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「異邦人」(mixiより)

『異邦人、と聞いて何を思い出す?お前ならJ-POPが好きだから、久保田早紀の「異邦人」を思い浮かべるだろう?何のCMだったか忘れたけど、よく流行った曲だったよな。小説も好きだから、カミユの「異邦人」か?言いたいことはわかるけど、何だかずいぶん理屈っぽい小説だよな。読んだことあるか?俺の場合は、ボードレールの「異邦人」という詩だけどな。』
トオルはこう言った。

小学生のころ、「少年少女世界の名作文学」とかいう何冊にもなる全集を買ってもらっていた。毎月、1冊ずつ本屋さんが宅配してくれる。それぞれの冊子に番号がついていて、配本が順番通りでないのがなぜだかよくわからないけど、とにかく本が好きでよく読んでいた。本が好き、と言うより、近所の男の子たちから仲間はずれにされたので、家にいることが多かったからかも知れない。「小公女」「秘密の花園」「スペードの女王」「山椒大夫」などがあったのを覚えている。

その全集のなかに、「異邦人」を含むボードレールの詩がいくつか載っていた。解説は、「どうです?皆さん、わかりましたか?」で始まっていた。小学生にわかるわけがない。今読んでも難解な詩だ。その解説には、意味はわからなくても、砂浜に光る真珠のように、何かひらめくものが発見できれば、と書いてあった。自分はこの「異邦人」という詩に何か惹かれるものがあったのだろう。暗記するほどに何度も読んでいたことは確かである。

近所の普通の小学生と比べても変わっていた自分を、仲間はずれを感じていた自分を、この詩の中の異邦人に投影していたのかもしれない。寂しさもこの詩に託していたのかも知れない。砂浜に光る私の真珠は「異邦人」の中の異邦人だったのだ。

そんなことを思い出していたら、先日、「ボードレール詩集」を衝動買いしてしまった。

(2007.3.19初出 mixi 一部加筆修正)

追記:本文に記載したとおり、2007年の時点では、この詩の解釈については、私自身がよくわかっていませんでした。その後、自分で調べてみて、いろんな解釈があることがわかりました。それらの解釈を見て、思うことは…

小学生の、それも低学年の頃、この詩の意味を考えることもなく、なんとなくスキ、と思っていたのは、実は自分をこの詩の中の異邦人に投影していたのだとすれば、子供ってすごいな、と改めて思います。大人の私よりよっぽどわかってたのかも。

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