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鴻雁北(こうがんかえる)|七十二候

雁が北へ帰っていく頃。雁は夏場をシベリアで、冬は日本で過ごす渡り鳥です。群れをなし、連なり飛び去っていく雁。昔から日本人は、雁の行き来に季節の移り変わりを感じ、多くの詩歌に詠まれてきました。

春になると、雁が北の方へ帰っていきます。
と言いつつも、実は私は雁が群れをなして飛んでいく姿を実際には見たことがないのです。
なので「鴻雁北」の候ですが、同じ渡り鳥でも、春に北に帰っていく雁ではなく、雁と入れ替わりに春に日本に戻ってくる渡り鳥のツバメについて少しお話ししたいと思います。それもイワツバメの思い出です。

駒の湯山荘の1代目が切り盛りしていた頃、イワツバメが駒の湯山荘内の壁に巣を作ろうとしたことがありました。
それを見つけた1代目が、
「よし、巣を作りやすくしてやろう」
と巣の下に横板を付けてあげたのです。
すると、ぴたっとイワツバメが来なくなってしまったのです(!)。

ただ、それだけの話なのですが、
毎年やってくるツバメをみると、1代目のしょげた顔を思い出します。

そして毎年決まった季節にやってきて、帰っていくツバメを見ていると、自然の大きな循環、リズムを感じます。そしてそこに、気功の真髄をみる気がします。

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なぜなら、気功も何度も何度も同じことを繰り返し、循環させることによって、気功の真髄が何となくわかってくるものだからです。

よく武術の練習で同じ型を何度も繰り返しますよね。
あれと同じです。
とにかく何度も何度も同じ動きを繰り返すうちに、いつか自然に動きが身体に溶け込んでいきます。そのうち、何となく真髄がわかってくるのです。

ただこの時大切なのは、”武”と”術”をきちんと分けて考えることです。
”武”は型、見た目の部分です。
”術”は真髄、見えない部分です。
本来、武術は”術”、真髄を悟るためのものです。
そのために、”武”の型を何度も何度も繰り返すのです。

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私は自発動派なので、同じ型を繰り返すというより、自分の内面から出てくる動きに任せて動きます。そして自発動を続けるうちに、何となくわかってきます。

たとえば、私は自発動で自分自身を治療(気功治療)するのですが、やっていくうちに、自然に自分の悪いところが、気の流れが滞っているのがわかるようになります。そして痛いところでてきます。

その痛みは、懐かしい痛みです。

子供の頃に捻挫したところの痛みだったり。
鉄棒で頭をぶつけて切ったところの痛みだったり。

私は、これがいわゆる”術”、悟るということなのかなと思っています。

”術”は、悪いもの、見えないものを、痛みという見えるものにして出してくれます。この時出てくる痛みが、いわゆる好転反応と言われているもので、これが見える形になって出てくることが大切なのです。そして続けるうちに、気の流れが出てきて、悪いものを身体の外に流してくれます。

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気功は自分自身の身体を、自分自身で治すためのものです。
イワツバメが、人が良かれと思って手を指し伸ばしたものではなく、自分自身の力のみで巣を作っていたように、人間も、自分自身の力で健康になれたら良いと思います。
そのための自分自身の力で自分自身を健康にするための力、自然治癒力を高める方法を気功は教えてくれます。
気功は、そういう古代から伝えられてきた大切な人類の智慧なのです。

秘湯と気功に感謝を込めて。