら夢が叶うかも知れない。いや、叶わないかも知れないが、僕の話をまともに聞いてくれて、実現に向けて動いてくれる人がいてくれたなんて。それだけでとても幸せだ。
願えば叶う。人生何が起こるか分からないのだ。
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