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日本人の血100%のアメリカ人

私の旦那さんEは、日系アメリカ人の二世です。両親ともに日本人で、Eが生まれる前に、日本からアメリカへ移民してきました。よってEは、日本人の血100%でありながら、アメリカで生まれ、育ち、アメリカ国籍です。私は彼にふざけて「日本人のサラブレッドだね!」と言うのですが、冷静で(笑)、かつ、馬好きの彼からは「だから、サラブレッドっていうのは馬の種類のことだから」と返ってきます。あ、そうなんだ。でも、なんかかっこいいじゃん、ね。

両親ともに日本人で日本語話者なので、Eは、幼少期を日本語で育ち、当然のことながら日本語を話していたそうです。日本語放送で日本のアニメとかも見ていて、同世代である私の兄とは、アニメの話で盛り上がっていました。では、英語はいつから話せるようになったの?どうやって?と、思うではないですか。聞いてみると、大好きだったルーニーテューンズなどのアメリカのテレビアニメを見たり、アメリカのコミックを読んだりするようになると、自然に日本語から英語になっていったそうです。学校に行くようになって、言葉で問題があった、とは聞いたことがないので、その頃には、すっかり英語の人になっていたようですね。日本人を親にもつアメリカの子供は、通常の学校に加えて、土曜日に日本語の補習学校に通って、日本語も維持するパターンが多いようです。Eも補習校に行った(行かされた)ことがあるそうですが、土曜日は勉強ではなく遊びたい、という気持ちがまさり、即挫折(笑)。そうして、次第に日本語を置き忘れたようですね。

今でこそ、Cool Japanと言われるように、日本の人気アニメ、ゲーム、ファッションなどの影響で、日本人の子供は「Cool!」な存在と受け入れられるようですが、Eの子供時代は、全くそんなことはなく、まず日本人であることが珍しかったし、日本人であることでイジメられることのほうが多かったそうです。幸いEは、日本人のくせに(笑)、185㎝という長身で、子供の頃も背が高く、身体的なイジメには発展しなかったようですが、それでも「ジャップ」という日本人の蔑称を使われることもあり、悔しかったり寂しかったりした経験も多くありそうです。

さて、幼少期にペラペラだった日本語、子供時代に置き忘れてきた日本語はいったいどうなってしまったのでしょう?ちなみに、置き忘れた、といっても、両親は基本的に日本語で話しかけますので、日本語を理解する力は持ち続けていて、ただ、生活をするにおいて、友達、学校、テレビなどであふれる英語に日本語が自然と押しやられた、と言う方が正確なところかもしれません。日本語検定の教科書などを持っていましたので、勉強したのかと聞いたことがありますが、試みはしたけど挫折したと言っていました。机上の勉強派ではないですから、まぁ、そうでしょうね。大人になってからの、日本に住む日本人のお友達との定期的な会話、日本人の彼女(←私)との出会い、そして結婚、それによる新しい家族(←私の家族)の存在、さらにYouTubeなどの動画で、置き忘れた日本語を徐々に拾い集め、そして新しい日本語を着実に上乗せし、今に至るようです。お付き合いしていた頃は、日本のドラマの英語字幕作りを一緒にしていました。あくまでも、楽しみとして。私が翻訳して、彼が編集。私の英語理解、彼の日本語理解、私たちのお互いの理解には最高でしたね。

日本人の血が100%でありながら、アメリカで生まれ、育った彼に「自分では、日本人だと思うの?アメリカ人だと思うの?」と聞くと、だいたいの場合「アメリカ人」と返ってきます。もし、日本国籍の取得も可能だったとしたらどうした?と聞くと、迷いなく「アメリカだよ」と。日本国籍を取得する明確なメリット、理由がない限り、意味がないそうです。ま、そうですね。あ、だいたいの場合、と書いたのはには訳があります。普段はアメリカ人の彼ですが、私からしてみると、日本人とアメリカ人の微妙なブレンドでして。例えば、こんな感じ。

私:「枝豆ってわかる?」

E:「枝豆?あたりまえでしょ。だって日本人だよ!」

あ、そうね(笑)。

これはほんの枝豆ですが、考え方から行動においてまで、本人は全く意識していませんが、「あぁ、やっぱりアメリカ人だね」ということが多い中において「ほぅ、日本人だ」ということもあり、そのブレンド具合は本当に絶妙。人間であれば、何人であるかなど関係ないのですが、そのブレンド具合が、彼の生き方、人柄を語るところもあり、そして彼の魅力のひとつであることも、間違いありません。

最後に、滑らない実話をひとつ。

私:「ねぇねぇ、『おいなりさんって知ってる?』」

E:「え、誰?」

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