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パート2にあこがれて(ft.『Blu (CIFI pt.2)』)【Sandwiches #73】

 昨日の雨とはうってかわって、今日は午前中からよく晴れた。わかっちゃおったがおてんとさん、だいぶ情緒が定まらん様子です。まあま、洗濯物がカラリと乾いてくれたしよきよきよ、とハッピィはんぶん、しかしてあすの天気予報にはまた傘マークがついている! よって残りはうんざりはんぶん。

 そんな天気と同様に頼りなげな筆致でもって、今日は「楽曲紹介」シリーズ、3rdアルバム『Circles』より「Blu (CIFI pt.2)」をはっつけます。

 いまさらですが、2ndアルバム『KINŌ』は全楽曲のビデオが制作・公開されているという類まれな作品であり、そのためこの「楽曲紹介」シリーズではかならず映像についての言及をはじめに行っておりました。しかして最新作『Circles』に関しては今のところ映像がついていない楽曲も複数あり、視聴用のYouTubeURLはオーディオのみになっています。悪しからず!

 そんでいきなし楽曲についてのお話やけど、この「Blu (CIFI pt.2)」についてはちょっぴりとくべつな点がある。どこだかおわかりになりますか。……答えはずばり、カッコの中の「CIFI pt.2」という部分にあります。

 実は「CIFI」は、先ほどもふれた前作『KINŌ』に収録されている「Click It, Freeze It」という楽曲のことをさしています(求ム、瞬間冷却POWER(ft.『Click It, Freeze It』)【Sandwiches # 51】)。うしろの「pt.2」はそのまま「パート2」。つまり「『Click It, Freeze It』のパート2、れっきとした続編ですよう!」との宣言がなされている楽曲なのです。

 基本的に自分の作る曲はすべて「続いている」認識をもっているのですが、こうして明確に「続編」を謳うタイトルははじめてでした。 

 正直なところ「pt.なんちゃら」っちゅうタイトルにはあれね、昔から憧れがありましてね……、ぱっと浮かぶのはMobb Deepの「Shook Ones, Pt. II」やら、Kendrick Lamarの「The Heart Pt. 2」やら、国産ヒップホップならラッパ我リヤの「ヤバスギルスキル」シリーズなんかはpart10(!)を超える楽曲がリリースされていて有名やし、ちとずれるが虎舞竜の「ロード」もおなじマインドな気がする(第何章、ってそういうことでしょう)。

 とかく惹かれていたのは、同じタイトルのうえで繰り返し物語をえがく、まるで映画やドラマのようなその手法の面白さ。 シリーズを重ねるにつれて積層するストーリーが、単曲では形成し得ないイメージの奥行き拡がりを生んでくれる! かもしれない(最後は受け手次第ですから断言はできません)、これがワクワクするのだなあ。

 「続編」のもつケレン味っちゅうのはこう、独特なもんがありますよね。映画のビッグタイトルなら、『ターミネーター2』『エイリアン2』『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』、長い時間をあけて続編が公開された例でいうと『T2 トレインスポッティング』や『ブレード・ランナー2049』なんて作品も。そいから、最近みたNETFLIXのドラマを引っ張ると、『STRANGER THINGS』や『THE END OF THE FXXXING WORLD』なんかのシーズン2は「そう続くのね!」とうれしいおどろきと発見に満ちていました。

 総じて、オリジナルたる第1作(パート1)の遺伝子を受け継ぎながら、よりアップデートした表現が用いられ、同時に物語は複雑化する傾向にあるように思います。これはいうまでもなく小説や、ゲームや、その他あらゆるアートフォームにおいて同じでしょう。もちろんすべてがうまくいくとは限らんわけやし、「ヒット作の続編は駄作」なんてジレンマもあるだろうけれど、それでも触れずにはいられない、抗いがたい魅力こそ「続編」「シリーズもの」に潜む魔物です。

 ただわたしの「Click It, Freeze It」に関してはハリウッド大作を例に取るなどおこがましい、まっこと静かな楽曲であります。いくら「続編」に憧れていたかて、なぜここで、とつぜん「パート2」なぞ謳いだしたのやろか? 

 制作当時の記憶をほりだそうとしてみたが、どうにももやもやおぼつかない。そこで参考までに、とのぞいたプロデューサー・アズマリキさんの制作noteにすべての答えがありました。

このビートは、前作2nd『KINŌ』収録の「Click It, Freeze It」の続編として最初から作っていた。仮称も『TWO』だった。マコマレッツはコレ選ぶだろな、と予想していた。そしてマコマレッツは選んだ。こういう予想は当たるとそれはそれでうれしいしおもしろい。

No3 こちら側から見たマコマレッツ _ STUDIO75 覚書 より)

 なんと!アズマさんが「続編」としてビートをつくったことは直接聞いていなかったし、仮タイトルの「TWO」など正直気にもとめていませんでした。それでも無意識的にこのビートを選び、「CIFI pt.2」として書き上げておった。

 すぐれた脚本は観客の感情をたくみに誘導する、とどこかで聞いたことがあるけれど、曲を書いた本人であるはずのわたしも気づかぬ場所に芽は植えられていた、こりゃ最初からすべて手のひらの上、まんまと踊らされておったのか。おそるべしはプロデューサーやと、ぶるる、震える夜でした。

 ……やあ、ここで歌詞についてふれぬまま、文字数をオーバーしてしまったようです。はたして「CIFI pt.3」は出るのか否か? そんなささやかな謎をまきまき、尻切れとんぼに失礼します。またあした。

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