大園桃子さんの性格の魅力

先日以下の記事を書き終わったところで、達成感からか興奮が続き、脳内の思考が止まらなくなってしまった。
さて、その記事では大園桃子について、私自身が彼女に感じている魅力の本質がなるべく伝わるように書いたつもりではあるが、あくまで大園玲との比較という記事のテーマ軸に沿った見方となっている。

そこで本稿では、せっかくの機会なので、私自身が感じている大園桃子の性格の魅力について、テーマを設けず真正面から言語化して残しておく。

全体の構成としては、彼女の魅力を「人間としての魅力」4つ・「大園桃子としての魅力」4つ・「アイドルとしての魅力」4つの計12要素に分けて説明する形とした。
本稿は1万5000字あって量が多いが、上の大園玲との比較記事はもう少しコンパクトにまとまっているので、よろしければ是非そちらもお読み頂きたい。そちらの方がストーリーもあり読みやすいものになっていると自負している。

なお、大園桃子が超絶美人で、ステージ上では誰よりもキラキラしていて、バラエティー番組ではとんでもなく面白くて、さらには声まで魅力的なスーパー最強アイドルだということは、ここでは語らない。
全く無関係という訳ではないだろうが、あくまで性格面に絞って、大好きな彼女の魅力を語っていきたい。

~1. 人間としての魅力~

私は大園桃子を見ていて、人間として好きなんだなと感じることがしばしばある。
その正体について考えてみると、そこには、以下に挙げる4つの要素がある。それは大園桃子に限らず、私が魅力を感じる人間に共通する特徴のようにも思う。

1-1. 倫理観に違和感が無い

まず最初に述べたいのは、倫理観についてだ。
これは別に、彼女の倫理観が高く素晴らしいと、偉そうに評価しているつもりはない。私自身が社会一般でお手本になるような倫理観を持ち合わせているかと言われれば、そうとは言えない部分もある。

ただ、社会を生きていて、他者の倫理観に思わず「えっ……」となってしまう場面は多々あるものだ。それは例えば近しい人、家族に対してすら感じることもある。それ自体が悪い事だとも限らない。
しかしそんな中で、彼女の倫理観はスッと入ってくるのだ。勿論表に見えている部分に限るのだが、それは私にとって心地が良い。

これについては、ぴったりとした例を挙げるのが非常に難しい。それはおそらく、倫理観に違和感を覚える場合はそれが例になるが、違和感が無いというのはある意味普通の状態だからだろう。
しかしそう言っていては説明にならない。そこでここは、彼女の倫理観を映し出しているようなエピソードを挙げておきたい。

ひとつ、彼女が繰り返しインタビューで語っている想いとして、「嘘をつきたくない」というのがある。嘘をついてまで周りに合わせるのを是としない思想だ。
これは彼女の倫理観を形成する基本的な考え方のように思う。

例えば、以下は20歳を迎えたことを期に受けたインタビューでの発言だ。

――どんな大人になっていきたいですか?

大園桃子「嘘をつく人にはなりたくない。自分にも、周りにも。良くも悪くも正直でいたら、嫌われることも多いんだろうけど、嘘をついてまで好かれようとは思わないです。それができたら楽なんだろうけど、それをしたら、桃子が桃子じゃなくなっちゃうから」。

引用:20±SWEET 2020 JANUARY

※手元で確認できただけでも「嘘をつきたくない」もしくは「嘘をつけない」ことは次の10冊で語っていた。TopYell2018年1月号、graduation2018高校卒業、MARQUEE Vol.126、BUBKA2018年10月号、blt graph. vol.39、20±SWEET 2020 JANUARY、EX大衆2020年3月号、blt graph vol.54、EX大衆2021年1月号、BUBKA2021年3月号

あるいは倫理観というのは、将来の自分の子供の「あるべき姿」について語る時に浮き彫りになっているようにも思う。

――もし自分に子供ができたら、どういう風に何を教えていきたいですか?

大園桃子「(前略)今考えてもしょうがないんだけど、子供ができたら”どうすれば、心の綺麗な子になるんだろう”ってすごく悩む!(後略)」

――でも、何かを教えてはいきたい?

