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子どもは自分だけで育てるのではなく、まち全体で育てる。そんな場になってほしい

そう話すのは池亮兵さん。彼は那珂川町出身で、周りに子育てをする人が増えてきて見えてきたことがあった。それは、子育てをしている人は自分の時間を作るのが難しいということ。そして、子どもも人との交流を増やすことで、色んな選択肢を持ってほしいということ。そこから、お父さんお母さんも自分の時間を楽しんでほしい、自分の子どもは自分で育てるという意識を少し変えてもいいんじゃないかと考えるようになったという。

フリーのベビーシッターとして活動中の池さん(左)

どう行動していけばいいのか迷っていた

池さんは那珂川市周辺でフリーのベビーシッターとして活動している。その中で、一人で子育てをしている親御さんが自分の時間をつくるために子育てサポートを利用することに罪悪感があり、躊躇していることが多いと感じたそうだ。

池さんは博多南駅前ビルでこととば那珂川のスタッフとしても働いている。ある日「やってみたいことがあるんですが、ここでできますか」と尋ねてこられた方に、他のスタッフがまち活UPなかがわを案内している場面に出会った。

博多南駅前ビルにあるまち活ヒアリングシート投函箱

実は池さんもまち活UPなかがわのことは知っていたけど、自身がどう行動すればいいのか模索してるときだった。尋ねてきた人も、やりたいことをどう形にすればいいのか迷っている状態だったそうで、「迷っている状態でも話を聞いてくれるんだ!って驚きました」と笑いながらその時のことを話してくれた。この一件がきっかけとなり、池さんもまち活UPなかがわに参加した。

まち活UPなかがわでは、参加の際にヒアリングシートを提出してもらう。そこには自分のしたいことや、そのきっかけや経緯などを書いてもらい、まち活UPなかがわスタッフと、どんなことが必要か、どんな行動を起こしたらいいのかを考える。
やりたいことを言葉にするのは意外と難しい。池さんにとっても簡単ではない作業だったという。それでも、まち活UPなかがわスタッフとの対話の中で言葉のまとめ言語化することができた。

初回面談の様子

まち活サロンでの新しい出会いと、新しい気づき

2023年6月のまち活サロンに参加して、母親支援団体tsumugiを運営している大場さんと出会った。活動内容は違うものの、育児に関して池さんと近しい考えを持つ人物だった。大場さんからは活動に関して「サポート内容もしっかり提示してはどう?」というアドバイスももらった。

まち活サロンでは、ふれあいこども館の副館長の加峰さんと話す機会にも恵まれた。加峰さんはアメリカに留学していた経験があり、海外の育児状況についても触れた。アメリカでは日本のように保育園がないため、ベビーシッターにお願いすることが当たり前だという。子育ての環境の違いや、日本でベビーシッターが浸透しにくいことを改めて感じた。

池さんは、人との関わりや日々の情報から、コロナをきっかけに社会が大きく変わり続けていることや、海外や福岡の育児に関する状況についても考える。その中で大切だと感じたのは、自分自身の軸を持って行動していくこと。

保育にも色々なやり方がある。池さんは保育中、自分から必要以上にプライベートな話はしないそう。でもその内相手の方から段々と色んな話をしてくれるようになってくれるそうで、その瞬間お父さんお母さんが自分の時間を楽しむことへの抵抗感が下がっていっているように感じた。

池さんは一般的なベビーシッターの内容とは少し違い、子どものケアだけでなく家事のお手伝いもする。そのため活動している内容をどう伝えていくかが今後の課題だと話す。

ふれあいこども館で開催したまち活サロン:テーマ「子育て」

やりたいという気持ちはいつも変わらなかった

サロンでの出会いがきっかけで親子を対象にしたイベントでは「見守り隊」として託児スタッフを担当し、色々な人に知ってもらう機会にもなった。
その後、たまたま入った居酒屋で出会った人と意気投合し、9月には夏祭りを企画・開催した。気合を入れて取り組んだ初めてのコラボ企画は好評だった。

それから一週間後、今度は「マッチョかき氷」と題したイベントを開催。
このイベントは、子どもが興味を持つことが多いマッチョと、子どもたちに筋肉を披露したいマッチョの友人3人を集め、彼らが作ったかき氷を子どもたちが食べるという奇抜なイベントだ。
池さん本人もどうなるかドキドキだったそうだが、終えてみると好評で「自分たちも楽しめました」と安堵した声で話してくれた。ただ、ボディービルダー並に仕上げてきた人は、初めて見る子どもたちにとっては少し近寄り難かったようだ。

ここで、これまでとは少し違う思考のイベントを試してみようと同じでメンバーでクリスマスにマルシェを開催。マッチョが再集結した。しかし、この企画は集客が難しく、終わった後に方針がずれていたと気づいたそう。

池さんがベビーシッターを始めたきっかけが、日々の家事や育児に追われる保護者たちの姿だった。だからこそ、子どもと離れてもゆっくりお茶を飲んだり安心して過ごせるイベントを大切にしてきたが、マルシェではその点が異なったようで、このイベントがきっかけとなり自分がしたいことを再確認する機会にもなった。

tsumugi主催のイベント

今後は子育てについて話す場を提供したい

これまでの活動を通して、サポートしていきたい層にはまだ届いてないと感じている。理由として考えられるのが、イベントを開催しても時間帯が合わずに参加できなかったり、休みだったとしても連れていく元気がない場合も多いのではと話す。
そこで今後、新たな企画としてオンライン座談会を計画している。オンラインであれば、場所を移動せず匿名で顔出しなしでも参加ができ、対面に抵抗がある人も話もしやすいのではと考えた。

また、ベビーシッターに預けたい人が利用できていない状況や、今の体制で続けるのには限界があるとも感じていて、今後、託児の場をつくれないかと考えている。その案として、池さんのお父さんがコインランドリーを経営していることも誘因となり、コインランドリーを子どもたちの遊び場にすることで、ベビーシッターの利用もしやすくなるのではと、託児所とランドリーが一体化した場を構想中で、実現できる場所を探している。

池さんがチャレンジ前に抱いていた「自分の子どもは自分で育てるという意識が変わって、まち全体で育てる」「お父さんお母さんの自分の時間が持てるようになる」「子どもたちも人との交流が増えて自分の選択肢を増やして欲しい」という思いは、人との出会いや行動を通して、新しい形へと変化しながら実現に向かって進んでいる。 (まち活事務局:oioi)

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