見出し画像

英国シティズンシップ教育(3)-National Curriculumへの導入の背景

今回の記事では、イギリスにおいて教科CitizenshipがNational Curriculumに設定された経緯について簡単に説明します。

イギリスのNational Curriculumとは

National Curriculumとは、イギリスにおける全ての学校で教えるよう定められている教科のことです。1988年に教育改革法が設立し、National Curriculumと、その到達度を測るためのNational Testが導入されることになりました。

National Curriculumは、Core Subjects(中核教科:3教科)の英語・数学・理科と、Foudation Subjects(基礎教科:9教科)の美術・シティズンシップ・コンピューティング・デザインとテクノロジー・外国語・地理・歴史・音楽・体育の計13教科から構成されています。(GOV.UK 2020/07/06現在)


CitizenshipのNational Curriculum導入の経緯

粟田(2002)*によると、イギリスのCitizenship導入の背景には大きく3つの背景があるとのことです。

(1)国家の役割の変化
国家が全ての福祉政策を担うことが不可能となり、多くの問題の解決を国家のみに頼るのではなく、「全ての人が解決に寄与できる社会」をつくる必要性が高まった。
(2)青少年の現状
若者の投票率の低下、社会への疎外感。支持政党を持たず、新聞を読まないなどの現状。
(3)文化的多様性
ロンドン中心部では英語を第2言語とする子どもが6人に1人いて、地方においても多様な人種・出自の人が暮らすなか、文化的多様性や各文化のもつ価値への理解が欠如している。「同じ市民である」ことや、「多文化共生」の認識を根付かせる必要がある。

長沼・大久保(2012)でも、上記について「日本もかなり似た状況にある」と書かれていましたが、私もそう思います。さまざまな国で教えられているシティズンシップ教育をどこで学ぼうかと考えたときに、イギリスの社会の状況がなんとなく日本と似ていそうだと感じたので、イギリスのシティズンシップ教育を学ぼうと決めました。


私はなぜ、シティズンシップ教育が必要だと思うのか

なぜシティズンシップ教育に興味があるのか、なぜこんなにも気になるのか。単純に「近頃の若者は社会に関心がない。嘆かわしいことだ」と批判するつもりは全くありません。

むしろ私がずっと感じていた課題感は昔の自分自身に対して。小中高と12年間も「学校」で勉強したはずなのに、社会のことを全く知らないままで、興味もなかったことへの驚きというかショックです。

大学生になり、初めて投票用紙が届いたとき、どうしたらいいものか全く分からず、結局投票に行けませんでした。その時に、「今までそれなりに学校で勉強してきたはずなのに、このままじゃいつまで経っても大人になれない...!」と強烈に思ったことを覚えています。

その後、なぜか英語サークルに入ってディベートをやるようになり、様々な社会問題について複数の視点から考えることの面白さにも気づきました。異なる視点からの意見も一理あると気づいたり、なにより、「100%なにもかもうまくいってみんながハッピーになれる」という状況はほぼないことにも気づきました。

政治に関心を持とう、投票に行こうということではなくて、ただ、世の中には問題がとてもたくさんあって、それについて普段からなんとなく考えておいた方がいい気がするんです。

正解がない問題に対しては、自分の意見やスタンスが自分の行動を決めると思います。その問題に直面したとき、もし自分の意見がなかったら、何もできない気がする。ただフリーズしてしまうのではないでしょうか。

そして私は、それは困ると思うので、「自分で考えられる力」と、「異なる意見の人と話し合える力」を身につけられたらいいのではと考えています。

・・・

粟田充治(2002) Citizenship Educationの教育理念と内容-Active Citizenを育てる教育,日本ボランティア学習協会 英国の「市民教育」Citizenship Education in UK
*絶版のため長沼・大久保(2012)pp.60-61記載内容を要約して掲載

長沼豊・大久保正弘 編著 (2012) 社会を変える教育: 英国のシティズンシップ教育とクリック・レポートから
Amazonリンク


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?