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天国

たぶん。
ぼくには、霊能力や霊感なんてない。
だけど、奇妙な体験をすることがあった。
それは、母親の母(祖母)が亡くなったとき。
遠い田舎の土地に住んでいて、仕事も忙しく、葬儀に参加できなかった。
母親も無理に行かなくていいと言ったので、行かなかった。
葬儀が終わって、しばらくした頃、不思議なことが起きた。
夜寝ているとき、それは、現実なのか夢なのかわからないが、出たのである。
頭がぼやーっとして、ふと目をあけると、部屋の壁をすり抜けて、白いユーレイが泳いできたのである。
ぼくは、「えっ?」と驚いた。
怖くて、「こっちにこないでほしい」と何回も心の中で唱えた。
しかし、その白いユーレイは、ゆっくりとぼくの真上に向かってくる。
体も動かないから、どうすることもできない。
すると、その白いユーレイが、ぼくの顔に目がけて飛び込んできたのである。
ぼくは、恐怖でたまらず大声で叫んだ。
その瞬間に、まるで滝に打たれたように、あたりが真っ白になった世界が広がった。
ぼくは、「えっ?」とまた驚いた。
そこは、とても解放感に溢れていて、どこからともなくノリノリの音楽が聞こえてくる。
むしろ、爽快な感じで、気持ちがいい。
今まで生きてきた中で、感じたことがない心地よさだった。
そのあとの記憶はないが、翌日、朝を起きたときに、「おばあちゃんが呼びにきたんだ」と直感的にわかった。
ぼくは、仕事を休み、祖母の亡くなった家を訪ねることを決心した。
仏壇に手を合わせ、遺影を見た。
「おばあちゃん、きたよ」
「葬儀これなくて、ごめんね」
90歳くらいだったかな。
とても長生きしたおばあちゃんだった。
後から聞いた話だが、親戚兄弟はみんな葬儀に参加したらしい。
だから、ぼくを心配したのか、呼びに出てきたのだろうか。
そして、あの壮大な白い輝く世界。
あれは、もしかして、天国なんだろうか。
死ぬことは、とても残念で、悲しく、苦しいイメージがある。
でも、本当は、とても安らかで、気持ちよく、生きているときよりもエネルギッシュになれることなのかもしれない。
たぶん。
あれは、天国。
天国は、信じれないくらい気持ちがいい場所。


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