大園桃子「私が教わってきたこと、あいさつとか靴を並べるとか、基本的なことはちゃんと教えてあげたい。なんかね、優しい子になってほしいなってすごく思うけど、優しすぎると自分がつらくなることも多いから。(後略)」

引用:blt graph. vol.54

すなわちこれは彼女自身が、心は綺麗でありたい、優しくありたいと願っているということの表れであろう。
これもまた、彼女の倫理観を形成する基本的な考え方のように思う。

なお、この引用部からは、あいさつや靴を並べることが彼女自身の望ましい価値観形成に役立ったと自認しているということも読み取れる。
しかし実は、この引用部の前段において、彼女は「別にみんなにそろえてほしいって言ってるわけじゃないですよ」とも述べている。
このバランス感覚が絶妙だ。

彼女は、「靴を揃えない人は優しくない」と考えているわけでは決してなく、それを手段として捉えている。
だから、例えばあいさつ至上主義のようなものが苦手で靴を揃える習慣もない私のような人間にも、「彼女の倫理観はスッと入ってくる」のだ。

そしてもうひとつ、そんな私にも大好きなエピソードがある。

大園桃子「小学校のときは校長先生が正門に立っていて、大きい挨拶をしていました。『大園姉弟は全校生徒で一番しっかり挨拶をしています』って朝礼で褒められたことがあります(笑)。」

引用:BRODY 2019年2月号

ああ、だから彼女はこんな優しい子になったんだろうな、と妙に納得がいくのである。

1-2. 物事を自分なりにしっかり考えている

さて、第2の要素として述べたいのは、彼女は驚くほどに様々なことをしっかり考えているということだ。決して他人の言葉を鵜呑みにするのではなく、自分をしっかり持って、自分なりの理由づけをしている。

このことは彼女の言動の節々から感じられるが、ここでは、彼女の周囲の人々の言葉を借りて説明してみよう。

まずは、大園桃子と特に仲が良いメンバーとして知られる梅澤美波。
他の人にはしにくい真面目な深い話を「桃子にはなんでも話せます」と述べた上で、その理由についてこう語っている。

梅澤美波「桃子のことを『何も考えてなさそう』と思ってるファンの方もいると思うけど、3期の中でも一番と言っていいくらい考えてるんですよ」。

引用:EX大衆 2017年12月号

大園桃子は頼りがいがあるほどしっかり考えている。

あるいは大園桃子は、「アイドルとは」という問いについて人一倍考えている印象がある(それについては先般の大園玲との比較記事を参照いただきたい)。
その様子について、先輩の生駒里奈はこう語っている。

生駒里奈「桃子は『自分』と『アイドル』にギャップを感じて、心の中で葛藤していると思う。でも、自分を責めることなく、目の前の壁を恐れずに進んでほしい」。

引用:EX大衆 2018年5月号

この発言は、大園桃子がそれだけよく考えているということを映し出しているように思う。
また、乃木坂46映像プロデューサーの金森孝宏氏は、映画「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」において、大園桃子が自身をアイドルに向いていないと語る場面についてこう述べている。

――(筆者注:映画の中で)印象に残ったシーンはありますか?

金森孝宏氏「僕は大園のシーンかな。『自分はアイドルに向いていない』という話って、誰もが一度はするんですよ。」

――「私は向いてます」って人はあまりいないですもんね。

金森孝宏氏「すごいなと思ったのが、それをあんなふうに腑が落ちる感じで『なるほど』と説明されるのは初体験でした」。

引用:BUBKA 2019年9月号

映画を見て同じように感じた人も多かったのではないだろうか。
大園桃子は、周囲を納得させられるような理由づけを、独自に生み出すことができる。これは非常に魅力的だ。

1-3. 物事を客観的に捉えている

第3の要素は、客観性だ。
これは物事をしっかりと考えているという先の要素と被る点もあるが、彼女の客観的思考には舌を巻く。

彼女は乃木坂46加入以来、悩み、苦しみ続けてきた印象がある。
しかしそれは、彼女の客観性が強すぎることの裏返しのようだ。

私が彼女の客観性の強さを感じたエピソードがある。
それは18thシングル「逃げ水」の選抜発表の際。
彼女は選抜発表に当たって、「周囲の声が怖かった」と述べた後、センターに選ばれた際の心境をこう振り返る。

大園桃子「もし名前が呼ばれても、絶対泣いちゃうと思ったんです。今までのイベントで何回もパニックになっていたから(笑)。だから、今回だけは絶対に泣かないようにしようっていうことは決めていました。すっごい我慢してたんですけど、呼ばれたときは、呆然としちゃいました。『あ~、呼ばれた…』みたいな。泣くにしても少しだけだ、と。いっぱい泣いたら、どう思われるかわからないから」。

引用:FLASHスペシャル グラビアBEST 2017年盛夏特大号

それまでの活動において、常軌を逸するほどの涙を流し続けていた彼女。
そんな彼女が、あんなにもプレッシャーのかかる場面で涙をこらえるというのは並大抵のことではなかっただろう。
しかし、彼女はその客観性の強さでもって、涙を抑えつけることに成功したのだ。

