パン屋でもやもやした話
こんにちは。まちゅです。
上の山羊は今回の話とは全く関係ないですが、すごい可愛いですよね。今の農場での毎日の癒しです。
さて、日本でも、外出自粛や3密対策などがとられていることを聞きました。詳しい状況は知りませんが、皆さんがお元気であることを祈っています。
最近ドイツでは、そんなコロナウイルスに対する外出制限などが緩和されてきました。理容院、飲食店、デパートやその他公共施設の営業禁止が法で義務付けられていましたが、徐々に営業再開に向かっている状態です。
それに伴って、マスク着用の義務はあるものの、人々も少しずつ買い物に行けるようになってきています。1.5mのソーシャルディスタンスも明確にとれるように、スーパーやパン屋などでは床にテープが張られて分かりやすくなっています。
警察も見回りに出歩いているので、少し緊張感があります。
こっちではこんな感じの近況でございます。
自転車で買い物に
昨日は土曜日でした。
いつもは午前中も農場のお手伝いをしているのですが、久々に1日お休みをもらって自転車でお出かけをしました。
農場から15分くらい自転車をこぐと、ローテンブルクという街があります。
小さな街ながらも、赤いレンガを基調とした、アイス屋さんやパン屋さん、薬局やブティックが並ぶ可愛い街です。
そろそろ切れてきた物資(日焼け止めクリームなど)を調達するために、今日はローテンブルクまで出かけることにしました。
風は少し冷たかったのですが、いい天気で気持ちよく自転車を漕ぎました。
ローテンブルクの広場に着くと、1カ月前にはほぼ人が見当たらなかったのが、少し活気のあるくらいに人が買い物に来ていました。
ドイツでは土曜日の午前中にマーケットが開催されるのですが、今日はそれもやってました。(2カ月ほどコロナ対策で禁止されていたのですが)
ドイツ人は普段、マスクをつける習慣はありませんが、こんなご時世なのでみんなマスクを着用していました。(というか義務なので)
私も、顔を覆うようのスカーフをして人と距離を取りつつ、目当てのお店に出かけて行きました。
1時間くらいで用を済ませると、もうお昼の時間でした。
少しお腹がすいたので、ふらっとパン屋さんに立ち寄りました。
このパン屋さんが、今回のお話の舞台です。
パン屋で
お店に入ると、前のお客さんがパンを買い終えたところでした。
店員は40代くらいのショートカットの女性と、20代くらいの若い女性の二人でした。仮に40代の方を店員A,若いほうを店員Bとしておきます。
店員A「何にする?」
私「ちょっと考えますね」
小さなパン屋さんですが、20種類くらいのパンが並んでいたので少し迷いました。パンを決めて、カフェマキアートも一緒に頼みました。
支払いはクレジットカードでできるか聞いたところ、
店員A「いいえ!残念ながら使えないわ」
と私の質問にかぶせ気味に答えられました。
この時少し不愛想な店員さんだと思いましたが、まあドイツの店員さんは不愛想な人も結構いるので何も思いませんでした。
(可愛い笑顔で対応してくれる人もたくさんいます。でも、ドイツでは客と店員がどっちが上、みたいなのがないのです。)
現金で支払いを済ませ、お釣りを受け取ろうとしたところ、
店員A「じゃあ、ここに名前と住所を書いて」
と言われ、出てきたレシートを裏返してペンと共に渡されました。こんなことは今まで経験したことがなかったためによくわかりませんでした。
「名前と住所?」と聞き返すと、
店員A「名前と電話番号でもいいわ、ここに書いて!」
と言われました。
頭の中は「???」とはてな状態ですが、とっさに渡されたペンで馬鹿正直に名前と電話番号を書いてしまいました。
店員A「はい、それここに置いてって」
と、そのレシートを回収されました。
私は不思議に思って考えていると、店員Aに何か聞かれました。
私は聞いていなかったので「もう一度言ってくれる?」と聞き返すと、
隣の店員Bが「カフェマキアートの上に、ココアパウダーはのせる?って聞いたのよ。」
ともう一度言い直してくれました。
「ああ、じゃあお願いします。」
この時、店員Aが小声で店員Bに素早く何かをささやきました。
全部は聞き取れませんでしたが、
「ココアパウダーなんて簡単な言葉聞こえないことある?」とかそんな感じだと思います。おそらく、私のドイツ語が拙いのでどうせ聞こえないだろうと思って言ったのだと思います。
でも、店員Aは明らかに私に対して嫌な顔をしていて、それが伝わってきました。店員Bはそれを聞いて困ったように笑っていました。
この時、私はとても嫌な気持ちになりました。店員Aからすごく嫌な印象を受けました。さっきのレシートのことも、この店員Aの嫌がらせなのではないかと思えてきました。思い返せば、私の前にいた客はレシートに名前を書いたりしていなかったように思います。
私はなぜ、自分が連絡先を書かなければいけなかったのか聞きたい気持ちでいっぱいでした。
