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グロスポリマーメディウムで「テロンテロンカーモデル」を手に入れよう! 

 子供のころからあこがれていて、いつか自分でもいいものを作りたいと思いながらも技術が追い付かず、個人的に最もあこがれのジャンルでありながら最も苦手なジャンルのプラモデルが「カーモデル」です。

テロンテロンカーモデルは時間&技術がかかる!

 カーモデルというと、ショールームに飾られているような、ボディーが鏡面のように磨きこまれていて、自分の顔がそこに移りこんでしまうような「テロンテロン」の完成品が思い浮かぶのですが、これを作るには繊細な技術と根気のいる作業の積み重ね、塗装とトップコートの乾燥&硬化時間をしかかり待つことのできる忍耐力が必要で、特に忍耐力が著しく欠如した自分にとっては作るのが非常に難しいというか、何なら不可能な代物なのであります。

 この「乾燥・硬化時間が待てない」というのは、プラモデル趣味の入り口に立った小さなお子様(だいたい小学校高学年くらいを想定してます)にとっても【あるある】なのではないかと思われます。つまり、ワタクシの忍耐力は小学生レベルということです。子供部屋小学生レベルおじさんです。

 加えて、この「テロンテロンのカーモデル」を作るには、塗装とトップコートを繊細かつ均一に施すためのエアブラシとコンプレッサー、いわゆる「研ぎ出し」工程に必要な研磨剤と多数の番手の磨き布が必要となるわけで、しっかりしたものを一式そろえたらそれだけでキット10個分以上のお金がかかるのですが、この金額は、忍耐力が小学生レベルのおじさんならその忍耐力のなさを武器にエイヤッと払ってしまうでしょうが、リアル小学生のお小遣いで支払うのはどだい無理なものです。

小学生(レベル)でもテロンテロンカーモデルがほしい!

 そこで、小学生並びに小学生レベルおじさんでも何とか簡単に「テロンテロンカーモデル」が手に入れられないか(あくまで簡単にというか、疑似的に)思案していたところにふと思いついたのが、アクリル絵の具の添加剤である「グロスポリマーメディウム」を使うということでした。

 グロスポリマーメディウムは、アクリル絵の具に混ぜて光沢を出しつつ薄めるのに使うものなので、乳白色をしているのですが乾燥するとつやのある透明となるため、本来の使い方とは別に、模型の世界ではジオラマなどにおける「水」の表現を行うために使われることもしばしばあり、模型小売店のジオラマ素材コーナーなどでは「水表現用」というラベルがついて売られていることもあります。

 今回の「グロスポリマーメディウムを使って疑似テロンテロンカーモデルをつくる」という発想に至ったきっかけですが、カーモデルとは全く別の、ミニチュアレジンキット(下記写真)用の土台を制作している時に、

水の表現としてアクリル絵の具で塗装した木の端材側面に指でグロスポリマーメディウムをすり込んだところ、写真ではちょっとわかりにくいのですが、光沢のある透明の、ガラスのような表面が出来上がったため、「これ、カーモデルのボディにやったらテロンテロンになるんじゃないか?」と思ったわけです。

何はさておき、実践です。

 というわけで、さっそく試してみます。小学生のお小遣い+α、ないしは親御さんが買い与えるにしても差し支えない金額ですべてをそろえられれば…ということも想像しつつ、今回はアオシマ文化教材社より発売の初心者向けカーモデルキット「楽プラ」を使うことにしました。

 「楽プラ」は、塗装済みのパーツを接着剤を使わずにはめ込んでいくことで完成させられる、まさにラクラクに作れるキットで、おおよその実勢価格は車種にもよりますが1500円前後となります。
 写真のフェアレディZは、ヤマダ電機で税込み約1400円ほどでした。グロスポリマーメディウムの方は画材屋さんなどでも(もともと画材なので、むしろこういった店舗での取り扱いがメイン)およそ500円前後で売られていることが多いので、総額2000円で必要なものがそろうと考えていただければいいかと思います。
 そのほか、ニッパーやピンセット、紙ヤスリがあるとより良いですが、これらは100円ショップで売られているものでもひとまずは十分かなと思います。