あるいは彼女が、センターに選ばれて注目された理由と将来の分析を語ったインタビューも興味深い。
そこには彼女独特のネガティブさがあるものの、かと言ってそれを否定できる明確な根拠もなく、彼女の客観性の強さがなせる発言だという印象を受ける。

大園桃子「(前略)田舎に住んでてアイドルと無縁だった桃子が珍しいから注目してもらえるけど、『珍しい』は最初だけなんですよ。」

――もう加入から1年以上経ちましたよ。

大園桃子「今からですよ(笑)。まだ珍しいかもしれないけど、人って同じ場所にいれば慣れるわけだし、嫌でも同じようになるんですよ。その間に、他の子はアイドルとして力をつけていくわけですよ。新鮮味のなくなった桃子と比べたら、実力をつけた子の方が魅力的に感じるはず」。

引用:TopYell 2018年1月号

そしてまた、彼女自身も、自らの客観性の強さを自覚している。
彼女はそれが故に苦しんでいると考えているが、それでも彼女は客観的思考を止められない。これは彼女の強さだと思う。

――なんで、そこまで苦しむんですか。

大園桃子「たぶん、自分を客観的に見えすぎちゃうんです。自分しか見えないタイプだったら、悩むこともないんですよ。だけど人のことを見て敏感に反応してしまうし、意外と考え込んじゃう。」

引用:BUBKA 2018年10月号

1-4. 多様性を尊重している

本節最後、4つ目の要素に挙げたいのは、多様性の尊重だ。
ここまで見てきたように、彼女は自分の考えをはっきり持っている。
しかし、全く押しつけがましくない。むしろ、他者には他者の考えがあるということを尊重しているように感じる。
このバランス感覚が私は好きだ。

それが象徴的に表れているのが、先輩の齋藤飛鳥が大園桃子の優しさについて語る内容だ。それは過干渉しないという優しさである。

齋藤飛鳥「ぞのさんはやさしさが前面に出ている人。距離の取り方が絶妙に上手いんですよね。踏み込んでいい領域がどこまでなのかをちゃんとわかっている感じがします。たぶん、普段から人のことをすごくよく見ているんだと思います。そこは、やさしさというか、気にしいなんだろうけど」

引用:BOMB 2018年12月号

あるいは大園桃子は自身を、「周りに壁を作る」「仲良くなるのに時間がかかる」と評することがある。
鹿児島の田舎から一人で上京してきて、様々な価値観のメンバーと出会ったことに戸惑いがあったこともあったようだ。
戸惑ったからこそ、距離を置いた。
しかしそれはある意味、彼女が相手の価値観を尊重し、必要以上に踏み込まないという優しさの裏返しのようにも思う。

大園桃子「3期生っていろんな子がいて、『あっ、こういう考えもあるんだ』ってビックリしたこともありました。でも、時間が経つとそれも受け入れられるようになっていって……。大人になったんでしょうね」。

引用:BRODY 2021年2月号
大園桃子「それ(筆者注:心の距離があったこと)は3期生にも同じことでした。みんなのことを深く知らないから仲良くなれない。それが3年という時間がたって、なんだか3期生のことが好きになったんです。みんなのこと、かわいいなって思うようになって。自分も周りも子供で、よくケンカもしました。桃子が壁をつくっていたところもありました。3年かかったけど、これでよかったのかな(笑)」

引用:乃木坂46×週刊プレイボーイ 2019

色々と戸惑いがあったとしても、今になってこうして、みんなを受け入れられるようになった・好きになったと語ることができるのは、彼女が相手の価値観を尊重しているからだろう。
それって素敵だな、と私は思うのだ。

~2. 大園桃子としての魅力~

ここまで、大園桃子の人間として好きな要素を取り上げてきたが、彼女の魅力はそれだけではない。
それらに加えて、大園桃子を大園桃子たらしめるような、チャームポイントとも呼べる、個性的な魅力がある。
以下ではそれを4つの要素に分けて説明していこう。

2-1. 感受性が強い

まず挙げたいのは、大園桃子は感受性が強いという点である。
これはおそらく、多くのファンが彼女の魅力としてあげる要素だろう。

だから、普通の人が気付かないようなことを教えてくれて面白い。
あるいは喜怒哀楽が激しく、それは見ている者の感情を揺さぶる。

彼女はよく笑い、そしてよく泣く。
それは周知の事実だろう。
近年では泣く機会こそ減っては来ているものの、テレビのバラエティー番組での何気ないVTRでも当たり前のように泣いているのは、数いるタレントの中でも彼女くらいのもののように思う。

