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医療の大衆化

町医者です。

ぼくは野球少年だった。
下手だったけど、中学では途中までレギュラーだった。
しかし、中学3年生の県大会で2年生にレギュラーを奪われた。
今となっては良い思い出だが、当時のショックの大きさは尋常ではなかった。

高校では硬式野球を選ばず、坊主にしたくないというしょうもない理由で軟式野球を選んだ。
今、振り返っても、ぼくの人生史上最大の過ちだったと思っている。
そんな過ちの選択だった軟式野球部は、わずか一ヶ月でクビになった。監督に、もういらないと言われたのだ。
あまりに遅刻が多くて。

大学でもやはり硬式は選ばなかった。
医学部ではメジャーである準硬式チームに入った。
高校とは違い、この決断には後悔はない。

今、思い返しても、高校で硬式野球を選んでいたら、今、全く別の人生を歩んでいたんじゃないかと、大げさに思っている。
(プロに行くとかそういうことでは全く無くて)

それにしても、野球というのは、日本人にとって、本当に日常化していると思う。
野球人口は減ったとはいえ、高校野球の人気は根強いし、プロ野球だってまだまだ。
小さい子供から、大人は草野球としても、全国津々浦々、どこでも楽しく野球ができる。
グランドもあちこちにあるし。

まさに、野球とは大衆化された存在だと思う。

翻って、医療はどうだろう。
まだまだ、特別なものであり、本来主役であるべき患者や住民にとっても日常的なものではないと思う。
町医者を自認するぼくとしては、医療がいくらでも大衆化して、患者医師関係がもっとあやふや(要するに一心同体的な)になるとおもしろいだろうなー、と思っている。

ところで、先日、とびきり大好きな患者さんが退院してきた。
随分と変わり果てた姿に、少々ショックだった。
ボーッとしていて、こちらが問いかけても反応してくれない。
そこで、満面の笑顔攻撃を続けた。
すると、ついに笑ってくれた。
「あら、久しぶりね」と。
認知症が重度だから、本当かどうかとおもうところもないわけじゃないが、本当だと信じたい。
だって、とびきり大好きな患者さんだからね。
きっと両思い!

ぼくなんか単なる医者に過ぎないけれど、少なくともぼくが関わる方々の間では、医療の大衆化を進めたい。
そして、患者さん、お医者さんという堅苦しい関係性もとっぱらって、二人三脚で、一緒に歩みたい。
大衆化がすすんだとき、ぼくは町医者ではなく、医療にやたらに詳しいおっさんとして、普通に地域に、普通に存在することになるんだろうなぁ。
そうなると、もっと面白くなる。

今回退院してきた患者さんも、認知症がまずまず重度なわりに、ぼくを忘れずにいてくれていたのは、もしかして、大衆化を目指しているぼくのあり方の効果(結果)かも、と珍しく難しいことを考えた町医者でした。

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