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思い出になる前に

数か月後、この場所は
工事の仮置き場になるらしい
そんなはなしを耳にした

この場所は、幼い頃に
自転車の祖父の後ろに乗せられて
よく連れてきてもらった場所

どこにでもあるような畑と小屋
僕のなかでは特別な場所だった

豊かな緑 小川の音 とりの囀ずり
遠くに見える 街のシルエット

幼い頃の感性の多くは
この場所で養われたといっても
過言ではないかもしれない

自分自身も今は土木設計の
仕事に携わっているので
事業サイド側の事情も頷ける

でもやっぱり、いざ自分が
その逆の立場に置かれると
寂しさをおぼえる

何気なくどこか懐かしいあの感じ
畑を耕している姿も 今のこの姿は
もう見れなくなってしまうんだろうか

これは大学時代に何気なく描いた1枚
畑にある小屋をその場で描いたもの

このごちゃごちゃ感が好きで
美しい景色や有名な観光地よりも
集落や街中に潜んでいる何気ない
日常に特に強く惹かれていた頃だった

工事のはなしを聞いたとき
この1枚を描いててよかったって思った

この場所が思い出になる前に
もう一度この目にやきつけて

工事が無事に進んでいくこと
を祈りたいと思う

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