そんな彼女に近い感性を持ったメンバーが北川悠理だ。
彼女たちのエピソードは、聞いているだけで胸にキュっと染みる。

大園桃子「スタッフの方がサンタの格好をしてサプライズでリハ室に入ってきたことがあったじゃない? あの時もみんなは写真や動画を撮っていたけど、2人だけ泣いていたよね」。

北川悠理「泣いてました」。

大園桃子「『こんなに優しい環境にいるんだ』と思ったら涙が溢れてきちゃって」。

北川悠理「すごくいい空間でしたよね。私も自然と涙が出ました。最初はみんな泣いていないから『どうしよう』と困って手で顔を隠していたけど、桃子さんを見て『泣いてもいいんだ』と思ったんです」。

引用:EX大衆 2020年3月号

また、彼女の感受性の強さは、演技をする際にも表れる。
それは素人の私が聞く分には、信じられないようなエピソードだ。
彼女自身は演技を苦手と捉えているようだが、しかしそこには女優としての才能があるのではないかとも考えてしまう。

(舞台「見殺し姫」を終えてみて、)
大園桃子「たまに役に入れる日がありました。その時は感情移入しすぎて涙がボロボロ出ちゃうんです。ただ、それを自分でコントロールすることができないんですよね。泣ける日と泣けない日があって、泣けない日は桃子のままなんです」。

引用:日経エンタテインメント! アイドルSpecial 2018春

あるいは私自身、握手会の機会で彼女の感受性の強さを感じたこともある。
その日、私の前に並んでいたのは、松葉杖をついている方だった。
驚いたのは、その方が握手のブースに入った瞬間、彼女は信じられないほど本気で心配する表情を見せたのだ。
それは、社交辞令ではない本気の表情。ベルトコンベアのように大量のファンが流れてくる握手会において、一人のファンに見せていた彼女のその表情が私は忘れられない。

だが、彼女自身はその感受性の高さが故に悩んでもいる。
ある時彼女は、何もない「無」の状態でいられるような別世界に行きたいと述べている。

――たしかに、「無」でいることは難しいですからね。

大園桃子「そうなんですよ。桃子は喜怒哀楽が激しくて、それに自分も疲れちゃうから、そういう場所(筆者注:『無』の状態でいられる場所)に行ってみたいなって思うんです」。

――毎日、心穏やかに過ごしたいっていうのは誰もが憧れますよ。ただ、大園さんはあまりにも感受性が豊かすぎるがゆえに無感情ではいられないわけですよね?

大園桃子「それに疲れちゃうんですよ」。

――ですよね。鈍感な人だったら何も感じないだろうから。

大園桃子「何を見ても全部自分がそうなんだっていうふうに勘違いしちゃう」。

――どういうことですか?

大園桃子「人が言われていることとかも、自分が言われてるんだって勘違いしちゃったり」。

――電車の中で母親が子どもを叱っている光景を見て……。

大園桃子「そうそう。それを見てる自分が嫌になって、こういうのがあるんだったら、そういうのがない別世界へ行きたいなって。悲しいこととかも全部そうなんです。保護犬っているじゃないですか。保護犬ってなかなか引き取られないコもいて、そういうのを見てると苦しくなってきて、なんか耐えられないんですよ」。

引用:BUBKA 2020年4月号

そんな彼女に、もし言葉をかける機会があるとしても、私は何と言っていいのか分からない。
ただ、これは他人事のようで本当に申し訳ないのだけれど、そんな自身の感受性をどうか大事にして欲しいなと思うのだ。

2-2. "小さな"幸せ観

第2の要素として挙げるのは、彼女の"小さな"幸せ観である。
それは彼女の感受性の強さとも関係するが、彼女は"小さな"幸せを感じたいとしばしば述べている。

彼女は一時期、「いいことがあったらメモをする」という習慣を持っていた。
それは例えば、「体調が悪そうな女の人に、近くを歩いていた男の人が『大丈夫ですか?』って声をかけてた」「タクシーの運転手さんが、近い道を探そうと頑張ってくれて親切です」「歩きながら熱唱している愉快なおじさんとおばさんがいました」などの微笑ましい光景である。
そしてメモをとっている理由について聞かれた彼女は、こう答えている。

