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そもそも品質工学 第18話 抜き取り検査は意味がない

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損益分岐点って知ってますかね?え?経済学?
まぁ、そっちのほうが有名でしょうか。
でも、検査工程でも使うんですよ。
検査した方が得なのか、損なのか。

もう1つ。
生産工程で抜き取り検査って、ふつーにありますよね?
「ウチの部品は抜き取り検査で不良が出てないから安心!」
そんな、ばかな。

今回はそんなお話です。

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不良が出たら、とにかくマネージャは検査の追加と言います。
もちろん、それは有効な手段でしょう。
ただし、コスト的な観点で確認したうえでの話です。

もし、その不良が出ても、後工程で修正できて、その方が安いなら、そちらを選ぶべきです。

その不良が10%とか出るなら、検査で抜き取ったほうがいいでしょうね。

じゃぁ、その不良が0.001%しか出ないなら?

そのために、全数検査する?検査コストは?
市場でお客様に指摘されて、無償交換&菓子折り持って行ったほうが安いでしょうね。

また、抜き取り検査なら?
抜き取り検査が使えるのは、連続的変化のあるものだけです。

組み立てた製品を抜き取り検査してもなんの意味もないです。
その抜き取りされた製品は問題が無かったというだけ。

検査は、不良を見つけるのが目的。
不良が見つからない検査は、気休めです。
時間の無駄だから、そんな検査なんか、やめちまえっ!

・~・~・~・~・~・~・

お話は2つあります。

1つは、損益分岐点。もう1つが抜き取り検査です。
では、損益分岐点からご説明していきましょうか。​​

マンガの中の、不良率とコストのグラフについて解説します。

青い線が、工程内での検査コストの線。
赤い線が、市場で不良が見つかった時にそれに対応するコストの線です。
この2つの線の合計値が、検査でのトータルコストになります。

数式は後回しにして、グラフを見ながら全体像をイメージしてもらいましょうか。

不良率が0%(p)の時、修正コストは0円です。
当然ですよね。修正対象が無いんですから。
でも、不良が無くても、検査しています。
検査コスト(B)がかかっているのです。
ちなみに、全数検査です。

そして、検査にて不良品が見つかった際、何かしらの処置が必要ですよね?
修理する、破棄する、交換する。
いろいろあるでしょう。これは処置コスト(A)です。

これを式にすると、以下になります。

 検査コスト=全数検査コスト(円)+処置コスト(円)×不良率
       =B+A×p


次に赤い線。
検査をせずに、不良品が市場に流れたとします。
初期不良として、回収し、修理し、お客様にかえします。
この出荷後修正コスト(D)です。

修正コスト=出荷後の製品修正コスト×不良率=D(円)×p

で、総コストはいかになります。

総コストL = B+A×p + D×p


さて、この検査コストと修正コストが同じになる点。
グラフでいうところの交わる点ですね。
その時の不良率pを求めるには両方のコストが同じになると。
以下の式ですね。

​​​​B+A×p=D×p​​​​​

で、不良率pについて解くとこうなる。

不良率p=B/(D-A)

この時の不良率を損益分岐点と言います。
(図の例だと、4%って言っている部分です。)

実際の不良率がこのpを超える時は、検査が有益になります。
だって、検査した方が、市場での不良を回収して直すより安いのですから。

実際の不良率がこのpを下回る時は、検査コストの方が高いです。
検査して不良品をはじくより、市場に流して、お客様対応したほうが安いのです。

もちとん、出荷後修正コストには、作業代や部品代以外に、イメージダウンのコストなどを加えてもいいです。

最近は、すぐにSNSとかで悪いうわさが広まりますからね。


この説明をすると、
 「全数検査ではなく、抜き取り検査工程の場合は?」
って聞かれます。

抜き取り検査では、品質は保証できません。​

そんなばかなって声が聞こえてきそうですね。
品質管理はできます。品質保証はできません。

工程の不良率が大体どのぐらいかを知って、管理するのが品質管理です。

できた製品を担保し、証明できないのです。
だって、全数見てないんだもん。
袋の中に、99個の良品と、1個の不良品を入れて、10個取り出してみてください。

その10個が良品なら、袋に入っている100個は良品ですか?
違いますよね。1個不良が入っているのですから。

抜き取り検査は品質管理の手法であり、品質保証の手法ではないのです。

AQLはどうなの?
あれは、お客様との約束事です。
「○%までの不良が混じってもいいよ。」
だけど…
「その代わり、全数検査しないんだから、安く売ってね。」
ということ。

まだ、アナログ的に変化するものなら、抜き取りでも検査していない間のものがその抜き取った2つの数値の間に入る可能性が高いので、抜き取りでもそう問題は出ないでしょう。

しかし、組み立てとか、1品1品出力されてしまうものは、厳しいですね。
1つ前の部品が良品でも、次の部品が良品である保証はないですから。

これについては、品質管理がはじまった1950年代から言われていることです。

なんで、抜き取りで良いなんてことになったのか。
ご都合主義ですかね。(^^;


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