見出し画像

映画にまつわる本 『ミス・サンシャイン』

書籍の紹介はすごーく久しぶりです。
今回は、吉田修一さんの『ミス・サンシャイン』です。

吉田さんといえば、「パレード」「悪人」「さよなら渓谷」「横道世之介」「怒り」と多くの作品が映画化され、しかもどれも映画としても面白いものが多いです。

僕の吉田さんの近年の作品の印象は、ある一人の人生を大河ドラマのように描くのが巧みな作家という感じでしょうか。
「横道世之介」のように市井の人の人生を描いた作品はもちろんのこと
数年前に出版された「国宝」では、架空の歌舞伎役者が稀代の女方になるまでの人生を、昭和芸能史と絡めながら描かれていました。この作品も面白かったですね。

「ミス・サンシャイン」では、主人公の岡田一心が、架空の大女優・和楽京子の自宅の資料整理を頼まれることから話が始まります。
この和楽京子は、ナンシー梅木さんだったり、京マチ子さんだったり、原節子さんだったり、吉永小百合さんだったりと、実在の大女優をモチーフにしたキャラクターで、しかも作品中に出てくる、和楽京子が出演した作品も吉田さんの想像の産物です。それらは昭和の映画黄金時代にありそうなものばかりで、映画好きとしては、元ネタはどれに当たるんだろうって考えながら読むのも楽しいです。

本作の注目点は、物語中盤から展開する、ある歴史的事実と、それに翻弄された和楽京子と、それにシンクロする主人公の気持ちの揺らぎの描写が素晴らしいことです。

僕は電車の中で読んでいて、思わず泣いてしまいました。

昭和の映画が好きな人には是非おすすめしたい一作です!

by matsu


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?