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N35°35'05.26” E139°32’59.44” ですから、あの、体と心とが分離しているというSF的な感じの道路だったんです。

えーと、なんだ、チャネルハウスといってた、うん、そうですね、シェアハウス。以前は賃貸アパートだった。そこの遊歩道。むかしはきたなかったんだけれども、修復、修景っていうんですかね、それがはじめて実現したところ。美しが丘中部自治会のなかにあるアセス委員会の仕事としてですね、わたしはずっとこれを追いつづけていたもんで、ここをえらびました。

美しが丘中部地区には歩行者専用道路っていう遊歩道が、3300メーターある。東京オリンピックの頃に、これ、できたんですけれども。えー、40年以上たって古くなって、あまり評判が良くなかったんですね、ええ。ハイヒールのかかとがこわれちゃったりね、雑草が生えたり、いろんなことがあって。で、2010年に修繕したんです。
どうしてそれができたかっていうのを、順を追って申し上げます。この人と車を分離するための遊歩道は、有名なニュージャージーにあるラドバーンという街の方式をまねたんですけれどもね、できた頃は前代未聞ということで、横浜市から歩行者専用道路としてみとめてもらえなかった。この遊歩道、30センチ角の舗石ブロックが敷いてあるんだけど、その下は実は砂なので車でとおるとデコボコして車道としてはつかえない。つまり姿や仕様は遊歩道なんだけれども、法律としては車道、車を乗りいれてかまわないということになっていた。ですから、あの、体と心とが分離しているというSF的な感じの道路だったんです。けれどもね、2004年、努力のかいあって、やっと名実ともに歩行者専用道路になったんですね。ただですね、そのときに行政から「美しが丘さん、そうはいうけどその遊歩道、あんまりきれいじゃないね。デコボコだね、で、草も生えてるね。あれでは楽しく歩けないよね。」と言われてしまった。たしかに、と思いまして、アセス委員会でワーキンググループをつくって遊歩道の研究をはじめたんですね。あれはわたしがアセス委員長になる前だったかな。3人のグループだったんですけどね、ワークショップやって、住民も参加して、いろんな人に教えを乞うて報告書をつくりました。それができあがりつつあったときに、横浜市から改修方針について意見をもとめられたんで、アーバンコンサルタントにはいってもらって、道の長さをあんまり意識させないようなデザインにしたらどうか…と。ということで、横ラインで別の石をいれることになった。トランクなんかをゴロゴロひっぱっていくとわかるんだけど、石によって音がかわるんです。すごくリズミック。それで進んだ距離も感じられる。そのアイディアを住民のかたにもOKいただいてアセス委員会として2008年に報告書を提出した。

しかし出したはいいけれど、それから1年半なしのつぶてで、うんでもなきゃすんでもない。たぶん役所の誰かの引き出しにはいっちゃって眠ってるんじゃないかと思ってたんです。けどそれが突然ね、予算はとった、この歩行者専用道路を1本なおしましょう、と。ついては住民の意見をきかせてくれ、ときた。報告書には、なおすときには、住民も知恵をだしますから、と書いてあったものですから、それを受けとめてくれてたわけですね。それで、青葉土木事務所の人たちがこられてね、大勢でちゃんと会議をやったんです。それで、前とおなじ素材をベースにして、それにプラスアルファをつけると。それは、いま白くなっている部分。極端にいうと1枚の石の値段が10倍、10倍もするいい石なんです。まあ予算の枠はきまっているんですけど、たとえば、って横浜市のほうから提案がきたわけです。で、選ぶにあたっては住民があつまってきめたんです。住民の意見をちゃんと吸いあげてくだすって、それでデザインの選考もぜんぶまかせてもらった。そういうことまで行政がやってくれるということはすばらしいこと。そういうのはめずらしいと思うんだよなあ。うん。それだけ苦労してつくったものですから、わたしとしては思い入れがあります。177号線というんだけどもね、道には起点と終点があるんだけど、とくにその177号線の起点をポイントにあげようと思います。
それから東日本大震災のあと、地震に強い水道管に取り替える工事が歩行者専用道路であったんですね。それでこの模様をぜひほかの遊歩道にもつけていただけないか、というお願いをしたら、横浜市が予算をちゃんと組んでくださった。水道局にも横浜市からちょっと補助するようなかっこうでそのデザインで舗装してもらいました。いま、遊歩道全体の30%くらいかな、できてます。

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中部自治会アセス委員会は、2003年末に建築協定から地区計画に移行したすぐ翌年、2004年にできて、今年で13年。わたしは最初5年間事務局長をやっていて、そのあとの5年、委員長をやって。いまはヒラ。会議はね、1ヵ月に1ぺん定例会をひらいて、地区計画の見守りっていうことで、新しく家が建つようなニュースをできるだけはやくキャッチして、情報を整理して住民のみなさんにおつたえをする。街なみづくりがメインなのでどぎつい色はつかわないでくださいとか、そういったことお願いしています。そのほかユリノキ通りの清掃とか、中部自治会館の整備や、ここは地区計画の区域であるということを自他ともにみとめるために立札をたてたりとか、パンフレットをつくって、我々はこういうふうにまちづくりをしています、ご協力ください、というふうにしています。

谷弘志

このおはなしは2017年No.004号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。650円(送料込み)でお送りします。「街のはなし」2020年 No.007へのサポートも大歓迎です。プロジェクトをサポートしていただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。

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