見出し画像

アランマーレ熱烈応援ブログ「編集長のひとりごと side アランチャ vol.12」

【BURN-オレンジの炎―】

スポーツと音楽って、相性がいいのではないかと思っている。練習前のリラックスタイムや個人的なワークアウトのお供に音楽を・・・という方は少なくないであろう。私はアランマーレの試合を見終わった後、写真の整理をしているときなどに、その試合を頭の中でプレーバックしていると、ふと音楽が浮かんでくることがある。それは時にポップなナンバーだったり、感傷的な曲だったりとさまざまだ。その時々のチームの状態、ゲームの内容、そして時期などによって音楽は変わる。今日、私の頭に浮かんだのはよりにもよってブリティッシュハードロック(笑)かの有名なDeep Purpleの名曲中の名曲「BURN」である。この曲の激しくドラマティックな曲調に合うゲーム展開ってなかなかないと思う。それくらいこの日のアランマーレは圧倒的。相手チームにイニシアチブを握らせることなく圧勝を収めた。地元テレビ局による初の地上波、しかも実況生中継、多くの県民が見守る中でのホームゲーム10連勝という初めて尽くしとなった2月酒田大会をリポートする。

正直、不安だらけだった。コロナの影響で試合は中止・延期ばかり。選手たちがモチベーションを保てるのか、リーグ戦は中止になりはしないのか・・・そんなことばかりを考える日々。そんな中行われた浜松大会は1勝1敗。加えて内容がよくない。昨シーズンとはまるで別のチームに生まれ変わった浜松にはストレート負けを喫し、大野石油にもフルセットに持ち込まれての辛勝。そんな中追い打ちをかけたのは、2月5日に発表されたV2女子のリーグ戦期間の短縮。これによってアランマーレの今シーズンの残り試合はわずか2試合となった。待望の鶴岡大会は中止、そして酒田大会も2試合から1試合に減。対戦相手は首位ルートイン。地上波生中継・・・県民の前で無様な試合はできない。それが選手たちのプレッシャーにならなければいいなと思っていた。そして、最近の練習ではイマイチ調子が上がっていなかったこともあり・・・不安が現実味を帯びた状態で、2月6日は訪れた。

会場について、練習を見る。やはりルートインの動きはいい。そして高さがある。それに比べてアランマーレの動きはというと・・・なにかくすぶっているような印象を受けてしまった。声の大きさはルートインが勝っている。スパイク練習でも、どうしても敵チームの方がよく見えてしまうというのはあるが、絶好調のアランマーレとは少し違う気がした。「やはり予想通りの展開となるか・・・」つぶやきながらカメラの設定をイジり、私はつぶやいた。「今日のシャッターチャンスは少ないかもしれないな」。その言葉は結果として現実のものとなる。私の懸念とは180度反対のベクトルで。私の認識は何もかもが甘かった。くすぶってなどいなかった。

炎は、彼女たちの内側で燃え盛っていたのだ。

試合開始。序盤は一進一退の攻防ながら、アランマーレのサーブが冴えを見せた辺りから、流れは一気に傾く。榎本里歩の切れ味鋭いジャンプサーブ、伊藤摩耶のキワキワをえぐる優雅なフローター、そして投野ひかるの揺れては落ちる魔球。個性豊かなビッグサーバーたちが、次々に相手の急所をえぐって得点の契機を積み重ねていく。

補正DSC_0209

相手は首位をひた走るルートイン。高さは圧倒的に上。なおかつ勢いのある攻撃的バレーは脅威。すぐさま持ち前の攻撃力を前面に押し出して反撃し、開いた点差を詰めてくる。いつもなら、ここで慌ててしまったり、声が出なくなって押し込まれるアランマーレだが、この日は違った。攻撃の司令塔、セッター投野ひかるはあくまで冷静で、なおかつ攻めに攻めていた。私はカメラマンだが、投野のトスワークに完全に翻弄された。レフトかと思えばライト、視界を広げた瞬間にセンターから伊藤・菅原のえげつない速さのクイック。しまいにはオープンと思わせておいてバックセンターから榎本がさながら爆撃機のように飛んでくる。話は音楽に戻るが(笑)BURNという曲、Bメロが終わってサビに入る時、伴奏もすべて止まるちょっと長めのタメがある。そして大サビ「It’s BURN~~~~~」となるのだが、アランマーレのフィニッシュに入る前、ことごとく時間が止まる。時間が動き出した直後、強烈な攻撃が突き刺さる。その感じがとってもBURN(わかるひとほとんどいないだろうなぁw)。ドラマティックこの上ない試合展開を作り出していたのは、小柄で笑顔がキュートな2年目のセッター。しかし今日光っていたのは笑顔ではなかった。正面から見ていると、いつもより目つきが鋭く、なおかつ目のあたりにシャドーがかかっているように見えるのだ。言い方が悪いが完全に目が座っていた。今日はアランマーレの多くの選手の表情からそんな印象を受けた。

