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日本渡航日誌(2021-2022)① 帰国まで(12月31日)

帰国までの流れ

2021年の年末から2022年の年始にかけて、韓国の慶尚南道から日本の福岡県に帰国するわたしの場合、まず、韓国からの出国と日本の入国に必要な準備は、次のような感じになる。
① 航空券(仁川発 福岡着)の購入(当然だけど)
② ワクチン接種証明書(再入国許可に必要)
③ 再入国許可
④ PCR検査の陰性証明書
⑤ Wi-Fiのレンタル予約
⑥ 日本の検疫で必要なアプリのインストール(MySOS)
⑦ Visit Japan Webの必要事項の記入(ブックマークしておく)

航空券

①の航空券については、11月に仁川・福岡間の便が再開したことで、わたしの帰国も現実的になった。成田や関西空港への便しかない場合、そこで14日間の隔離になり、時間と費用がかかりすぎるので、地方出身者は帰国をあきらめることが多い。ただこれも、12月のオミクロン株の流行を受けての外国人新規入国停止措置によって、いつ欠航になるかわからないという不安がともなう。昨年は帰りの便が欠航になり、やむをえず関西経由の再入国になった。だから今回は、あらかじめ上京の日程を入れて、韓国への戻りは成田発の便を予約することにした。2022年の1月現在、国際便の発着は、成田、羽田、関西、中部、福岡の4空港。福岡はぎりぎり残った感じで、東北や北海道に帰りたい人にはきつい状況になっている。

ワクチン接種証明

②のワクチン接種証明書は、11月の段階ではこれがあれば隔離免除だったが、いまはそれも停止されているので、日本入国には関係ない。ただ、韓国への再入国許可申請で提出が求められるので必要。韓国政府の疾病管理庁の予防接種ポータル(예방접종 도우미)で、英文証明書が電子文書(PDF)でもらえる。

再入国許可

③の再入国許可は、もともと免除されていたが、コロナ禍を受けて免除停止となっている。定住者は、これを取らないで出国すると、ビザが無効となるので注意が必要。これも原則、オンライン申請で、申請書と前記のワクチン接種証明、それに再入国時の陰性証明書提出への同意書を添付する。書類が通れば別途に紙はいらない(いちおうプリントして持っていたけど、何も言われなかった)。空港の出入国管理事務所での即日発行もできなくはないようだが、別に手数料がかかる。

PCR検査証明書

④は日本入国のさいに提示が求められる。入国前72時間以内に発行されたものでなければいけない。わたしは出国前日に仁川空港のPCRセンターで検査を受けた。鼻ぬぐいなら2時間で結果が出る。費用は126,000ウォン。オンラインで予約がとれるが、なぜかエラーが出るので、結局電話したらすんなり予約がとれた。予約なしでも検査は可能だが、けっこう人が並んでいたので、予約した方がスムーズに受けられる。

仁川国際空港第1ターミナルCOVID-19検査センター

場所は、空港から道路を渡った空港鉄道の駅のある建物で、地下駅から地上1階へ上がるとすぐにわかる。パスポートを提示し、スタッフの問診に答え、費用を支払うと、検査室に案内される。検査結果はだいたい2時間後に携帯電話のSMSで知らせてくれ、それが届いたら書類を受け取りに行けばよい。

この日は検査のために1日あて、翌日の朝の便で出発するので、空港内にある簡易ホテルを予約しておいた。検査場のすぐ隣なので、空港で検査を受けて出発する人にはとても便利。

다락휴 T1
다락휴 T1

韓国出発

わたしの場合は、たまたま12月29日午後にソウル近郊で仕事があったので、慶尚南道昌原からKTXで移動し、その日は仕事のあった施設のゲストハウスに宿泊し、翌30日にソウル駅から空港鉄道で仁川空港に向かった。そこで前記のPCR検査を受け、その日は空港の簡易ホテルに宿泊となった。検査結果は陰性だったが、これから何度も検査を受けることになるわけで、そのたびに、なんだか「イカゲーム」に参加させられている気分になる。一度でも陽性が出ればその時点ですべての日程はキャンセルされるし、わたしだけでなく飛行機の同乗者に出ても濃厚接触者になる可能性がある。ある意味、韓国の家を出たときから、2月に韓国に戻ってきて、さらに隔離が終わるまで、帰国のサバイバルは続くことになる。すべては自己責任。だれのせいにもすることはできない。

