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【卒業ソングを木村昴が語る】「オススメの卒業ソングは、リアリティーが刺さりすぎるGADOROのこの曲!」【HIPHOP HOORAY VOL.26 ヤングジャンプ公式】

『ヒプノシスマイク』で山田一郎役も務める声優界一の“ガチなヘッズ”な木村昴の日本語RAP連載!

日本語RAPの卒業ソングを何曲かってテーマでしたが、“この曲1択で語りたい!”ってことで大好きなGADOROさんの『ハジマリ』です!

木村 昴 きむら すばる:1990年6月29日生まれ。ドイツ出身。『ドラえもん』ジャイアン/剛田武役、『輪るピングドラム』高倉冠葉役等を担当。『ヒプノシスマイク』ではイケブクロ・ ディビジョン代表Buster Bros!!!を率いる山田一郎役。天才劇団バカバッカを主宰。ラッパーとしても『フリースタイルダンジョン』にも出演していたラッパー・掌幻と“掌幻と昴”として活動中。

※本記事は週刊ヤングジャンプ2021年17号に掲載された内容をnote用に一部改変して収録しました。

オススメの卒業ソングは、リアリティーが刺さりすぎるGADOROのこの曲!

——気候も春めいてきましたが、それは同時に卒業シーズンを迎えるということで。

僕が今、卒業生に聴いて欲しいと思うのはGADOROさんの『ハジマリ』ですね

——2020年リリースのアルバム『1LDK』に収録された曲ですね。

GADOROさんは以前にもこの連載でお話させて頂いたぐらい大好きなラッパーで、名リリックがとにかく多い、存在自体がパンチラインみたいな方なんですが、この曲では等身大のリアリティを丁寧に書かれていて。卒業を控えた中高生にはかなり共感できる卒業ソングじゃないかなと思います。
まず出だしが“とりあえず校長の話長かったな”ですから

——誰しも共感できますね(笑)。

学校集会のリアル(笑)。そして“先生の話と女のスカートだけは短くしてくれ”。出ましたパンチライン(笑)

——リリー・フランキーさんが結婚式のスピーチで“スピーチとスカートは短いほうがいいので私はこのへんで”と終わるのと通じる感覚が(笑)。

ハハハ。それも粋ですね。そこに続く“むしろ無くたっていい/そんな冗談も今日でおしまいか”っていうフレーズで、この曲が卒業ソングだって分かる構成も素敵なんですよ

——この曲で“卒業”というフレーズはフックで登場するだけなんですよね。

他にもリアルだなと感じるのは、教師を指す時に“先生”とか“あいつ”じゃなくて、“高嶋”とか“永瀬”っていうんですよね。良くないことだったかも知れないけど、僕らも学生の時はそう呼び捨てしてたじゃないですか。その部分にもリアルを感じるし、嘘偽りない話なんだなって引き込まれる。

GADOROさんはこの曲で“自己中の俺は友達はいなかった”ってラップされてるし、ライヴでもそうMCされるように、友達の多いタイプではなかったみたいなんですね。でもその一匹狼な感じが、この曲のクラスを俯瞰して見るセンスにも通じてるのかなって

——特に1stヴァースはそうですね。

中高生が聴いて勇気を貰えるんじゃないかなと思うのは、“勉強なんて無理にするものじゃねぇ/夢なんて無理に探していくものじゃねぇ”ってパート。“勉強頑張れ!”“夢を諦めるな!”って言葉は、励ましなんだけど、言われる方はプレッシャーにもなってしまう。でもこのラップは“お前のペースがあるんだから周りに合わせて焦らなくていいよ”っていうメッセージになってると思うし、フッと楽にしてくれる、救いのフレーズになるんじゃないかなって

——“別れが来たって離れるのは距離だけだ/どうかハゲんなよ/次会う時までは”っていうフレーズはグッときますね。

友達同士のすごくリアルな別れの挨拶だと思うんですよね。このフレーズを言うとき、お互いが生活する距離は離れるし、次に会うのは当分先になるってことは分かってると思うんですよね

——毎日顔を突き合わせてたのが、卒業の次の日から全く会わなくなるわけですからね。

このフレーズは“それでもいつか未来で会おう、その時に俺たちの青春が無駄じゃなかったことを話し合おう”ってメッセージだと僕は解釈してるんですけど、それを直接言わないで、照れ隠しみたいに“どうかハゲんなよ”っていうGADOROさんが粋ですよね。そして3ヴァース目。担任からの卒業メッセージに対して“糞くだらねぇ/また綺麗事かよ”って、卒業式の日は悪態をつくんですよ。でもその後に“気がつけばいい歳の大人になって”そのメッセージに対して、“あの時綺麗事だと思ってた言葉/今では大事にしてる”って、感情が変わっていってるんですよね。

そして孤独な学校生活だった自分も、振り返ると周りには友達がいて、GADOROさんもラップっていう生きがいを見つけて(自分のライヴが)武道館である時は/(クラス)全員で来てくれ”て目標を掲げるんですよね。そして最後に“口だけじゃないと証明/口だけでな”……上手すぎますよ!

——ラッパーの本分が最後のフレーズに炸裂してますね。

2021年の卒業生に僕から贈る曲はこの1曲ですね。卒業生も、学生も、もうはるか昔に卒業した人も、みんなぜひ聴いてみてください!

最後までお読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!

撮影◎門嶋淳矢
取材・文◎高木“JET”晋一郎

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