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「いやー、いろいろありましたねー」

「いやー、いろいろありましたねー」と、患者さんの臨終の際にご家族に伝えること。

うっかりして伝え漏れもあるんですが、毎回、そう思っています。


つい先日もそうでした。

臨終の確認前後、出会った瞬間から今目の前のことまで、まさに走馬灯のごとく、頭の中に湧き上がってくるんですね。

最初の出会い。

あのときはこうだったなー。

それからのこと。

紆余曲折あったよなー。

そして今。

最期までおつかれさまでした。

いつも言いますけど、偉そうに申せば苦楽をともにした友人同士といいますか。だから、「いやー、いろいろありましたねー」です。


死はたしかに最重要な「点」です。

とはいえ出会いから始まったとすれば、あくまでプロセスの一貫。

つまり線上の重要な一点。

誤解のないように言えば、死はとてつもなく悲しいし、悔しい。

けど人生が線である以上は、やっぱり点なんですよね。ただし重大な。

一方で、線は無数の点のつながり。

一瞬一瞬の点に全力を尽くして、最終的に全体としての線が一本としてつながる。

だからこそ、「いやー、いろいろありましたねー」。


なんか、今回も分かりづらい文章。

でも、そういうことなんですよ。

いろいろあった。

この苦楽を一緒にしたい。一人の友人としても、一人の証言者としても。

毎度毎度ですけど、今回も「いやー、いろいろありましたねー」です。

こういう方ばかりを担当できるのは医者冥利につきます。


ぼくの次の出会いはどうでしょうか。

きっと次の方とも「いやー、いろいろありましたねー」です。

いや過去形ではなく、「いやー、いろいろありますねー」か。


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写真は診療所のバックオフィスのキャビネット上。

外来用カゴにカラフルな袋。

人生、カラフルです。

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