ブルックリン・ブリッジにたたずんで


このストーリーの、まさかの続編。


かまいやしないさ

この国に入国してから今日までの日々は僕にとって充電期間なのか?それともただ放電しているだけなのか?
放電しているだけなら、このバッテリーはいつまで保つ?

日本にいる仲間たち、関係者とはまったく連絡をとってない。

仕事上では代わりなんていくらでもいる。完全浦島太郎状態になるのは目に見えてる。果たして戻る場所はあるのだろうか。


なんとかなるさ


楽天的というか能天気というか。僕の良いところでもあるし、悪いところでもある。



まだまだ暑い日々が続くが、季節はやがて秋へと代わる頃。こうなるといっそ、冬のこの街も見てみたい。

VWP(Visa Waiver Program)にて90日はビザ免除で滞在できるのだが、おそらく入国時、そこまでの滞在許可は得ていないとは思う。


この日々のことをせっかくなので書き残そう。気になったことや感じたことを。


「人伝に、僕について、いくつか書いていることを知った。
それらのテキストや、何年か前、本を贈ってくれたのも楽しく読ませてもらった。なかなか興味深かった。」

「僕は専門家ではないですから、好き勝手に書かせてもらってて。恐縮ですね。」

「まさにそこで。プロとは違う視点から感じたことを、君なら書いてくれる。いっしょにこの街に来てからのことを。」

とんでもないことになってる。

しかし、一体いつから、どうやって僕はそこまでの信頼を得たのだろうか。



あの日から気楽に書けなくなってしまった。もともと筆が早い方ではないが、一気に気が重くなってしまったじゃないか。


まったく!


テーマを与えられたわけでもないし、あの人から進捗具合を尋ねられることもない。なのに、締切が迫って焦っているような状況。

もっとも、帰国してからでも続きは書けるわけで。それにしてもいつ帰国するんだろう?

なんだか、締切のない締切に追われて早く帰りたくなってしまう。


ウォーターストリートに面したシェイクシャック。ここでハンバーガーを頬張りながらニューヨーカーを気取る。そんなひと時もすっかり日常的になった。


ブルックリン・ブリッジにたたずんで、か。

ここにここに
愛はここに


日本よりは湿度が低いから過ごしやすいが、今日は暑い。

ほとんどの場合、ハンバーガーの共はコーラにしているが、今日みたいな日はビールだな、やっぱり。

イーストリヴァーの辺り。何を思うでもなく、ただ川の流れを見つめる。

今までの君はまちがいじゃない
これからの君はまちがいじゃない

じゃあ、今現在は?


まったく知らせてもらってないのでフォーマルな服は持って来ていない。

今晩はあの人に同行する。リヴァーサイドカフェはドレスコードがあって、ジャケット着用、デニムはNG。

おいおい、カフェだろ?

誰にいうでもなく。


何をしに行く?ただカフェに行くだけ。聞くだけ野暮ってもんだ。



あの人から借りたジャケット。背格好は大体同じくらいでフィットしてはいるが、どことなく七五三感。

やれやれ。

ややパンプアップしているあの人に比べると、若干、僕の方が華奢に見えるからか。

かまわない
気にしない
不確かなエモーション
ステップにかえて


僕らは店のエントランスに飲み込まれてゆく。


※本文中引用曲
NYC1983-84
マンハッタン・ブリッジにたたずんで 
約束の橋
インディビジュアリスト

上記、すべて佐野元春



episode 3

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