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森林

今森林にいる。家の近くの。
池もあるんだけどさ昨日雨降ったから増水している。歩道ギリギリまで濁水がかかる家の周りをひたすら歩く。蝉は鳴き蚊には刺された。池の半周あたりに休憩小屋がある。小屋というか屋根のあるベンチだ。先客がいた。70歳ほどの男。向かい合わせに設置された長ベンチの同じ方の端へ座った。背負っていたバッグを下ろし、サングラスを外した。今日は非常に暑く太陽が眩しい。屋根の裏側を眺めボーッとした。これがまたいい。虫の音はうるさいがいいノイズ。田舎育ちのまぁちゃんにとってこのノイズは心地よい。少し経つと同じような男がやってきた。けんさんが来ないから一眠りしてしまったよ。と先客の男が言う。どうやら知り合いらしい。俺は思う。その歳になって俺には近所の公園で待ち合わせをするような友達と呼べる人はいるだろうか?いたとしてそれは良い生活なのだろうか、望む将来だろうか。俺の"散歩"にはよく付きまとってくる思考だ。見える景色、人、カラス、猫、虫、亀...
想像する。俺が向こう側だったら。いま俺から見えてる世界は他の誰も見る事ができない。同じ日、同じ時間、同じ場所で同じ方角、同じ対象物。これをもし真隣で見たとしても。
生い茂る木々が吹かれ葉が揺れている。

一羽のアゲハが宙に浮いていた。

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