[素晴らしきかな、人生] "Collateral Beauty"(2017)

やり手の広告マンだった主人公が大事な我が子を亡くしたのを機に心を閉ざし抜け殻のようになってしまう。同僚たちはどうにかしようと「時間、愛、死」という3つの概念をテーマに、とある切り口で強行手段に出る…という内容。

原題は「collateral beauty」なのに、邦題がこれ。古き良き名作とは一切関係ありません。collateralという単語は確かに難しくて多くの意味を持つけど、この邦題は明らかに失敗なのでは…。作中「幸せのオマケ」という訳がついていたけれど、そのほうが圧倒的にマシだと思う。いっそ原題のまま「どういう意味?」と考えさせたほうが良いと思えるけど、日本では"なんだかわからない映画"はヒットしないらしいから、しょうがないのかな。

そして日本版ポスターは、どう見てもラブアクチュアリーな仕上がり。控えめに言って、めちゃくちゃダサい。なぜ赤いリボンで装飾したのか…というわけでポスターからラブロマンスかと思っていたほど事前情報なしで観たのだが、それなりには、面白かった。ただツッコミどころは満載で、あんなに良い役者を揃えているのにあらゆる描写が浅く感じる…。
無難に感動できるヒューマンドラマ系、その域は越えず…という感想だった。エドワード・ノートン、ケイト・ウィンスレット、キーラ・ナイトレイ、みんな大好きなのだけど消化不良。

とりあえず「この冬、愛が見つかるギフトをあなたに」なんていう陳腐なキャッチコピーでリボンをかけて「ね?泣けるでしょ感動でしょ!」と手渡されても、戸惑う。
これは、人生辛いことがたくさんあるけど、しょうがないよ、結局自分で頑張っていかなきゃ、というメッセージの映画だ。人生って素晴らしいね!!って手放しで喜ぶような内容ではない。
偽善的な優しさやお節介は当事者にとっては残酷で、自分で乗り越えるしかないもの。
私はちっとも泣けなかったし、むしろ、大事な人を亡くした人にはなんて声をかけたらいいのか、人に人は救えないな。そう重く考える映画だった。見た後幸せになれる♡って映画ではないからね、全く!
作中印象的に出てくるドミノのように、ひとつ崩れて繋がって行く伏線は、最後、少し恐ろしい。だって、ハワード、気づいてたんじゃない?じゃあ、あの全力で騙しにかかる同僚ってむしろ怖くない?そしてあの人たちは…。

これは、ミステリーだと考えると、面白い映画かもしれない。

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