 取り急ぎ開封して、ボディーパーツを確認してみると、

 ボディーカラーはすでに塗装済みというか、ボディーカラーのプラスチックで成形されていて、パール粒子も練りこまれており初心者向けキットとしてはこれだけでも十分なクオリティではあるのですが、どうしても「プラスチックっぽい」感じは否めません。

使う工具は「指一本」です。

 さっそく「プラスチックっぽさを消しつつテロンテロンのツヤを目指して」行くわけですが、工程はいたってシンプルで、「組み上げたボディにグロスポリマーメディウムをすり込んでいくだけ」です。

 上記の写真は撮影のために多めにメディウムを取っていますが、実際はハンドクリームを手指にすり込む程度の量で充分です。ひとつ注意点として、写真でもわかるとおりたとえ水性といえども手指を使っての作業の際は必ず手袋をつけるようにしましょう。最近は、新型コロナ感染対策として使い捨てのニトリル手袋も100円ショップなどで良く売られているので、それを使うのがいいと思います。

 また、原液のままだとやや濃くてすり込んだ指の後に筋状にメディウムが盛り上がった状態になってしまうため(この後の写真を見ていただくとわかるのですが、実際そうなってしまいました…)メディウム3:水1くらいの割合で希釈して、伸びがよく、塗った後に表面張力で多少の塗りムラをカバーしてくれるような状態にしておくとよりきれいに仕上がります。

で、どうなった?

 指の跡がつかないように気をつけつつ、2回ほどメディウムを塗り重ねた状態が、こちらです。

 1回目のすり込みの際にメディウムを薄めなかった分、筋状のムラができてしまいましたが、照明の光を反射するほどの光沢が生まれ、開封時そのままよりも多少は「プラスチックっぽさ」が消えたのではないかと思います。

 ついでに、ホイールも同じようにグロスポリマーメディウムを塗ってみました。

 ひとしきりグロスポリマーメディウムを塗りこんだ後は、より光沢が出るよう眼鏡拭きなど繊維の細かい布で、表面をやさしくなでるように磨いていきましょう。イメージとしては「ピカピカ泥団子を作る」ように、やさしく均一に、根気よく磨いていくことです。今回はとりあえずということでそこまで時間をかけず、ひとしきり磨いてみた状態の写真を載せます。

 100円ショップで見つけた小物入れのふたがちょうどいい感じだったので、台座にしてみました。

しっかりボディに「映り込み」が見られます。

 ひとしきりボディを磨いた後は、ほこりやメディウムのカスなどがボンネットやドアのモールドにたまって白っぽく見えてしまうことがあるので、0.3mm芯のシャーペンで溜まったものをほじくりつつ簡易的なスミ入れを行うとよりきれいに仕上がります。これも100円ショップで売っているもので十分です。メディウムの希釈割合など突き詰めていけば、もっときれいなものができるのではないかと思います。

やってみて、足りないものも確かめて…

 ご覧いただいた通り、本式に従った「研ぎ出し」によって作ったカーモデルのクオリティには及ばないものの、費用をかけずにテロンテロンカーモデルを手に入れることはできたのではないかと思います。

 本格的な研ぎ出しカーモデルを作りたい、という場合でも今回ご紹介の方法での制作の過程で「本当にきれいなテロンテロンカーモデルを作るためには何がどれだけ足りないのか、それを手に入れるためにはどういった技術の習得や道具の購入が必要か」ということが分かってくるかと思います。
 それが分かったうえで改めて技術を身に着ける、必要な道具を買うということをやっていけば、上達も早く確実にできると思いますし、上達するとそれだけ楽しくなる、という経験は、特に初心者の方や学び盛りの低年齢プラモファンには、とてもプラスになるはずですので、ぜひ一度この方法で「テロンテロンカーモデルもどき」を作ってみてください。

別件ですが、受賞報告!

 このたび模型店「ボークス」さんにて行われた【第10回VKMペイントコンテスト】秋葉原ホビー天国2・ミニチュア胸像部門において、金賞を受賞することができました!

2023年3月上旬まで、秋葉原中央通りにある「ボークス秋葉原ホビー天国2」3Fに展示されておりますので、お近くにお越しの際はぜひご覧になってください。

サポートいただけたら励みになります。具体的には心身養生の足しにしたいと思います。