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「おしゃべり」

ぼくの過去など
知りたくないだろ
誰も
ぼくの過去など
知りたくないだろ
聞いてくれないだろ

だから
ぼくは ぼく自身を語ることはない
だが しかし
体験というものは
記憶というものは
過去というものは

体の 心の 奥底に
しまい込み
化石になっていても
時にそれが 何かの拍子で
地表に飛び出し
自分の思いとは裏腹に
語られてしまう
いや
本当は
ぼくは
ぼくの過去を 体験を
語りたいのだ

語られる――
などと 他人ごとのように言うな
主体として
ぼく自身が
ぼくの口を使って
その体験を 過去を
言葉として 語るのだ

それは
化石となっていたはずの
過去を
少しでも外に出し
身を軽く 心を軽くしたいからだ

だから
きょうも ぼくは
口軽の男だった


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