30日の検査が終わってから、この日はずいぶんヒマなので、日本での強制隔離に備えてコンビニでいろいろ調達することにする。弁当だけの6日間に備えてわたしが準備したのは、フリーズドライの味噌汁(日本から送ったもののストック)、キムチ、韓国のり、ヨーグルト、ティーパックのお茶、ドリップコーヒー、菓子。これらの効用については別の記事で、

Wi-Fiレンタル

31日、朝6時に簡易ホテルをチェックアウトし、まず向かったのは事前予約していたレンタルWi-Fiの受け取りである。SIMのレンタルとか、あるいは携帯電話のデータローミングとかいろいろ方法はあるが、日本の検疫所でアプリの作動が必要なので、まず着いてすぐにスマートフォンのオンライン操作ができることが条件になる。この会社は空港で6時からカウンターを開けているので、ここでレンタルすることにした。

https://www.wifidosirak.com/v3/index.aspx

MySOSとVisit Japan Web

それから、アシアナ航空のカウンターに行くと、すでに搭乗手続きが始まっていた。8:40発のOZ132便。予約時に座席指定していたので、機械で自動チェックインをすませて、荷物を預けにカウンターに行く。ここで、昨日発行されたPCR検査証明書の提示を要求される。

搭乗までにはまだ時間があるので、空港内で朝食をとる。このタイミングで、MySOSのアプリをスマートフォンにインストールし、Visit Japan Webにアクセスして必要事項を記入しておくと、日本に着いてからいくらかスムーズになる。
このあたりの情報は、ほとんど週末海外ノマド「ダイスケ」さんのYouTubeチャンネルに依存している。毎日のように水際政策が更新される状況で、かなりリアルタイムで情報提供してくれるので、たいへん助かっている。

MySOS
Visit Japan Web サービス

現状では、この2つの操作を入国前にある程度終えておく必要がある。到着後に空港で観察していても、やや手間がかかったりまごついたりするケースは、ほとんどこれらのアプリやサイトの準備ができていない人であることが多い(特に年配の方など)。あとは、パスポート情報、往復の航空便の情報(搭乗座席も)、メールアドレス、日本での住所と電話番号、緊急連絡先の電話番号などの記入が求められるので、それらを用意しておいたほうがいい。

COCOA(接触確認アプリ)は義務ではないらしく、入国の過程では何も触れれらなかった。

出国

これらのことがひととおりすむと、特にやることもないので、出発ゲートに向かう。いつもの荷物検査と出国審査を終えて出てみると、こんな時でも意外と免税店の営業はいつもどおりだった。

機内に搭乗して窓際の席に座る。ひとつあけて通路側に韓国人の中年女性が座っている。機内はまあまあ埋まっている。九州への日本人の帰国と、定住韓国人の再入国だけでこんなにいるのかと思っていたけど、じつはかなりの人がアメリカや他の地域からのトランジットだと、あとで知った。たしかに、いま福岡に入れる国際便は限られているし、成田や羽田からの国内線には乗れないわけで、仁川でのトランジットが多いのもうなずける。
すぐに、乗務員から書類が配られる。ひとつはいつもの税関申告書。それから「健康カード」という検疫所に出す質問票と、法務大臣・厚生労働大臣あての4頁くらいの「誓約書」。この誓約書だが、機内で書いたものはヴァージョンが古いと言われ、空港でもう一度書くことになる。こういう、めまぐるしい政策変更に、現場が追いついていないことが、けっこうある。ここで、隣の女性と乗務員がもめているのに気づく。「日本語しかないのか」「英語もあります」「英語はわからない」「日本語と英語しかありません」。

健康カード
誓約書

乗務員が女性に渡したのは英文の書類で(まだ日本語のほうがマシだろうと思ったけど)、その英文を乗務員がいちいち韓国語に訳して説明している。このやりとりを隣で聞いていて、関わると面倒だと思ったのだけれど、ついつい見かねて声をかける。「도와 드려요?」 お手伝いしましょうか?
助かったと言わんばかりに乗務員が逃げていく。
「2週間外に出るなってことです。Yesですね」「はいはい」「6日間はホテル隔離で、そのあとは?」「だんなが迎えに来る」「家はどこ?」「久留米」。久留米で働くご主人といっしょに暮らし、今回は里帰りしてきたという。日本語の会話力はまあまあだけど、どうやら読み書きが苦手らしい。
「家に戻ってからも出ちゃだめ?」「だめですけど、食料調達とかの最低限の外出は許されるらしいです」「温泉は?」「ダメに決まってるでしょ」。