アランマーレはこれ以上ないくらいの戦闘態勢。気合の入り方が違った。

補正toriDSC_0225

第1第2セットを連取したアランマーレ。第3セットも序盤は競るものの、1stテクニカルタイムアウトを過ぎると一気に逆転。点差をキープしつつ走るアランマーレ。ここで活躍を見せたのは、小泉春葵。この選手、意外性と言っては失礼だが「そんなの決めちゃうのぉ?」って感じでボールを何が何でもねじ込む技術があると感じる。この日は時折ブロックにつかまったり、ブロックアウトを狙ったもののフカしてしまったりとミスもあったが、北原監督がそのたびに「OKだ!」とフォローすることで思い切りの良さが復活。体を弓のようにしならせて飛ぶ滞空時間の長いジャンプから、相手の嫌なところにことごとくボールを叩き込み、勝利に向けた時計の針を着実に進めた。

補正DSC_0765

そして忘れてはいけないのが守備陣の奮闘。森・木村・榎本の鉄壁のレセプション、もはやリーグナンバーワンといって過言ではない菅原・伊藤・小泉のブロック。そして最後の砦、リベロ森・細田の神技ディグ。相手が圧倒的攻撃力を誇るなら、アランマーレの守備は勝利に欠かせないドクトリン(教書)であり、同時にチームとしてのアイデンティティそのもの。サーブで崩し、ブロックで相手の攻撃力を削ぎ、ディグで拾って攻撃につなげる。北原アランマーレの生命線・トータルディフェンスはこの日、完璧に機能し、波状攻撃の起点となった。

補正DSC_0546

マッチポイント。第3セットに入って特にプレーに気合をみなぎらせていた選手がいる。木村友里である。試合を見たことがある人ならわかると思うが、この選手、得点すれば喜ぶし、時折笑顔も見せるがヒートアップするタイプではない。しかし今シーズンの木村は、試合が佳境に差し掛かるにつれて、表情の鋭さが増していく。集中力の高さは言わずもがなであるが「決めてやる」という意識が非常に強く感じられるのである。そのオーラに惹かれるように、投野はトスを上げる。木村はそれに応えて翼を広げた。

補正DSC_0697

この日の最終得点者は木村友里。まるでそうなることが最初から決まっていたかのように、木村の右手から放たれたスパイクは、相手のワンタッチを誘い、歓喜の25点目となってコートに落ちた。

補正DSC_1055

セットカウント3-0のストレート勝利。歓喜の輪の中心にいる木村が見つめているのは、コートエンドから駆け寄ってきた森寿実子だった。木村は加入3年目。中心選手としてチームの多くを背負い、その重さを実際に感じているであろう彼女にとって、創設時からアランマーレを支え続けてきた森は、大きな目標であり、尊敬の対象であるに違いない。プレー中も、レセプションの重責を担うコンビとして、言葉を交わし、意思を通じ合わせている場面の多い二人。アランマーレを支える名手二人が見せた短い意思の交換は、さりげないながらも感動的な一場面だった。

試合後のヒロインインタビュー。伊藤摩耶が時折声を震わせる。続けて立った森もまた、言葉に詰まる。こんなに素晴らしい戦いを演じる彼女たちですら、未曽有のウイルス禍に不安を感じていたに違いない。リーグ戦の行方も見えず、泣きたいほど不安な日もあっただろう。でもそれを表に出すことなく、アランマーレは日々練習を重ねた。そして、応援してくれる山形・酒田のファンの前で最高の勝利を飾ることができた。その達成感と安心感が、彼女たちに「心の汗」をかかせたのだろうと思う。あえて涙とは言わない。なぜなら、涙は最後まで、この先に続く戦いに勝った時に取っておいてほしいから。目指すは最終戦の勝利。そしてその先にある入れ替え戦で勝って初めて悲願のV1昇格が現実となる。まだまだこれから。でも君たちならできる。先輩たちが築いてきた土台の上に、これまでで最高の高さの塔を建てよう。目指す至高の領域にとどくまで。さあ、また次の戦いに向けてがんばろう!オレたちも力の限り応援するぜ!がんばれ!アランマーレ!!!

Let's get ready to rumble-さあ、戦いの準備をしよう-

補正DSC_1196


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?