大園桃子「そういう小さなことを『しあわせ』って思えているうちは、桃子ってまだ大丈夫かな、って自分で思えるので」。

引用:BRODY 2018年4月号

彼女はこういった"小さな"幸せ観を大事にしている。
それは聞いていて非常に微笑ましい。

そして興味深いのは、それを自身の精神状態が「大丈夫」か判断するためのバロメーターとして活用しているということである。
彼女は"小さな"幸せを感じられる自身の感性も大事にしている。
だから、2-1で「無の状態に行きたい」と述べる彼女の発言を取り上げたが、しかしそれは100%の彼女の考えではなく、そこには葛藤が見える。
なんだか、彼女は強く戦っているなと、そんな気がするのだ。

そしてまた、彼女はその"小さな"幸せを求めて行動に出る。
それは例えば、雑誌の取材の日。ライターの小畠良一氏は、このように綴っている。

小畠良一氏「取材の日は気持ちのいい晴天だった。お昼休憩をどこでするか、スタッフが思案していると、東京・原宿で撮影していたにもかかわらず、彼女が唐突に『ピクニックしたい!』と。おしゃれなパン屋さんに、彼女とスタッフみんなで乗り込んだ。好きなパンを選び、温かいスープも買って、代々木公園へ向かった。日の当たる芝生に、買ったばかりのレジャーシートを彼女が広げてくれた。みんなで一緒になって食べたパンもスープもおいしかった。何より、素敵な時間になった。大園さん、ありがとう」。

引用:20±SWEET 2020 JANUARY

彼女の"小さな"幸せはこうして伝染する。
自身の幸せが、周囲の幸せとなり、そしてそれを伝え聞いた私やみんなが幸せな気持ちになる。それは"大きな"幸せだ。

2-3. 素直

第3の要素として挙げるのは、彼女の素直さである。
彼女は、思ったことを正直に言っているような印象がある。それは見ていて非常に気持ちが良い。

そういった素直さは、幼少期の頃からのもののようだ。
以下のエピソードは聞いていて微笑ましい。

――小中学校の通知表には先生に何て書かれてました?

大園桃子「(前略)『桃子さんのいいところは素直なところです』って書いてあった」。

伊藤理々杏「そう!正直だよね!」

大園桃子「その後に、『素直すぎると人を傷つけるから気をつけて』って」。

伊藤理々杏&山下美月「ハハハハハハ!」

引用:BUBKA 2017年6月号

彼女は確かに、思ったことを正直に言っているのだろう。それは我々ファンに対して発信する時もそうだ。
しかし、それを聞いている私が不快になったことは全く無い。

そこには、1-3で述べたような彼女の強い客観性があると思う。
その強い客観性でもって、言っても良い範囲を絶妙なバランスで調整しているように感じる。
それは他のメンバー全員も実践していることではあるとは思うが、彼女は踏み込む範囲が広く、そのバランス感覚は一層絶妙に思える。

さらにその素直さは、「思ったことを正直に言う」という素直さに限らない。
彼女は、「叱ってくれたことを聞く」という素直さも持っている。

(白石麻衣の好きなところについて、)
大園桃子「(前略)『ダメだよ桃子』って言われることもあるけど、でも言ってくれるから嬉しいです」

(樋口日奈と梅澤美波の好きなところについて、)
大園桃子「(前略)ちまちゃんとみなみんは、ほんとにこういう人いるんだなって思う。2人とも誰にでも優しいし、ダメなことはダメって言ってくれるんですよ」

引用:MARQUEE Vol.126

叱ってくれることを嬉しいと感じることは、そう簡単な事ではないと思う。これは私が、彼女について一番尊敬している点かもしれない。

2-4. 頑固

本節最後、第4の要素として挙げるのは、彼女の頑固さである。
それは一見、素直さとは真逆のようである。しかし、彼女は素直であり頑固なのだ。それも著しく頑固だ。叱ってくれたことを嬉しいと感じる柔軟性を持っているのに、自分が大事だと思う考え方は曲げようとしない頑固さも持ち合わせている。
その絶妙なバランスには、惚れ惚れしてしまう。

それは例えば、1-1で見たように、「嘘をつきたくない」と何年もの間繰り返し述べ続けているような頑固さだ。

あるいは同じように、「自分らしさを失いたくない」という趣旨のことを、彼女は何年もの間繰り返し述べ続けている。
※例えば手元で確認できただけでも次の6冊で語っていた。MARQUEE Vol.119、MARQUEE Vol.126、EX大衆2018年5月号、BRODY2019年2月号、20±SWEET 2020 JANUARY、EX大衆2020年3月号

そして私が好きなのは、彼女の意志の力が、年齢を重ねて増しているという点である。
多くの人間は、大人になるにつれて妥協というものを覚えてしまうだろう。
しかし彼女はそうではない。
アイドルの世界に入ったばかりで分からないことも多かっただろう当初は「仕方ない」と受け入れていたものを、自らの意志によって「やっぱりおかしい」と跳ね返す強さがある。

――あの頃(※筆者注:逃げ水でセンターを務めていた頃)に目指していた夢や理想があったと思うけど、今はどうですか?

