流浪の月

今日は、「流浪の月」を観た。
李相日監督の作品は、重く考えさせられる。
以下、ネタバレを含む。

原作は読んでいない。
なので、映画の予告ぐらいしか予備知識がない状態で鑑賞に臨んだ。
観ていて、考えてしまった…

更紗と文は、それぞれに大きな悩みを抱えていた。
雨が降り始めたある日、公園で二人は出会う。
文が声をかけ、それを更紗が受け入れる。
更紗が10歳、文は20歳前の大学生だった。
二人は、徐々に心を通わせながら穏やかな生活をしていたが、ある日のニュースで更紗が失踪したというニュースが流れていた。
そして、湖に出かけた時に、警察が来て、更紗は保護され、文は逮捕された。
文は大人になり、恋人と同棲をしながら飲食店で働いていた。
同僚の女性たちとの飲み会の後に寄った喫茶店で、偶然に文と再会する。
そして、文の心が動き始める。

更紗にとって、文は心が安らぐ存在であった。
そして文にとっては、更紗が日々の生活に彩りを与えてくれた存在であった。
文が大人になって再会したことで、その心の動きがあの頃に戻るように呼応し始める。

タイトル通り、ポイントで月のカットが入る。
ボクが印象に残っているのは、更紗の心が傷付いているシーンは雨、陽がさす窓辺のカーテンが風でひらめいめあるところを下から眺める更紗視点のシーン。

更紗は、広瀬すずさんが演じている。
前回の李監督作品の「怒り」では米兵にレイプされてしまう高校生というハードな役どころだった。
今回も、恋人に心をひらけず、その後は暴力を受けるというハードな役どころだ。
心を開けないが、どうにか世の中で生きていこうという更紗を、しっかり演じていたと思う。

更紗の小学生時代は、白鳥玉季さん。
最近の子役の中でも注目の俳優さんだと思う。
更紗の抱える傷は、子供では非常に酷く耐え難いもののはずだ。
それも含めて、瑞々しい演技をみせている。

文は、松坂桃李さん。
文の傷はラストで明らかになりますが、この文の心情も難しいものだったと思う。
言うまでもないことだが、素晴らしい演技でした。

更紗の恋人の亮は、横浜流星さん。
この役は、彼にとってはチャレンジだったのではと思う。有り体に言うと「クソ野郎」だ。
こな「クソ野郎」感の演技が、観客の心情を更紗に向けるいいスパイになっていると思う。

文の恋人のあゆみは、多部未華子さん。
登場シーンは、少しだ。
後半で、文が実は幼児誘拐で騒がれた犯人だったと知ると、彼に酷い言葉を投げかける。
騙されたという気持ちと、自分が受け入れてもらえていなかったという気持ちがあゆみの中で交錯するところだ。怒りと寂しさを涙を流しながらいい表情だった。

ボクが。この作品を観ながら思ったことは、

  • 逃げ場

  • 心の拠り所

という2だった。

更紗が亮から暴力を受けて逃げ出して、文が働く喫茶店にボロボロの状態で街を往くシーンを観て、「逃げ場がないって本当に辛いな」とグサッときた。
ボクであれば、家族がいて、母ちゃんもいて、義母さんもいて、受け入れてくれるところがある。
更紗には、そのようなところがなかった。
文と再会したことで、そこが最後の逃げ場になったのだ。
嫁さんや娘、特にこれから独立していく娘に対しては、最後は受け入れてあげられる存在でいないといけないな、と強く思った。

たぶん、更紗と文の関係に対しては、色々な感想があるだろう。
ボクは、文は更紗を受け入れて肯定し、一人の人として尊重してあげた。それが更紗の「心の拠り所」になっていったのだと思った。
世の中の人は、自分に都合のいい色眼鏡で見て判断し、受け入れることをしてくれない。
これは、たぶんボクもそうなのだ。
文も受け入れてもらえていないことがある分、更紗に優しくなれているのだと思った。
嫁さん、娘、家族や親友が本当に困って相談してきた時に、ボクはしっかり受け入れてあげられるだけの優しさがあるだろうか?
共感してあげられるだろうか?
ボクは、共感力が乏しいのでは、と思っていて、ちゃんと受け入れてあげられないではないかと、なんだか怖い。

心を揺さぶられた作品で、これは書かなければと。
最近、サボって全然書いていない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?