ニューヨークの『君たちはどう生きるか』 | 少年と灰色サギか青サギか
邦画は日本語で観たい。
年末、タイムズスクエア近くにある映画館で日本のアニメーション映画を観た。話題作のTHE BOY AND THE HERONだ。
公開されるやいなや、全米興行収入で第一位という快挙。いち早く観に行くべきだったと後悔したその理由は、年末の映画館での上映は全て英語吹替になっていたのだ。宮崎監督の映画はキャラクターに合わせた独特な話ことばや声のトーンなどに魂が籠る。日本語ネイティブが日本語で観られないのは悲しい。
しかし、ここはニューヨークなのだ。アメリカ(全世界でももちろんのこと)でここまでヒットしているなら、外国語である英語でも共感できるのだろう。
逆にジブリ映画の映像に思う存分集中できて新しい発見があるかもしれない。観客がどんな反応をするのかも興味がある。
上映直前、観客たちがスクリーン前で予約席の確認に時間がかかるほどの混雑の中、満席のシートが見渡せる一番上の中央に座った。
Grey Heron!
即座に鳥の名前に違和感があった。
映画の中のサギは、Grey Heron(灰色サギ)と呼ばれていた。
映画の中のサギの羽の色は薄青い。
日本はこの鳥を青サギって呼んでいるはずだ。
日本には青サギの他に灰色のサギっているのかな。
頭の中を灰色と青色のサギが飛び交った。
大切な役どころのサギ。
羽の色を間違えるなんていうことはないはずだ。気になる。
日本語では何と呼ばれているのだろう。
邦画は日本語で観たいというのは、こういうことなのだ。
何も考えなくていいところで映画に集中できなくなる。
とはいえ、映画は良かった!
主人公と同じような子供の頃(私は戦争を経験はしていないが)の記憶を改めてなぞることができた。自分では決して動かせない運命の道に向かい合いながら、自らが歩むことのできる道を探す記憶を。
前日に偶然にも一羽の鳥を埋葬したばかりということもあり、ストーリーの宇宙空間に入り込めたようだった。
宿題は、サギの羽の色だ。
古代の日本では、色の分け方が限定されており、ぼんやりした灰色のことを青と表現していたそうだ。つまり灰色の羽を持ったサギは、青サギと呼ばれ、それは既に奈良時代の記録にも残っているとのことだ。
Grey Heronも青サギも正しい。
最初は残念に思った外国語の吹き替えで、日本語の成り立ち、奥行きの深さを新たに知ることになったのは嬉しい収穫だった。
そして、日本語で観たい気持ちがより大きくなった。
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