早川聖来ちゃんの素晴らしさを伝えたい

 この2ヶ月ほど、何度も心に強く思ったのは、「聖来ちゃんの素晴らしさがどうか世の中にちゃんと伝わっていて欲しい」ということだった。
 聖来ちゃんが乃木坂46に入って来てくれて、乃木坂46のメンバーとして活動している姿を見せ続けてきてくれて、私は心から「ありがとう」と思っている。それは、たくさんの乃木坂46ファンに共通する気持ちだろう。
 だから私は、1人の乃木坂46ファンとして、また、らじらーリスナーとして、雑誌オタクとして、彼女の素晴らしさをここに書き残しておきたい。


4期生ライブ2020のこと

 早川聖来のエピソードとして私が最も印象に残っているのは、4期生ライブ2020のことだ。
 先に入った11人と、後から入った5人。合わせて16人で行う初めての4期生ライブ。バラバラになりかけていた16人をまとめ上げるのに尽力したのが、早川聖来だったという。
 この時の経緯については『10年の歩き方』第9章 [1]にまとまっているので、お持ちの方はぜひ読み返していただきたいが、ここではいくつかの雑誌のインタビュー記事での証言と併せてまとめておきたい。

当時の状況について、賀喜遥香は以下のように語っている [1]。

 5人が入って仲間が増えたのはうれしかったんですけど、やっぱり差が1年ぐらいあって、価値観や練習の仕方を私たち11人はちょっとずつ見つけてきているのに対して、5人は初めてのことばかりでわからないことが多かったと思います。でも、私たちも何か教えられることを身に付けているわけではないので、すごく難しかったですね。11人は自分のことで精一杯だし、5人は5人でわからないのに教えてくれる人もいなくて、どうしようってなっちゃうし。 16人でどうやってまとまるか、それが本当に難しかったなと思います。そんな中で、(当時の最新4期生楽曲だった) 『Out of the blue』でセンターだった(早川)聖来ちゃんがめちゃめちゃ頑張ってくれたんです。自分のことで精一杯なはずなのに、16人の4期生でまとまるにはどうしたらいいかを常に考えて動いてくれて、私たちが得たものを人に教えようとか、4期生で集まって話をしようとか、そういう行動を起こしてくれました。その結果、ライブは成功したなと思ったし、そこでまた一歩、4期生の絆が深まったと思います

 気持ちのすれ違いを解消するために早川がとった行動は、5人と徹底的に話すことだった。「自分に何かできることはないかなって探したときに、まずは5人と話そうと。ひとりだと寂しかったときは、かっきーと一緒に5人とお話しました。1対1で話すべきだなって思ったら、リハ終わりに1時間ぐらい深いお話をしたり。そうやってお話をして、お互いのすれ違いをなくすようにしましたね」 [1]と彼女は述べる。

 また、4期生間での話し合いをたくさん行い、その場を引っ張っていたという。
 遠藤さくらは、「本番前のレッスン中から、4期生でいろんなことを話し合いました。その時は、早川聖来ちゃんと清宮レイちゃんが中心になってまとめてくれた」 [2]と述べている。
 早川によれば、特に、ライブ本番3日前の話し合いが大きなキーポイントになったそうだ [3]。

 この日の夜に振り固めの予定があったけど、まだ追い付いてなくて「このままじゃヤバイ」と思って、夕方に集まれるメンバーで振り動画を見る時間を作ろうと、みんなに連絡したんです。
 会議室を借りて大きな画面で、私たちの振り動画を観ながら「ここは揃ってないね」「この手のニュアンスはどっちに揃える?」とか話したんです。これまでは各自で動画を観て、気付いたところを直していくという形だったんですけど、みんなで話し合うことで気付くこともあったので、振りも気持ちも揃ったのかなと思います。本番前も声を掛け合って練習したり、それぞれ積極性が生まれました。

 そんな早川は、決して人をまとめることが得意だったわけではないという。しかし、『Out of the blue』のセンターに立った責任感が背中を押した。
 「11人の時は話し合わなくても成立したと思うんですけど、16人になるとそうはいかなくて。私自身はそういうことが得意なわけじゃなく、学生時代もまとめ役をやったことはなかったけど、『誰かがやらなきゃいけない』と思ったんです。勇気を振り絞りました。」 [3]「16人になって初めていただいた楽曲『Out of the blue』のセンターが私だったので、『これはきっと私が(まとめ役を)しなくてはいけないな』って」 [4]と彼女は述べている。