大園桃子「ダメなこととか、理不尽なことに納得しなくなった。なんだろう、理不尽な事っていっぱいあるじゃないですか。前は仕方ないって思うこともあったけど、やっぱり、おかしいって」。

引用:B.L.T. 2020年5月号

そして彼女は、そんな自分の頑固な性格についてこう語る。

――自分を貫ける強さがありますね。

大園桃子「自分を貫いて行こう!とやってきたつもりはないんですけど、弱くはないんですよ。たぶん自分を曲げるのがイヤなんだと思うんです。ただ、自分の感情を抑えきれないから、我慢を強いられるようなことがあると、自然に涙が出てきちゃうんですよね。大人の人は自分を抑えたり、自分の前に壁を作ったりできるのかもしれないですけど、それができない。そういう意味ではまだ子供だし、弱いのか」。

引用:blt graph. vol.39

涙が出るほど自分を曲げたくない頑固さ。
これを貫いている彼女の強さが、私は大好きでたまらない。

実は私は勝手に、彼女の頑固さは自分と似ているように感じている。
そういった私自身の性格は、周囲に特に貶されることもないが、褒められることもない。しかしそれは不安だ。
だから、私は彼女の頑固さが大好きでたまらないが、それはある意味、彼女を通して、普段誰からも褒められない自分自身の頑固さを称賛したいのかもな、とも思う。
そしてそんな風に考えられるのは、やっぱり彼女に魅力があるからなのだ。

~3. アイドルとしての魅力~

さて、ここまで彼女の魅力について語ってきたが、彼女は別に私の友人ではない。言うまでもなく、彼女はアイドルである。
それはすなわち、我々は彼女がアイドルとして表に出て発信を行っている姿からしか、彼女のことを知ることができない。あるいはアイドル「大園桃子」という人間は、表に出て発信している姿そのものとも言える。

ではなぜ、そのような限られた機会しか持ち得ない彼女に対して、私はこんなにも魅力を感じているのだろうか?
それは、彼女が発信者という立場の人間として、非常に魅力的であるからに他ならない。
最後は、そんな彼女の魅力を、以下の4つの要素に分けて説明したい。

3-1. 自分の考えをさらけ出せる

まず1点目に挙げたいのは、彼女は自身の考えをさらけ出せる強さを持っているということだ。
それは、本稿でここまで彼女の考え方を見てきたことからも分かる。私は、雑誌その他のメディアを通じて、彼女の考えを知っている。もし彼女が自身の考えをもっと隠していたら、そもそも本稿は成り立っていないはずだ。

さらにそれがまた、先般の大園玲との比較記事で書いたような、等身大の魅力を生み出している。
すなわち彼女は、我々が仕事や学校で悩んでいるのと同じように、悩んでいる姿を見せてくれている。だからこそ、我々は彼女に共感してしまう。

そして彼女は自らのそんな性質について、こう語っている。

――大園さんの言葉って嘘がないから刺さるのではないかと。大園さんってインタビューでも取り繕わないですよね。

大園桃子「嘘は言えないです。なんでしょうね? いいふうに見られようと思ったことがないのかもしれない。それよりも、自分が思っていることのほうが先に出ちゃう」。

――大勢にインタビューをしていると、こちらの意見に合わせてくれてるなって感じることもあるんですよ。でも、大園さんにはそれがなくて。

大園桃子「桃子は『うーん……』ってなっちゃう。『でも、そうじゃなくて』って。」

――自分の言葉がファンの人にどう受け取られるかって気になるほうですか?

大園桃子「気にはならないです。正直に話すから、ファンの人の間で話題になることは多いですけど。でも、話題になったとしても、本当に桃子が言ったことなら、『だって本当だし』って思っています」。

引用:BUBKA 2021年3月号

「だって本当だし」と思える強さ。

例えば私は、ごく僅かな人しか読んでいないtwitterやnoteにこうして自分の想いを書いていることにすら、怖さがある。もし何かの拍子で叩かれたら何も言えなくなってしまうだろう。
そう考えると、大衆の目にさらされ、あれやこれやと言われる(こうして私も言ってしまっている)中でその態度を貫ける彼女の強さは、あまりにも凄いと思うのだ。

3-2. ハッとさせられる

2点目は、彼女の言動にはハッとさせられることが多いという点だ。
発信者として、彼女は限られた機会を通じて我々に想いを届ける必要がある。

その意味で、一瞬にして聞き手をハッとさせる能力は魅力だ。
それは、誰しもが納得できるけれど、多くの人が考えつかなかったような言葉を発するということだ。
すると聞き手の我々は、一瞬にして心を掴まれてしまう。

