電車のある風景
(生後9ヶ月 303日)
息子は、電車が通るとよく見つめている。
ガタンゴトンという大きい音だから目がいくのか、物体が速いスピードで動くから目で追ってしまうのか、理由はわからないがとにかく電車が通るとそちらを見る。
喜ぶとか怖がるとかでもなく、ただ見ている。
ああ、これが彼の原風景になるんだろうな、と思った。
僕が育った土地は線路の近くではなかったので、僕は電車に対してノスタルジーを抱くことはない。
僕は鉄を扱う工場地帯の近くで育ったため、溶接の火花やスクラップ工場の騒音が原風景だ。
僕の物語と彼の物語の原風景は違う。
彼の物語は彼だけのものである。
そしてその物語は、すでにスタートしているのだ。
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