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とべ動物園のサルたち③「クロクモザル」

クロクモザル
Ateles panisicus
Black spider monkey
 ニホンザルのサル山ぞいにぐるっとまわり込むと、そこはもうオーストラリアストリートだ。ここにはカンガルーやワラビー、エミューなんかがいる。ダチョウにしてもペリカンにしてもそうだけれども、こういった大型の鳥を見ていると、「恐竜は鳥に進化した」という流行の説がとても説得力のあるものに思えてくる。いかにも力に満ちた足、長い首、あれで羽根が生えてなかったらまるっきり恐竜じゃないか。サル探検に来てるわりには横道にそれるが、これらの大型鳥類はそんなイメージで眺め直してみてください。見方が新鮮になること請け合い。
 エミューたちにおさらばするとそこは本日のメインディッシュ、モンキータウンだ。
 小さなことなんだけれど「街」って名づけられているところなんかなんか気持ちがいい。
 並み居るサルたちの中、どれから見てもいいのだが、まずはちょっと離れたクロクモザルのケージから。結構広いスペースに4頭が生活している。同居人はマーラという大きなネズミみたいな奴と、コンゴウインコ、ホウカンチョウという鳥が2種。見た限りではお互いそんなに気にしあうそぶりも見せずに同居している。
 まず何より印象に残るのがそのしっぽの器用さだ。樹上生活に完全に適応しているのだろう、ながーい手といった感じ。象の鼻よりも万能だ。何せしっぽ一本で体を支えてぶら下がり、何の苦もなく地上の物を手で拾い上げる。このしっぽには手足の指の指紋のような「尾紋」まであるというのだから徹底している。また、2、3頭で抱き合う様もよく見られる。そのときは両手で抱きしめるだけでなくしっぽまで相手の体に巻きつけている。なんとも愛らしい仕草だが、これは緊張状態にあるときによくある仕草なのだそうだ。そういえばこの間は中のひとりがしきりにくしゃみをしていた。風邪をひいて辛かったのかも。
 このクロクモザル、日本で初めて人工保育に成功したのはこのとべ動物園の前身、道後動物園。ほかにもとべ動物園では様々な動物の繁殖に力を入れて成功させていることで有名なのだが、そのことについてはまた別の項で触れたいと思う。
 クロクモザルは、南米アマゾン川北部に近縁種4種とお互いに棲み分けながら生活している。生活空間はほぼ樹上に限られていて、果実類が食べ物の8割を占める。昆虫や鳥の卵を食べるという報告もあるようだが、追認されておらずベジタリアンと考えるのが普通。現在生息地である熱帯雨林が開発による森林伐採で減少。また現地では食用にする文化も一部に存在しており、個体数は激減している。ここにいる4頭は退屈そうだけど、食べられちゃうよりはましかもしれないと思うのは、サルを食べない日本人だからかな。


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