その魅力については、後輩の清宮レイの言葉が的確に捉えているように思う。

――大園さんの魅力を教えてください。

清宮レイ「みんなと違う角度で物事を考えているのでハッとさせられるんです。優しくて『レイちゃんはいつも笑ってるから心配になっちゃう』と声をかけていただきました。(後略)」

引用:EX大衆 2019年11月号

他にも実際の発言の例としては、ここまで見てきた彼女の発言の中にもそういった要素があったと思うが、もう一つだけ、改めて取り上げておこう。
それはおそらく、彼女の発言の中でも最も有名なもののひとつだ。

大園桃子「会えないことに強くなる必要ありますか?」

引用:映画「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」

これは映画の中で「大好きな先輩の卒業もいつか来るかもしれないと思ったら耐えられない」と涙する大園桃子が、「だんだん強くなって変わっていくんじゃないですか?」と声をかけられた時に返した言葉である。

言われてみれば全くもってその通りだ。
むしろ、「強くなるんじゃないですか?」と声をかけたことが恥ずかしくなるくらいの正論である。
しかし、私は、そしておそらく多くの観賞者は、「強くなるんじゃないですか?」と思っていた。なぜか、彼女の正論が思い浮かばなかった。

どうしても普通の人間は、常識という目に見えない枠にとらわれて、本来あるべき可能性を、最初の段階で排除して思考し始めてしまう節がある。
しかし彼女のその枠は、普通の人間よりもずっと薄い。枠を飛び越えた思考ができる。
これが、彼女の大いなる魅力だ。

3-3. 言葉のセンスがある

3点目は、彼女の言葉にはセンスがあるという点だ。
これは先のハッとさせられるという点と近いかもしれない。
彼女の言葉には、一瞬で聞き手の脳内に流入してくるような、気持ちの良いセンスがある。

例えばそもそも、彼女のブログは全部センスがあると感じる。
ただし、時間をかけて書いているのであれば、まだ理解できる。
彼女が凄いのは、それが会話の中でも出てくるということだ。これはもはや人間業とは思えない。

例えば、映画「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」の監督、岩下力氏もその魅力を語る。

岩下力氏「大園(桃子)さんは面白かったです。一見、天真爛漫な感じに見えるけど大人がハッとするようなことをポロッと言うんですよね。どこでそういう考えを抱いたんだろうっていう。『季節がこの世界では道具にされてる気がする』って言った時にすごいなと思ったというか、発想がクリエイティブというか。それが地なんでしょうけど。触発される言葉を、大人がハッとする言葉を平気で言うところが面白かったですね」

引用:TVLIFE web(https://www.tvlife.jp/pickup/232523

あるいは、同映画でプロデューサーを務めた上野裕平氏・金森孝宏氏は、映画内での彼女の発言について以下のように魅力を語っている。

上野裕平氏「『大人になるためには気持ちに抗う必要があるけど、私は抗えない』って。すごい言語感覚の持ち主ですよね」。

金森孝宏氏「レコ大受賞後の『なんか、なんか……』って溜めたあと、『乃木坂も悪くないなって思った』というのも、そんな言葉を使うんだ!という驚きがありました。」

引用:BUBKA 2019年9月号

この映画を観賞して、同じように彼女のセンスの良さが印象に残った方も多かったのではないだろうか。

そしてもう一つ、雑誌のインタビュー記事の中から彼女のセンスを感じた発言を取り上げておきたい。

大園桃子「レイちゃんは戦っているから笑顔なんだなと思いました。桃子は戦わずに諦めていたから泣いていたのかな。」

引用:EX大衆 2021年1月号

綺麗な言葉だ。
これは、26thシングル「僕は僕を好きになる」で初めて選抜入りした清宮レイが、向上心を持って強く頑張っていると語ったのを受けての発言である。
その清宮レイに、かつて18thシングル「逃げ水」でセンターに選ばれた時の自分を重ね合わせたのだろう。そしてその精神状態を比較し、それをさらにそれぞれのパブリックイメージとなっている表情に結び付ける。

会話の中で、こうしたセンスのある言葉が自然に出てくることに、驚きが止まらない。

3-4. 油断させる力

最後の要素にして、彼女の最大の天才的能力だと考えるのが、「油断させる力」だ。
説明の前に、まずは彼女がMCを務めるラジオ番組「らじらー!サンデー」で共演していた、オリエンタルラジオ中田敦彦氏の言葉を引用しよう。

