48年間増収増益の“いい会社” 伊那食品工業を視察して 〜理想の中小企業はいかにできたか〜
2022年11月9日に、人本経営指導の師である(株)シェアードバリュー・コーポレーション小林先生の主催する“壺中100年の会”で伊那食品工業(株)を視察させていただきました。
伊那食品工業を聞いたことがある方は、
・48年間にわたり増収増益
・同社の塚越最高顧問をトヨタの豊田章男社長が経営の師と仰いでいる
・カンブリア宮殿で村上龍氏が大絶賛した
・70万部超の坂本光司著「日本でいちばん大切にしたい会社」で紹介された
・グッドカンパニー大賞グランプリ賞を受賞
・かんてんぱぱブランドを主力として寒天業界でトップシェア
などが知るきっかけになったのではないでしょうか。
初めて同社を聞く方は、こちらをご覧ください。
今やさまざまなメディアが伊那食品工業を取り上げています。
今回の視察では、敷地内の見学をさせていただいた後に、同社のことを塚越英弘社長から直接お聞きすることができました。
伊那食品工業さんを紹介されている書籍やメディアサイトはたくさんあります。
それで色々な情報は得られますが、社長に質疑応答ができたことでとても学びが深まりました。
最も印象に残った言葉を二つ紹介します。
1つ目は、「管理職を登用するときに何を見ていますか?」という問いに対しての回答です。
塚越社長は「管理職は、プライベートも含めて部下のことを見れる人でないといけません。会社の目的は社員が幸せになることだから、部下が幸せかどうかプライベートも含めて興味を持って見ることができる人でないと。」とおっしゃってました。
社員の幸せを唱っている会社は山ほどいると思いますが、他の会社と伊那食品工業の最も大きな違いは『理念に対する一貫性』だと思います。
この会社は経営すべてに一貫性があります。経営者・会社の価値観、大切にしていることの優先順位が明確であり、経営判断においてそこがブレていないのです。
製造業ならよく使う安全第一という言葉があります。同社では、その言葉通り、業務効率よりも、顧客満足よりも、業績よりも安全と健康を第一に考えています。
寒天ブームのときは、大量の受注生産で業務が忙しくなり社員の生活が不健康になったために受注を止めたというエピソードもあります。
朝礼では健康のためにラジオ体操をしますが、NHKから体操講師を呼んでしっかりと学びます。
会議のときも売上利益の話ではなく、安全面の報告や話あいを一番にするそうです。
経営者・会社が本気で社員が幸せであってほしいと考えて経営判断をしていること。
それは人事面でも同様であること。言葉で云うのは簡単ですが、なかなかできることではありませんし、そのような社員が育っていること自体がやはりすごいと感嘆させられました。
二つ目は、様々な質問に対して塚越社長が回答されていた「会社は家族ですから」といいう言葉です。
この言葉も使われる会社はあると思いますが、同じくその言葉に対してのコミットメントと一貫性が異なるのだと思いました。
その一例が人事評価制度です。基本的に年功序列にしており、評価による賃金差はほとんどないそうです。その理由を尋ねた際も、「能力の差によって家族で待遇に差をつけますか?つけませんよね」と回答されていました。
それによって不平不満がでないのかという質問に対しても、「でないですよね。だって家族ですから。何で出来ないのに自分と同じだけもらってるんだって家族なら思わないですよね。毎年全員が昇給しているからというのもあると思いますが。」との回答でした。
信賞必罰、成果に応じた報酬、という考え方は全く存在していません。
能力差はあるのかという質問には、能力差は当然あるとおっしゃった上で、
「(業務上で)優秀でない人は優秀な人を際立たせるという一つの能力なのだと思うから、そうなるとそれも評価するので、結局あまり差がなくなる。」
確かに、人は皆、基本的な心理的な欲求を持っていて、他者から高い評価を受けることで欲求は満たされるし、何かにおいて人より自分が優れていると感じることでも欲求はみたされます。つまり、劣っていると思われている人たちが周囲の人たちの欲求充足に貢献していることになるのです。
そう考えると、先ほどの説明が納得できました。
このやりとりを聞いていたときに、完全に一般的なものとは全く異なる『会社観』で経営をしているのだとふと気づきました。
根源的な『会社観』が全く異なるので、そこで同じように使われる「社員の幸せ」や「会社は家族」という言葉の次元が違ってくるのです。
では、いかにしてこのような会社ができたのか、それは当然ながら経営者の理念と価値観が土台にあるのですが、とは言えビジネスですから生産性が高く利益が出ないと、綺麗事の経営はできません。
伊那食品工業がいかにしてできたのかについては、
12月20日〜21日に当社が企画している伊那食品工業ベンチマーク視察で深堀をして、学んでいただこうと思います。
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