I won

えっとね、前回は諸般の事情により議員辞職をしたダンホワイトさんが、後援者の押しによって現役復帰を嘆願するものの、再雇用資格不足という弁護士の意見によりイモを引いたマスコーニ市長が、再任を請け負うという約束を反故にして別の男を任命し、ホワイトは身重の妻をかかえたまま路頭に迷う、なんとも悲惨な状況まで追い込まれるというくだりまで行きました。

ダンホワイトは市庁舎の裏窓から忍び込むとマスコーニと口論の上、裏切り者として射殺、そして「偶然」出会ったミルクから、薄ら笑い(ダンホワイト側の主張)と、残念だ(too bad)という言葉で迎えられたと言う。マスコーニに5発、ミルクに5発、どちらもヘッドショットで2発、とどめを刺している。

どう公平に見ても逆恨みという状況は覆せないような銃撃事件。
(ちょうどさっき見たTwitterでこんなのがありました
https://twitter.com/aginganarchist/status/1664141936364752896?s=46&t=VVE1JTkKxIVlQczxopFrkA
カソリックは懺悔があるから、あなたは悪くない、神が赦しでくれると)

ところが、裁判では、犯行時のダンの精神状態は極度のうつ状態であったとされ減刑を考慮されている。
その証拠として、食生活を律するまでに健康に気を使っていたダンが、ジャンクフードを過食していたという証言が採用された。
これはその後、アメリカでの裁判の判例として採用され、ジャンクフードを摂取することが犯罪につながるという曲解まで生まれた。
これがいわゆる「トゥインキーディフェンス」である。

で、その後の証言等で構成された、ゲイ側の方々がこの後に書いた文献や撮った映画などに、というか、この事件を一般的な認知度まで押し上げたミルクという映画を見ると、「ダン、君だって本当はゲイなんだろう」という暗喩が出てくる。
現在表立ってる証言等を鑑みても、そういった証拠はあまり無いんだけど、もしかしたらダンホワイトが隠れゲイというのはその方面の方々にとっては一般常識なんでしょうか。

ほっほーぅ。なるほど。読めてきた。
つまりはこうだ。さあ諸君!謎は全て解けたぞよ。
(※注意!!以下全て憶測)

「Fresh Fruit for Rotting Vegetables」の最初の部分、つまりFresh Fruitは口淫の隠語であるという推理は前々回で示したとおりであるのだが、肝心のRotting Vegetablesであるが、これはおそらくこうだ。

まず、ダンホワイトのバックボーンに注目してみよう。この人は条例第6条の件でも触れたとおり、聖書の教えに従い同性愛を禁じているがちがちのカソリック伝統主義であるアイルランド系アメリカ人であり、健康に気を使い、普段から食生活も節制していたとある。そしてカソリックは金曜日に肉を食べない。

それから、Rottingには「堕落」という意味もあるようだ。

さて、ビアフラは「I Foughit the law」のカバーの中でもこのミルク銃撃事件に触れていて、「俺は6連発銃でジョージとハーヴェィの脳みそを吹っ飛ばした。俺は法と戦って、俺は法に勝った」「トゥインキーは俺の大事な親友だ」などと歌っているのである。

つまるところ、Rotting Vegetablesは「菜食の堕落」であり、先ほどの映画「ミルク」が暗に示している隠れゲイ疑惑から照らし合わせると、ミルクという存在によって、隠れホモセクシャルがジャンクフードを過食し、殺人事件を起こすまでに至った破滅の経路、つまり、菜食主義者を堕落させる口淫とは、

(こっから一気に意訳しますよ)

堕ちたカソリックをかどわかしたゲイという、マイノリティによる攻撃、つまりは革命の比喩だったのではないだろうか。

というわけで、「Fresh Fruit for Rotting Vegetables」というなんだかややこしい革命という意味の痛烈なタイトルのアルバムは、「NEVER MIND THE BOLLOCKS」や「GIVE'EM ENOUGH ROPE」にも匹敵する、アメリカのパンクを決定付けるアルバムタイトルとなった。

…と締めくくると美しいが。
この事件は、一見ミルクという活動家の暗殺がもたらした結果が生んだ自由獲得のための革命のようだが、実のところはカソリック移民がゲイを攻撃したという、マイノリティ同士、弱者がさらに弱者を攻撃する、という、底辺の構図に過ぎない(アメリカの多数はプロテスタント移民)。つまりは、先程のダン、君も同じだろ?とは、弱者同士が争ってどうなる?と言っているのではないか?
「もし一発の銃弾が私の脳に達するようなことがあれば、その銃弾はすべてのクローゼットの扉を破壊するだろう」
これはミルクの死後に発表された生前の肉声テープの有名な言葉だそうだ。
クローゼットの扉を破壊する=ゲイがカミングアウトするという意味だそうだが、白夜暴動の写真にこのタイトル、そして「kill the poor」「California Uber Alles」「Holiday in Cambodia」と、考えうる限りの悪辣なタイトルが並ぶこのアルバムを見るに付け、俺にはこれが、「社会の構造をさらけ出すだろう」という意味に思えてならない。

でもね、まあ同じカリフォルニアで起こった暴動とはいえ、わざわざここまでこだわってアルバムカバーにするってことはそれ相応の理由があったと思われる。
ミルクという人は軍隊を除隊した後、一時期NEW YORKに在んでいたことがあり、その際にブロードウェイ演劇のわりと有名な芝居のプロデュースをしていたことがあるそうだ。
ご存知のようにビアフラはDEAD KENNEDY'S結成以前は演劇をやっていたようなので、なるほど、シンパシーを抱いていたとしても不思議ではない。



…それか、まあ、よっぽどクラッシュが好きだったかのどっちかだろうね。

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