中田敦彦氏「実は桃子ちゃんは頭がすごい良くて、色々考えているんだけど、素朴なキャラがそれを感じさせない。聞き手を油断させるところが強力な武器だなと思う」。

引用:BRODY 2019年8月号

これはあくまで彼女のラジオ番組中での魅力を語ったものと思われるが、しかし同じことが、彼女のアイドルとしての姿全てに共通して言えることのように思う。

私はここまで散々彼女の魅力を分析して語ってきたが、しかし彼女の普段の言動から、ここまでの文章にある堅苦しさのようなものを感じることがあるだろうか?
答えは完全にノーだろう。

彼女の普段の言動から感じられるのは、素朴で、天然で、愛くるしい姿である。
私自身も、これだけ分析したところで、その印象が変わることはない。
全く身構えることなく、「油断して」彼女を見ている。そして気付いてみたら、ここまで分析してきたような彼女の深さが染み渡ってくるのだ。

あるいはそれは、少し別の視点から見れば、「愛され力」とも言える。
乃木坂46チーフマネージャーの菊地友氏は、こう述べる。

菊地友氏「大園は、"愛され力"の強いメンバーです。それは、周りを動かすパワーに繋がっていると思います。オーディションを受けたのも、学校の同性の先輩の勧めなんです。持っているパワーがその先輩に『受けてみたら?』と言わせてしまう。そんな魅力を持っています。(後略)」

引用:映画「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」パンフレット

彼女が愛くるしいからこそ、我々は彼女に心をグッと掴まれる。
あるいは彼女の愛くるしさは、周りを動かすパワーになる。

彼女がなぜこんなにも愛くるしいのか、その理由を完全に分析することは難しい。
そこには、ここまで見て来たような、素直だとか、感受性が強いといった彼女の性格的な特徴があるだろう。
あるいは、可愛らしい見た目の印象や、鹿児島訛りで柔らかい口調の印象もあるだろう。
上手く説明はできないが、そういった全ての要素が絶妙なバランスで組み合わさることで、彼女の愛くるしさは形成されている。

これは彼女の最大の魅力だ。
アイドルとして多くの人を引き付けるような愛くるしさを持ち、それによって近づいてきた人を自らの深みから抜け出せなくしてしまうのだから。

~終わりに~

これにて、大園桃子の性格面の魅力について、全12要素を説明し終えた。
本稿を読んで頂いた方が、少しでも彼女の魅力を感じ・気付いて頂けたら幸いである。

ただし実際のところ、テーマを設けずに言語化するというのは風呂敷を広げ過ぎた感があり、私としてもこの12要素で全てを説明できた気はしない。彼女の魅力は簡単に説明できるものではないだろう。
あるいは私以外の方から見えている別の魅力も彼女にはあるだろう。
ただ、私が最大限努力して彼女に感じている魅力を分類した結果が、この12要素と捉えて頂きたい。

さてここからは余談だが、彼女のインタビューは読んでいて非常に面白い一方、一点だけ注意する必要があるという話をしたい。
それは、彼女独特のネガティブバイアスを差し引く必要があるという点だ。

例えば彼女は、2020年に行われた「乃木坂46時間TV アベマ独占放送『はなれてたって、ぼくらはいっしょ!』」の事前意気込みにおいて、こんな言葉を残していた。

大園桃子「『電視台』では、得意じゃないことに挑戦するんですけど、ごまかせるように頑張ります!」

引用:ニッカンスポーツ・コム(https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202005170000378.html

この時彼女が「電視台」企画で行ったのは、奥華子の「変わらないもの」を歌う企画だった。
これは乃木坂46全メンバーの「電視台」企画のトリとして行われ、多くの視聴者の感動を呼び話題となった企画である。
そんな結果を残していても、彼女の意気込みは「ごまかせるように」だったのだ。

ここには、彼女が嘘をつきたくない、あるいは有限不実行だけは避けたいという理由から来る独特のネガティブバイアスがあるように思う。
だから、そんな彼女の真摯な態度は魅力的ではあるのだが、受け取る側はその分を差し引いて考えねばならない。

最後に一つ、彼女が加入して一年も経たない頃、同期の伊藤理々杏が、大園桃子のカッコイイところを聞かれた際に発した言葉を引用しておきたい。

伊藤理々杏「カッコイイところは、『できないできない!』ってずっと言っていても、最終的にはちゃんとこなしちゃうところ」。

引用:別冊カドカワ総力特集 乃木坂46 vol.04

大園桃子はなかなか自身を認めないが、我々に映るその姿はカッコイイ。

(完)

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