 そして自分の練習は、家に帰ってから行った。「周りに気を配りすぎて、自分が疎かになってしまう悔しさがあって。でも、誰かが言わなきゃいけない。その時間で葛藤していました。でも、迷っている時間がもったいないから、自分の不足分は家に持ちかえって練習しました」 [3]と彼女は話す。
 人一倍責任感が強く、努力家な彼女の性格を象徴するエピソードだろう。

良き相談役として

 早川聖来が4期生の中でも信頼を集めていたのは、活動初期からのことだった。
 2018年12月に行われた『お見立て会』から間もなくして発売された『B.L.T. 2019年3月号』では、早川について、柴田柚菜は「4期生の中で聖来が一番しっかりしていて、お姉さんかもしれない」、賀喜遥香は「本音でいろいろ指摘してくれるから、うれしい」と語っている [5]。
 あるいは『ENTAME 2019年9月号』では、早川は矢久保美緒からよく相談を受けている人物として紹介されており、さらに、掛橋沙耶香は「矢久保だけじゃなくて、みんなの相談に乗ってくれるんです」、田村真佑は「ズバッと言ってくれるのがいいんですよ。たとえば『大丈夫だよ』じゃなくて、『それはあかんちゃう?』みたいな」と述べている [6]。

 矢久保によれば、早川は「優しくて、何でも受け止めてくれる存在」だという。
 『B.L.T. 2020年4月号』では、「昨日、私が泣いてしまった時も、ずっと横にいてくれて、優しい言葉をかけてくれたんです。悩んだ時も何回も聖来に話を聞いてもらっていて、いつでも優しくなぐさめてくれるんです」「聖来には、何でも言えるんです。何でも受け止めてくれるから、気を使わずにいられるし、居心地が良くて」と語られている [7]。
 
 あるいは田村によれば、早川は「思ったことをハッキリ言ってくれる存在」なのだという。「聖来は女子特有の馴れ合いっていうのかな、周りの雰囲気に合わせて発言する、みたいなところが一切なくて、いつも聖来が感じたことを話してくれる存在で。相談したら嫌な顔一つしないでしっかり聞いてくれて、″私はこう思う″ってちゃんとフィードバックもしてくれる。聖来がいなかったら乗り越えられなかったこともたくさんありました」 [8]、「私が聖来に相談するのは、なんでもかんでも『大丈夫だよ』って言う訳じゃなくて、物事をハッキリと言ってくれるから。ちゃんとした意見が返ってくるから、自分がすべきことが見えてくるんだよね。そこにいつも助けられてます」 [9]とのことだ。
 実際、田村は「お仕事の打ち合わせの時は嬉しいからテンション上がって″はい! やれます!! 頑張ります!″って言うんだけど、楽屋に帰ってきたら急に不安になっちゃって、聖来の胸に駆け込んでわーって泣いちゃって……」 [8]とも語っていて、早川を頼りにしている様子が伺える。

 早川自身、思ったことは言うように意識しているようだ。「誰かと話していてそれは違うなって思ったら、相手にもよりますけど言うことはあります。少し前には、かっきー(賀喜遥香)に言いました。彼女は、自分と誰かを比べて悩みがちな子なんですけど、その時もそうだったんですよ。でも、そんな風に考えるのは違うと思うよ、そうじゃないよって言っていたら、なぜか私が泣いちゃって(笑)。そしてら、かっきーも泣き始めたっていう(笑)」[10]と彼女は語っている。

良き先輩として

 そんな早川聖来は、後輩に対しても「伝える」ことを意識しているようだ。

 早川は自身の目指す先輩像について、「否定するんじゃなくて、たくさん肯定してあげる先輩になりたい」 [11]「ふとしたときに気持ちが温かくなるような声を掛けられる先輩になりたい」 [12]と述べている。
 さらに、具体的な例として、「やっぱり4期生として自分が入ってきて、嬉しかったこともあるし、大変だなと思った部分もあったので、自分がしてもらったことはたくさんしてあげたいし、覚えることも多いし、絶対に大変だと思うので、そういった部分を気にかけてあげられる人になりたいと思います。そもそもみんな何も知らない状態で入ってくるので、ふわっと言われても、よく分からないことがたくさんあるんです。日本特有の『空気で察せよ』みたいな感じで、具体的に『それはこういうことだよ』と伝えない雰囲気があったりするので、そこは具体的にしっかり教えてあげたいなって。必要な苦労はした方がいいと思うんですけど、無駄な苦労はあんまりしてほしくないんです」 [13]と語る。
 
