お茶マーケティングやってみた④
さあ、前回に引き続き4大お茶メーカーのマーケティングをcheck!!
前回の記事はこれ↓
今回はCMに注目。
ー記事の流れー
記事2①製品の分析 前半戦:お〜いお茶、生茶編
記事3①製品の分析 後半戦:綾鷹、伊右衛門編
記事4②プロモーションの分析←イマココ!!
・CMにおけるメッセージ性や、
・起用モデルの変化、選定理由をまとめてみた
記事5③ターゲットの分析
④各メーカーの成果と、2020年現在の注力状況は??
②プロモーション分析
ここでは、各社のCMの傾向を発売時から見ていって、コピーメッセージや起用モデルの変化、起用モデルの選定理由を分析してみるよ。
ⅰお〜いお茶
お〜いお茶のコピーは、その名の通り、「日本のお茶、お〜いお茶」が有名!そんなお〜いお茶の起用モデルは、とっても息が長い。2000年に中谷美紀さんからバトンを受け継いだ市川海老蔵さんは、なんと20年間起用モデルを続けている。確かに、海老蔵さんの「お〜いお茶」といったナレーションが、今にも聞こえてきそうだ。
調べによると、起用モデル選定には、「日本らしさを伝えられる、人気はあるがどこか古風で地に足が着いた志のある人」を基準としているみたい。まさに歌舞伎役者だけではなく幅広く活躍する海老蔵さんがぴったり。
ここ最近だと、2017年から既存の市川海老蔵さんに加え、有村架純さんを起用している。その当時、有村さんは、朝ドラひよっこのヒロインに選ばれ、老若男女で知名度が格段に上がっていた。そんな魅力たっぷりの有村さんを起用することで、若者獲得も狙いながら、既存のお客さんにも受け入れられると考えたのだ。
また革新的な取り組みとして同じく2017年にデジタルコミュニケーション室を新設。AbemaTVとのタイアップ企画を実施するといった新しい取り組みをしている。
ⅱ生茶
2000年のデビュー当時は「お茶にも生があったんだ。」のコピーで松嶋菜々子さんをメインタレントにして、生茶の定着を図っている。一方で、多分あまり知られていないけれど、高倉健さんをメインタレントにした CM も同時に行われていたんだって。
これは、メインターゲットである若い女性を松嶋菜々子さんの CM で狙い、もうひとつのメインターゲットである中高齢ユーザーを、高倉健の CM で開拓しようとする意図があるのでは?と感じる。
生茶のモデルといえば松嶋菜々子さん
渋カッコよく決める、高倉健さん
女性の起用モデルは、松嶋菜々子さんの後に綾瀬はるかさん、北川景子さん、吹石一恵さん、波留さんへと受け継がれ変化している。一方、男性側は高倉健さんから小栗旬さん、山下智久さんとこちらは段々とモデルさんが若くなっている。ここから、男性のターゲットをもっと若者に絞っていく狙いが見える。
2020年現在では満島ひかりさんと吉沢亮さんが選ばれ、「新生茶」と題して、生茶が何か変わったんだ!と思わせるような宣伝を行っている。
新CMに起用された吉沢亮さんと満島ひかりさん
ⅲ綾鷹
綾鷹のCMと言えば、「舞妓さん100 人に聞きました。急須で入れたお茶にもっとも近いのはどれ?」、「板前さん100 人に聞きました」、「温泉旅館の女将100 人に聞きました」というように、色んなお茶を扱う本場の方に飲んでもらうCMがパッと思い浮かぶ。
特にモデルさんを起用していないし、他のメーカーと比べると新鮮な伝え方をするCMだと思う。どちらかというと、世田谷自然食品さんの青汁のCMといった通販CMに近い気がする。このCMになったのはいつからだろう?
元々は「にごり」推しだった綾鷹は、2010年から「急須でいれたような味わい」にコピーメッセージを変更。そこで新しく2011 年から今では有名な、”飲み比べCM ”の展開をスタート。これらは「お茶の味にこだわりを持つ人たちから高く評価されている綾鷹」というイメージ付けを普及させようと行われているらしい。
また、新しい試みとして2019年からは、東京2020オリンピックを活用したマーケティングを展開。市松模様(組市松紋)のエンブレムをイメージした4種の東京2020オリンピック記念デザインボトルを発売し、新たに狂言師の野村萬斎さんを起用した新CMの放映を開始したという。
最近は、綾鷹ブランドアンバサダーと題し、野村萬斎さんや吉岡里帆さんを起用。世界に向けて日本のお茶である綾鷹を発信していく狙いがある。
ⅳ伊右衛門
伊右衛門も、お〜いお茶と同じように起用モデルの息が長い。ただ、他のメーカーと違う点は、ストーリー性のある、ドラマ的な内容になっていることだ。CM には本木雅弘さんが茶屋の主人『伊右衛門』役で登場。妻役には宮沢りえさんが起用されている。
初回のCMをちょっと見てみよう。着物姿の宮沢さんが「お仕事で忙しいのも分かりますが、ちょっとは家のこともやってもらわないと、、」と京都弁で優しく訴える。すると本木さんが「これを作ってたんや、、」とそっと伊右衛門のお茶を差し出す。仕事に打ち込む男とそれを支える女。そんな夫婦像がみえてくる。また、音楽も久石譲さんを長年変わらずに愛用。古風な京都の世界観を表現している。
ある論文では、「綾鷹と伊右衛門は、両社とも老舗茶メーカーとコラボをしている点では似ているが、広告表現のスタンスは異なっている」と分析している。まず、伊右衛門は茶匠である本木雅弘さんがようやく作り上げたものが伊右衛門であり、ストーリー性がある。一方で『綾鷹』は、お茶のプロが選ぶ、といった口コミのような表現を行なっている。つまり、“作り手側からの『伊右衛門』、飲み手側からの『綾鷹』”といったものであると言っている。確かにその通りである。
一方、2020年に新しくなった伊右衛門は、大幅にモデルを活用。加藤浩次さんや黒柳徹子さん、芦田愛菜さんなど、様々なターゲットを見越したモデルを使っている。内容としては、彼らが伊右衛門の変化に気付き、「変わったね!」と口々に漏らす部分と、晴れ渡る空の下、現代にタイムスリップをしたかのように、本木さんがビルの屋上に立って彼らの感想に納得感を持って頷く、というものだ。大幅にスタンスを変えることはしないで、上手く現代に思いを繋げるようなCMになっていて、とても考えられているな、と思う。
対してここ最近は、特茶のPRにも注力している。特茶では本木さんはスポーツウエアにスニーカーといった打って変わった格好をしていて、さらに田中圭さんなど今を彩る若手人気俳優さんの活用をして、大きく認知を広げている。
まとめ
CMを取っても、各メーカーでそれぞれのこだわりがあることが分かった。特に、綾鷹と伊右衛門の違いはとてもはっきりしていて、CMの好みでお茶を選んでいる人もいるのではないだろうか。続いての記事⑤では、これまでの分析を踏まえて、各社のターゲットを考察したり、今後のマーケティングの方向性を調べたりしてみようと思う。ぜひそのままお進みください〜〜!
続いての記事はこちら↓
参考
論文:キリン『生茶』の競合に対するブランド戦略を考える~ブランド価値構造の視点から~井徳正吾 渋谷詩(https://ci.nii.ac.jp/naid/120006460756)
https://mag.sendenkaigi.com/senden/201804/community-use/012983.php
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00143/00024/
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