しかし一度そのタイミングを失い、聞きたい、聞きたいと思いつつも「もし聞いてショックなことを言われたらどうしよう」と不安が勝ってしまい結局何も聞けずにパン屋さんを急いで出てきてしまいました。
パン屋さんから少し離れたベンチに座り、カフェマキアートを飲みましたが味がしませんでした。
今経験したことを思い出し、頭の中で整理しようとすると
「もしかして、自分はたった今差別をされたのではないか?」という不安が強くなってきました。
なぜ私は連絡先を教えなければいけなかったのか。それは、アジア人である私とコロナウイルスを店員が結び付け、もしもこの店でコロナが発生した場合、私に責任を追及しようと考えているのではないだろうか。
そんな考えが頭をよぎりました。
もう一度、店に入って理由を訊ねようかとも思いました。
しかし、ネイティブの速さでドイツ語をまくしたてられたら分からないし、何よりも「怖い」という気持ちが勝ってしまい、勇気を出して聞くことはできませんでした。
いやー、ほんとほいほい名前を書かずに理由を聞いておくべきでした…(´;ω;`)
一体、今回の出来事は何だったのか。
今同じ農場でWWOOFERをしているファリーナにこのことを話すと、
「え??名前と連絡先を聞いてくるなんて普通じゃないわ…。もしかしたらコロナのせいかもしれないわね。私が理由を問いただしてやりたいわ。ひどいわね。次は私もついていくわ。」
と言ってくれました。
ドイツ人から見てもそうなのであれば、やっぱりあれは差別だったのかもしれません。あの時、店員に理由を聞くことができなかったためにもやもやする結果となってしまいました。
私の日本人の友達に話すと、「それ、絶対デートに誘われるよ!その人に狙われてるよ!!!」なんて意見もありました(笑)
その可能性も無きにしもあらずですが…(いや、ない)
今回の件で、私は初めて差別されるという感覚を味わいました。(真実は謎ではありますが)
正直、私の周りのドイツ人はみんないい人ばかりで、私はアジア人ということで特段嫌な思いをしたことはありませんでした。
コロナの流行に伴って、世界各国のアジア人が差別されるという話をよく耳にしていましたが、それがまさか自分の身に起こるとは、思ってもいませんでした。
あの時、真っ先に感じたのは大きな不安でした。
自分の母国語が通じないというそもそも不利な状況の中で、自分の敵かもしれない人と戦うという恐怖は、想像以上でした。
私に起こったことは、私が耳にしたアジア人差別(唾をはかれる、コロナと呼ばれる、追いかけられるなど)に比べたらまだ軽く、グレーゾーンなところもあります。それでもこんなに嫌な思いをするとは思いませんでした。
しかし、確信を持って言えることは、彼女が本当に私を差別していたとしたら、彼女は人として恥ずかしい人間であるということです。
私は絶対に、その差別をする側にまわりたくないし、まわらないように気を付けようと感じました。
差別とは、このコロナに関してアジア人が受けるものだけではありません。
例えば日本の中にだって、外国人差別、障がい者差別、部落差別など差別をする人はいます。どんな人だって簡単に加害者になってしまう可能性があるんだと思います。
自分がしないように気を付けるだけでなく、周りにそういう人がいたらちゃんと言える人間になりたいと思いました。
追記:5月22日
先日、この記事を上げたときとは少し異なる心情のために追記いたします。
この出来事の後、ファリーナが農場のみんなにこの話をしてくれました。
農場のホストファミリーが言ってくれたことは、
・現在、コロナ対策のためレストランで連絡先を聞くことがあるので、もしかしたらそのためかもしれない。ただ、最近のコロナ対策のために様々な店の店員がストレスのため不親切な対応をしてくるし、それはいいことではない。
・私は農場、大学、家族の元滞在しているわけであって、私にはここにいる権利がある。
・もしも今後、同じような状況で困ったことがあったらすぐに農場に電話をかけるように。農場が力になる。
私はこの出来事についてあまり気にしていないように努めていたのですが、農場のみんなが真摯にこの話を聞いて受け止めてくれて、私の気持ちを気遣ってくれてその優しさからつい泣いてしまいました。
そして、心が本当に軽くなりました。
おそらく、自分も不安だったんだと思います。
不親切な店員だったこと、コロナウイルス感染対策下のもと少し緊張した状況であること、自分の国でなく言語を完全に理解できないことなどが重なってした経験でした。
私の思い込みかもしれない内容を書いた記事であり、「差別」という重い言葉を使ってしまった記事なので少し消そうか迷いました。
しかし、周りの人々の温かさや誰かに打ち明けることの大切さも学べた出来事なので、残しておこうと思います。
まちゅ
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