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【発見】10月の長井短「山を1時間で切り開く。令和の秀吉、長井短の手際」

「Amazonの倉庫かよ」

 引きとられることなく言葉が部屋に漂っている。確かに、例えとしても凡庸で、まったく面白くもないが、私は嘆かずにはいられなかったし、それを無視する長井の気持ちも理解できる。

 部屋の中央にダンボールの山。うず高く積まれたダンボールの頂点は天井に届かんばかりの勢いで、裾野もしっかり広範囲に及んだ様は、まごうことなき山である。想像して欲しい。家に山があったら狭いしウザい。今回の引越しで痛感したのだが、我が家はとても荷物が多い。我が家というか、長井だ。靴だけで30足ちかくあるし、帽子だって40個はくだらないだろう。靴なんて4,5足あれば十分な私からしたら大きな謎だ。どう考えても履ききれないし、被りきれない。右はハイヒールに、左はニューバランスのスニーカー。左右別々の靴を履き、寒そうな地蔵を見つけてはニューエラのキャップを被せていくことを信条としていない限り、つじつまが合わない。正直、その過剰な物量にマジかよという思いがものすごくあるが、モデルという職業柄ある程度しょうがないのかなとも思う。

 私には想像もつかない世界だ。例えば、ギタリスト。ギタリストともなると、物凄い本数のギターを所有しているイメージがある。プロとはそういうものだ。ギターの年代やメーカーにより細々とした違いがあるのだろうし、単純にギターが大好きなのだから、沢山手元に置いておきたいのであろう。そんな、ギター大好きALFEEの高見沢に向かって、ギターなんて2、3本ありゃいいでしょ?こんなに沢山あってどうすんの?てか、これ天使みたいなの付いてるけど弾きにくくないの?などと、素人の私が口出しするのも野暮だ。だから私はこの件に関して、極力口を挟まないようにしている。

 あともう一つの大きな原因として、とにかく長井はモノを捨てない。物持ちの良さを競う大会があったら、日本を代表する逸材である。「これ小学校の頃から着てるんだ〜」みたいな事もザラだ。そういった、思い出が含まれていそうなものならまだしも、iPadの箱とかも全然捨てないでとっておく。となると、長井が日々徹夜の激務の果に、スティーブ・ジョブズと共にiPadを共同開発していた過去がある可能性も否定できない。もはやその理由は、いろいろとすぐ捨ててしまう派の私にとっては理解し難いが、そこの価値観はホント人それぞれなので、注意が必要である。

 捨てたくないなら、捨てなくていいとも思う。それが一見、とは言わず、何度見たとて不必要な物に思えても。逆・こんまり宣言である。長井の実家に行った折、ママから長井が着ていたという子供服を見せてもらった時には大いに驚いたが、納得もした。長井家はとにかく物を捨てないのである。ウチの実家に私の子供服が残っているとは到底思えない。ただ、その長井の子供服は、とにかく可愛らしくて、それを手に取るママと長井を眺めているだけで幸せな気持ちになったのも事実だ。これこそ、育ってきた環境が違うからというやつで、セロリそのもの。価値観は否めない。

これらの現実を私は見落としていた。いや、甘く観ていたのだ。

 ここまで、たらたらと、ああだこうだと述べてはきたが、要は単なる私の言い訳である。悪いのは私だ。

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