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ミスター・スランプと電子の摩天楼【Sandwiches #44】

 このnoteでは毎日「楽曲紹介」とそうでない記事を交互に書いておるのやけど、わずかでもね、話題のゆるやかな連続性を意識したいとはじめは考えていて、ただそれがなにやらうまくいかんのが最近であります。ちょいと息切れしてきたのとちゃうん、と言わればそら否めんmood。がちりがちりと解けぬ首のこわばりが、頭のほうまで来てしもうたようです。

 んでふとわたし、「Sandwiches」最初のほうの記事を読み返してみたのでした。それですぐに気づいたのはその文字数の少なさで、あれ、こんなあっさりしていたっけか? と驚いた。ああ、四十日間のあいだに贅肉を増し、ぽっちゃりしてきたのはおのれの身体だけではなかったのや、おいおいおい……と落涙す、が、ぜんたい増えたといってもたいした量ではなくて、ちょっぴし寄り道ルートがふくらんだとそんな感じですけれどもね。

 全国でぞくぞくと「宣言」が解除されゆくなかで、いよいよ #stayhome シーズンもひと区切りを迎えようとしています。わたしはとにかく毎朝の筋トレとしてnoteの更新を選んだけれど、この期間、第一回(毎日更新いたします【Sandwiches #1】)で書いたところの「ぱきっとしたイン・アウトの実感とつぎの思考にうつるステップ」を得ることができたやろうか、それはイエスともノーとも言えんのが正直な心持ちで、というのも目下直面しているのはこのnoteはさておくとして曲がとにかく書けない、というシンプルかつ圧倒的な質量を持った行き詰まりの感覚なのでした。書けないもんは書けない! どでかいスランプ到来であります。

 このnoteに書き散らすぼんやりした思考の束もなにかしら本業(とてもおこがましい言い方だけれど、現状ほかに金銭を得る手段を持たないので)としての楽曲制作に還元されればよし、と考えていたが、それもまた虫のよいアイデアだったかもしれぬ。それらは歌詞を書く際のちいさなちいさなタネにこそなれ、震えるようなメロディを生み出すことにはついぞ繋がるはずもなく、当たり前か、でもそうや、足りんのはあきらかにフィジカル的な入力作用で、歌う・Rapするという行為はやっぱりある種の運動よスポーツよ! だもんだから、頭でっかちなmindよりむしろ身体を動かさなくちゃ、とそんな段階に来ておるのでしょうね。近所のお散歩とかじゃなくてね、もっとこうね、ぐぐぐーっと広義の意味でのに出てゆかねばならんのだ。ほんとうは。

 家にいながらもなんとかしてそんな「外」への身体感覚を得られんもんかと考えているうちに思い出した本の一節があります。それはこの春読んだドミニク・チェン氏の近書『未来をつくる言葉──わかりあえなさをつなぐために』に書かれていた何気ないひとことでした。

ゲームの世界は実世界とは切り離されているが、自分の身体感覚とは連動している。ゲーム世界の主人公が経験値を貯めて「レベルアップ」するたびに、自分自身の能力が底上げされた達成感を覚えるし、苦戦の末に「死んで」しまうと、微かな痛みが皮膚の上を走る。なにより夢中になったのは、ゲーム作品ごとにまったく異なる環世界が立ち現れることだ。ファミコンに差し込むカセットを換えるだけで、中世ヨーロッパ風の物語世界から近未来の宇宙空間へ瞬間的に移動することができる。

(ドミニク・チェン『未来をつくる言葉──わかりあえなさをつなぐために』2020年 / 新潮社 / p.33-34より)

 この連載をはじめてすぐのころ、すこし「環世界」というワードについて触れたことがあります(窓の開け方【Sandwiches #4】)。くわしくはそちらを読んでいただくとして、そう、上記の引用文でハッとしたのは日常から離れた身体感覚を得る手段としてゲームが挙げられている点で、言われてみれば当たり前のことかもしれないけれどもこれは盲点やった。たしかに、擬似的にであれフィジカルに寄り添ったなんらかの諸感覚(なんてボヤけた言い方ですが)を獲得できそうじゃありませんか。

 そんで我が家にはPlaystation4なるゲーム・マシンがあるのでね、最近は新しいソフトを買うこともなくほとんど放置していたのだけれど、久方ぶりに起動してみました。たまたま挿入されていたディスクは『スパイダーマン』。タイトル通り、あの有名なアメコミ・ヒーローになりきってニューヨークの街並みを飛び回るゲームです。

 ……しばらくプレイしていると、まあ、楽しい。あれ、でもなんか虚しい。いやでも楽しい。と、こう、さざ波のごとくゆらめきながら打ち寄せる感覚があって、これが「異なる環世界が立ち現れ」ている状態なのかはようわからん。たしかに、蜘蛛人間の身体感覚は非日常的であるけれども、これが別の環世界を感応しうる手段ならばわりかしイージーすぎんか。や、でもしばらく遊んでいればつかめるものもあるかしらん、など、いつしか堂々巡りの思考をうっちゃって遊びに興じる自分もおって、これは正しい選択やったのか? 

 このまま電子の海にのみこまれ、スランプも解消できぬまま沈んでいってしまうとしたら恐ろしい! ただ、その只中に燦然と、蜘蛛の糸のようになんらかの啓示が垂れ下がってきたとしたら……そのときは、つかの間のあいだ手に入れたこのスパイダー・センスが役に立ってくれるかもしれぬと、それだけを信じておるのです。

 それまでは、無心で摩天楼のあいだを駆け巡るのみ。スイング、スイング、スイングよ、これで贅肉も落ちたらいいのにね。

●本日の一曲

スパイダーマンにかこつけて、アニメ映画『Spider-Man: Into the Spider-Verse』の主題歌にもなったヒットソングを。不思議なあたたかみがあって好きです。

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 いつもお便りありがとうございます。以下、返信コーナーです(今日掲載できなかったものも、明日以降順番にご紹介させていただきますね)。

●ペンネーム:Shogo's lifeさん

とあるポッドキャストを聞いていたら面白い話がありました。アマゾンに住んでいるシャーマン(魔術師)が儀式に使うアヤワスカっていう幻覚効果のある液体があるのですが、その幻覚成分を含む食べ物が小中学生の給食に出るものだとかなんとか!
その食べ物はみかん!その成分は口の中の分解されてしまうらしいですが、日本でも輸入できるある植物を混ぜると口内で分解されず、アヤワスカと同じ効用がでるとか…(その植物は具体的に述べられてなかったのですが)

>>アヤワスカ、って単語としてはどこかで聞いたことがあったのだけど、幻覚系のそれだったのですね。みかんと何を混ぜたらその作用が起きるんやろうか……。気になります。こう、曲の制作に行き詰まっているとね、アルコールを入れて机に向かってみたり、普段とは違う感覚に自分を置いてみようというときもあるのですが、みかんもありかもしれん。なんかほうれん草とか、ブロッコリーとかと一緒に食べてね。プラセボでも、新しい世界がひらけそうです。探求だ。

(引き続き、下記フォームよりお便りを募集しております↓)

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