結局この人は、福岡空港でもずっとわたしについて行動することになった。

日本入国

到着して飛行機を降りるさいには、地域別に分かれて降りる。オミクロン株のリスクが高く、より隔離が厳格な地域から、ということらしい。アメリカが降りて、最後に韓国。飛行機を降りると、PPE(防護服)を来たスタッフの案内で進んでいく。慣れた福岡空港だが、だんだん自分がどこにいるのかわからなくなる。この流れも地域別らしく、途中で韓国組はベンチで待機になり、ここで誓約書、アプリの作動確認、Visit Japan Webの記入を確認される。しかし、何度も住所やパスポート番号を書いているけど、じゃあ何のためのVisit Japanなの? という疑問も湧く。わたしだけでもないらしい。

デジタル庁は入国者にデジタルでの手続きを求めているけど、いっぽうで、じっさいにそれを運用するデスクがデジタル化されていない。書類に手で記入し、デスクでは確認のサインを手でしている。それを何枚もくりかえす。せっかくVisit Japan Webで完成された個人情報のQRコードを発行しているのに、ほとんど使い道がない。「一元化」ってこういうことなのか。そもそも、紙のやり取りによる感染リスクを減らすんじゃなかったのか。
デスクがぜんぶで8~9あり、それを言われるままめぐっていく。出せと言われたものを出し、書けと言われた書類に書く。何が何のデスクなのか、もう覚えていない。それから、唾液によるPCR検査。これがすむと、検体番号のシールを書類に貼られて、結果待ちの待機となる。ここで、軽食としておにぎりと飲み物が支給される。おにぎりは、梅おかかとツナマヨネーズ。

例の女性が今も隣にいる。「なにこのおにぎり、味がない」「韓国人にとってはそうでしょうね」「韓国料理が恋しいよね」「ぼく日本人なんで」「またまたあ、韓国人みたいなもんじゃないの」「いやそうでもないすよ」。
「ほら、これ食べな」といって彼女が差し出すのは、「ホドゥクァジャ 호두과자」。

ホドゥクァジャ(イメージ)

ああ、まったく、韓国の遠足気分らしい。こんなPEEに囲まれたところで、まんじゅうの手渡し。「ほら、おいしいでしょ。韓国なつかしいね」。うん、おいしい。そして認めたくないけど、すでに、あのめんどくさい韓国をなつかしむ自分もいる。「そうすねえ」。

検査結果のアナウンスがある。乗客全員陰性。安堵の空気のなか、みな荷物を抱えて入国審査に向かう。ここで検体番号の書かれたカードを首にぶらさげられる。1024番。

入国審査を終えてゲートに向かうと、すでに預けた手荷物が並んでいる。荷物を受け取ってゲートを出ると、さっきのシールの回収とともに検体番号のシールを腕に貼られ、スタッフに案内されてバスへ。これが例の、「リアルイカゲーム」らしい。

スタッフに尋ねてみる。「検疫所の職員ってこんなにたくさんいるんですか」。「いやあ、いろんなとこからかき集めてるんで」。ですよね。世は大晦日。本来なら家族と過ごすべき日に「かき集め」られて、感染リスクの高い場所でのお仕事。日に日に変わるマニュアル、容赦ないクレーム。聞き取れない言葉。ありがとう、おつかれさまとしか言いようがない。そういえば韓国では、空港の検疫業務のいっさいを軍が担っていて、スタッフもすべて兵役中の軍人だった。人件費がかからず、24時間拘束の組織化された人的資源が大量に確保されているというのは、なかなかのことだなと実感する。

バスに乗った時点で12:30。飛行機が着いたのが10:20だから、だいたいここまで2時間ちょっと空港にいたことになる。人の多い成田などはもっとかかるんじゃないだろうか。

16人乗りのマイクロバスに6人が乗せられて出発。まだどこのホテルかはわからない。20分ほど走って、とあるホテルの裏口に停まった。アプリのマップで現在地を見ると、博多駅近くのアパホテルであることがわかる。

ここからの隔離生活は、またあらためて。

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