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どうして、まちごと総研は助成をすることにしたのか_物件・居住からはじまる vol.00

まちとしごと総合研究所(以下当研究所)は2023年度、休眠預金を活用し、「京都の若者へ寄り添うアプローチによる生きる基盤支援事業」を実施し、事業資金の助成ならびに団体への伴走支援を実施しました。

2022年度に前段となる事業から担当されている、三木俊和(みき としかず)さんに、ビフォアーストーリーとして前回事業からの思いをお聞きしました。

■三木 俊和(みき としかず)
長野県出身・京都伏見在住。大学在学中京都の中間支援NPO法人に所属し、大学とNPOの民民連携による市民活動センターの運営をスタート。コミュニティ・ラーニング・センターをコンセプトに、多様な学び手の気づきと地域づくりをつなげ、地域社会の再デザインと若者の次のフェーズを目指したプロジェクトを手掛ける。



今回の休眠預金活用事業は京都を対象に展開されます。これに先立ち、前回の事業の背景についても触れておきたいと思います。前回の事業は、どのような課題を解決しようと試みたものだったのでしょうか?

前年度に実施された休眠預金活用事業は、2021年初頭、新型コロナウイルスの影響が深刻だった時期に議論をはじめました。

例えば「アルバイトが減少し、収入が得られず食料を確保できない」、「会社の業態転換についていくことができず、退職せざるをえない」、「仕事を失ったことで、貯蓄を切り崩して生活していたが、仕事が見つからずホームレス状態、多重債務状態になった」など、生きるための根本的な基盤が崩れている声が多くみられました。

特に、仕事と関連した社宅や寮で暮らしていた人々は、仕事を失うと同時に住まいも失うという厳しい状況に直面しており、一時的な住まいの確保が急務となっていました。

これらの問題に対して、関西一円で公募を行い、若い世代へのコロナ禍による影響に対してアプローチを行う活動団体への助成を行いました。

まちとしごと総研は、以前から助成事業を行っていたのでしょうか?

これまでにも、大学生や高校生を対象とした小規模な助成活動は行ってきましたが、今回のような規模の事業は初めての試みでした。

そのため助成活動において豊富な経験を持つ公益財団法人京都地域創造基金(以下財団)とコンソーシアムを組み、全般的なサポートを受けながら助成事業を推進しました。

連携することで助成の信頼性を担保されたのですね。助成事業に踏み込むことになったきっかけは何だったのでしょうか?

私達の取り組む3L APARTMENTというプロジェクトでは、市営住宅に大学生が居住し、自治会活動などを通じて、 団地の活性化を目指しています。

型コロナウイルスの影響で、学生たちのアルバイトがなくなり、外出や就職活動が困難になる中、地域の住民から「学生さんたちはご飯食べているか?」と食事の差し入れを受けたり、知人の会社でインターンシップの機会を得たりすることが、就職へとつながりました。

この経験から、緊急的な課題も社会的に見えてくる中で、まず住まいを支え、生きるための基盤を支えることから若者に寄り添う支援を展開していくことに可能性を感じていました。

財団の可児さんに休眠預金活用というものがあることを教えてもらったことで、これらの可能性をさらに広げていく機会として助成事業に踏み込むことになりました。

この時はどんな採択団体の活動が生まれたのでしょうか?

前回は5つの団体を採択させていただきました。京都以外の活動を紹介します。

大阪府: 認定NPO法人釜ヶ崎支援機構は、新たなシェアハウスを開設しました。このプロジェクトでは、物件を購入しシェアハウスとワンルームを連携させることで、若者が直面する様々な状況に寄り添い、シェアハウスからワンルームへ段階的な生活支援を実施しています。

大阪府: 認定NPO法人CPAOは、若者が集まる「グリ下」と呼ばれるエリアへのアウトリーチ活動を行い、浪速区に一時居住可能なシェアハウスと、日常生活から離れて過ごせる里山での一時居住施設を設けました。さらに若者へ学習や就労支援の機会を提供しています

滋賀県: NPO法人子どもソーシャルワークセンターは、一軒家をユースホームとして、若者が集まる場、生活や就労支援、ボランティア活動を総合的に提供する施設を開設しました。

事業の詳細は、公開されている各団体の事業報告書等でご確認いただけます。

助成の効果についてお話しいただけますか?

それぞれの団体が取り組む活動は重要性が高いものの、資金的な支援や制度があまりないものであり、今回の助成をうけて活動いただけたことは重要であったと思います。

また、今回の助成では、物件というハードを投資的に活用し、終了後も物件を活用した活動を展開していくという実験的な取り組みでもありました。

その意味では釜ヶ崎支援機構さんが購入された物件は、2024年現在も満室稼働し、今後もその運営や活用を継続的に確認していきたいと思います。

今回の京都にフォーカスした事業には、どのような点が活かされているのでしょうか。

今回の事業を通じて、短い事業期間の中で物件を開設し、支援を展開するための課題を深く理解することができました。 半導体の不足など予期せぬ後期の遅れなどもありましたが、物件の選定から契約などハウジングに明るい事業者との連携が不可欠であると感じました。

また京都に支援範囲を限定することで、公営住宅関係の行政部署との関係性や、ハウジング関係の事業者との連携をより活かすこと。京都の特定ニーズにあわせて各種団体と採択団体をつなげることで、実効性をより高めることを目指しました。

事業終了後も、採択団体を中心に居住支援や若者支援に関するネットワーク化をはかることで、今後の展開へつなげていきたいと考えています。

ーーありがとうございました。採択団体の今後の取り組みにも期待が集まりますね。


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