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「母の美しい文字」

おかあさんの あの美しい文字
いつもボールペンで 細かい文字で
便箋をきれいな文字で埋めた
そんな手紙が月に何度も届いた

70 80――と年齢を重ね 白内障 緑内障に侵され
もう美しい文字を書けず
紙の上を這うふるえる文字
 ようやく読み取れる文字
それで綴られた手紙
読むと心が痛んだ
美しい文字を書き綴ることは姉さんが引き継ぎ
ぼくはまったくの悪筆だけれど

年を重ねたぼくは 今も
さらさらと ボールペンを走らせていた
昔のむかしの
おかあさんの姿がなつかしい

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