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アメリカで車を運転するということ

今日は、車社会と言われるアメリカでの、車の運転について、思うところを少々。私は、日本にいる頃から、仕事や私用で運転をしていました。ただ、相当の方向音痴である上、道に迷った時のパニック感が苦手なため、カーナビ、またはナビってくれる人の同乗が結構重要。運転自体には問題はない、と自負しています。そんな私が、車社会と言われるアメリカへ移住して、どのように車生活に馴染んでいるのかというと…

有効期限が短い国際免許の取得はせずに、私はアメリカへの移住1年目に、カリフォルニアの自動車運転免許の取得に挑みました。自動車運転免許は、アメリカ生活でのIDカードになります。何かとIDを提示する場面も多いので、免許証は必須のように感じます。運転免許の取得は、日本と同じで、筆記と実技になります。筆記試験は、英語の他に、多言語での受験も可能。事前情報で、多言語の方が問題が限られているということ、また、例え失敗しても、同じ日に数回の受験が可能とのことで、初っ端は日本語で受験することにしました。受験といっても、地域のDMV(Department of Motor Vehicles 自動車理局)内にある、選挙の投票場のようなブースで行われます。私が順番を待っている間、杖をついた白髪のおばあちゃんが受験に来て、係りの人に「ねぇ、ちょっと、座りたいから、椅子を持ってきてもらえないかしら」なんて言っていたっけ。さて、その日本語での受験での際、軽くたまげたことがありました。複数の問題が、コピーミスか何かで、大胆にざっくりと一行、読解不明だったこと。心の中で「まじか…」とつぶやきつつ、予習勉強の記憶と想像力をフル活用。でも、万が一不合格になった場合は、問題が読めなかったことを理由に、抗議できるかな、とも思っていましたね。結果は無事に合格だったので良しとしますが、さすがはアメリカ、レベル高っ!。

さて、次なる実技試験での驚きは、試験には自分で車を持ち込む、ということ。日本のような教習場もなければ、教習車もありません。親戚やら友達やら、またはレンタカーなどで車を調達して、実技試験に挑みます。私は旦那さんの車を借りましたが、そこそこにガタがきている車だったため、タイヤの空気圧が減っていることを知らせる警告ランプがつきっぱなし。それを理由に落とされることを心配して、試験の最初に状況を説明したものの、試験官は気にかける様子すらありませんでした。これまた、さすがはアメリカ。実技試験も無事にパスしたので、結果オーライです。

その実技試験ですが、車の運転自体には慣れていたこともあり、また、縦列駐車のような難しめのことを要求されないこともあり、私は問題なくパスできましたが、私には、この実技試験に5回落ちたという、日本人の知り合いがいます。普段から、とにかくはっちゃけているというかなんというか… そんな彼女ではありますが、5回はすごい。彼女曰く、あまりにも合格できないので、苦肉の策でミニスカートでテストに行ったら、その日は女性教官だったとか、実技試験中に救急車両の前を横切って、パトカーに止められたとか、嘘のような本当の話ばかり。結果としては、6回目にして合格したということになりますが、彼女の車に乗せてもらうときは緊張したものです。

続いて、日本とアメリカの運転の違い、車の違いについてです。アメリカでは、車は左ハンドルで、右車線を走ります。よって、追い越し車線は左車線。私のような、ゆっくり安全運転ドライバーは、一番右の車線が定位置です。一般道路も高速道路も、アメリカの制限速度は、日本と比べると数十キロ増し。日本の高速を時速90キロで走っていた私にとっては、時速100キロ以上で走らねばならないアメリカの高速は、ドキドキものです。私なりに頑張って、周りに合わせて走るようにはしているのですが、それでも旦那さんには「おばあちゃん運転」と笑われています。

さて、右と左の違いですが、私にとっては、車線とハンドルについては、意外と違和感がありませんでした。なんて、今だから言えますが、最初の頃は、旦那さんと出かけたときに、助手席に乗るつもりで車の左座席に向って歩いていき「何やっているの?」と言われることはしょっちゅうだったっけ。それでも、それよりも違和感で苦戦したのが、ワイパーとウィンカー問題です。日本だと、ハンドルの右にあるレバーがウィンカーで、左のレバーがワイパーですよね。アメリカの車は、当然のことながらこれが逆です。そう、ウィンカーを出そうと思ってレバーを操作するたびに、ワイパーが動いてしまうのです。日本で運転していただけに、これに慣れるには時間がかかりました。実技試験の時にも、緊張のあまり、最初のウィンカーを出す場面で、ワイパーがウィーン、ウィーンと… ラッキーなことに、日本の車に詳しい試験官だったので、事なきを得ましたが、あれには自分でも驚きました。多少、余談にはなりますが、この左右の違いは、自転車にもあります。ブレーキです。日本では左手のブレーキが後輪、右手のブレーキが前輪ですが、アメリカの自転車はこれが逆です。当然といえば当然かもしれませんが、アメリカで自転車に乗る機会がありましたら、お気をつけくださいませ。

さて、最後は、実際の運転における、顕著な違いについてです。これはいい!と思う違いは、赤信号での右折が可能なこと。ここでの右折は、日本での左折のことになります。赤信号での右折禁止のサインさえなければ、赤信号で一時停止をして、右折が可能なことをよーく確認した上で、信号が青に変わるのを待たずに右折をすることができるのでです。ドライバーの判断に頼ったルールではありますが、合理的だと思います。一方、私が未だに慣れないのが、踏切では、減速はするものの一時停止の必要がない、ということ。日本だったら、踏切で一時停止しなかったら大問題です。確かに、線路といっても、めったに電車も来ないし、まっすぐな線路で視界も抜群。よって、毎度の一時停止は必要性がないのかもしれませんが、ついつい止まりたくなってしまうのが日本人。後方車にとっては、「おいおい、何止まってるんだよ」と、むしろ危険なことになり兼ねないのです。と分かってはいても、私は今でも、結構思い切って踏切を突破しています。

その他に、車社会を実感することは、ドライバーの判断、譲り合いに頼っている部分が大きいところですね。例えば、4-way stopと呼ばれる、4方向全ての車両が一時停止しなければいけない、信号なしの交差点が存在します。では、誰が、どの順番で、交差点に入るのか。複数の車が交差点に到着した場合、右回りに交差点に進入するのが原則です。私の場合は、経験を積むことで、他の車の流れに合わせることに慣れた、という感じですが、4 way stopに来るたびに、「あの人が行って、あの人が行って、あの人が行って、私が行く」と口に出していたものです。他の車と同じタイミングで一時停止をしたときなどは、かなりの確率で「先に行っていいよ」の合図をしてもらえますので、そんなときは、迷わずに行かせていただくことにしています。その他、意外とよくあることなのですが、信号機が故障していても、お巡りさんが交通整理に登場するなんてことは、まずありません。ドライバー同士が、譲り合い、意思の疎通をして、自力でなとかするのが常です。

アメリカでは、車は一家に一台どころではなく、一人に一台の勢いです。その中には、私のような移民のドライバーもいますし、高齢のドライバーもいます。そんな中で、どうやら「アジア人女性は、運転が下手くそ」という暗黙の了解があるようですね。私自身、安全運転なだけで下手ではない、と思っていますが、旦那さんに言わせれば、安全が過ぎて危険らしいし、試験に5回落ちた日本人の知り合いもいることだし、「そんなことはない!」と反論することはできませんね。むしろ、だからこそ、多くのドライバーが私に道を譲ってくれるのかな、とありがたいくらい。「若葉マーク」ならぬ、アジア人女性を意味する「桜マーク」でもあるものなら、喜んで付けて走りたいものです。


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