 MCを務める『らじらー!サンデー』では後輩への八方美人ぶりが頻繁にイジられているが、後輩の反応を聞いていて、後輩からすれば本当に嬉しいんだろうなと感じることは多い。きっと彼女は、良き先輩になっているのだと思う。

努力家

 そしてなんと言っても早川聖来の凄いところは、ストイックで努力家なところだろう。

 樋口日奈は早川との対談において、以下のように語っていた [14]。

 こっちが心配になるくらい一生懸命でがむしゃらにがんばっている姿を近くで見てきました。きっとお家でめちゃくちゃひとりで練習してるんだろうなっていうのがわかるんですよ。
(中略)
 聖来は昔の私に似てるなって思うんです。一生懸命だし真面目。ライブでもいちばん把握しているくらいきちんと覚えているから、真面目が故のモヤモヤする気持ちも私はわかる。いつからか私は、気にしすぎない方がいいなと思って吹っ切ったのですが、聖来はちょっと心配……。心に余裕ができないだろうなって思っちゃうときがあります。
(中略)
 真面目な子にちゃんと気がついている人が声をかけていかなきゃ、その子がどんどん苦しくなっちゃうなって思って。聖来と私の共通点はめっちゃ真面目なことかな(笑)。

 樋口が指摘するように、早川は活動初期の頃から、自身のストイックすぎる性格が故に苦しみを感じることは多かったようだ。
 当時のインタビューで彼女は、「レッスンでは、自分のなかでハードルを高く設定して、最大限の力を出したいという気持ちが強いのですが、初めてのことばかりで、うまくできないと悔しくて、自分を責めてしまって、泣いちゃって…の繰り返しです(苦笑)」 [15]と答えており、また田村真佑は「聖来は元々ストイックな子だから、その分、落ち込むことも多くて。よく1人で泣いてるんですよ」 [16]と語っている。
 しかし彼女自身、段々とその弱点を克服してもいた。早川は、加入から7か月が経った頃、お見立て会の時を振り返って「あの時は、なんでも完璧にやらなくちゃいけないと思っていたんです。でも最近は、完璧に出来なくても自分が精一杯やっていたら、そんなに落ち込む必要がないのかなと考えられるようになりました」 [16]と述べていた。

 そうやって自身の性格と向き合いながら、彼女は努力を継続し続けた。
 『B.L.T. 2020年4月号』で矢久保美緒は、「聖来はすごい努力家なんですよ。私にないものをいっぱい持っているのに、自分に求めるレベルが高くて、それに向かって努力を惜しまないからすごいなって、まず思います」と話した [7]。
 あるいはコロナウイルス流行によるステイホーム期間も、彼女は練習の機会に変えていた。「ほぼ毎日フィットネスをしていました。(中略)1時間ずっと踊り続けたり。(中略)あと、歌も習いました。ありがたいことに、オンラインでボイトレをさせていただけたので、それで毎日練習していました。(中略)レベルアップした姿を見ていただきたいので、早くライブをしたいです! 体力はちょっと落ちているかもしれないけど、ダンスは自信ありです!(笑)」 [17]と彼女は語っている。
 また初の選抜入りを果たした27thシングル期間には、歌番組の収録に向けて「『実力に見合ってない』と思うからこそ、すっごい練習してるんです。収録のたびにダンスの先生に相談しながらニュアンスに変化をつけて、自宅でも鏡の前で何度も確認して……。(中略)たくさん映るわけじゃないので、一瞬に命を注いでます(笑顔)。」 [18]と話していた。

 早川は、そんな努力の原動力について、『BUBKA 2021年3月号』で以下のように語っている [19]。

 認めてもらうためには、一生懸命努力するのが最低条件だと思うし、自分の土台として、やると決めたことは怠らないっていうのがあるから。誰かに認めてもらいたいっていうより、自分が決めたことをやらないのが気持ち悪いんです。
(中略)
 自分はまじめっていうアピールをしたいわけじゃないけど、地道にコツコツやってることを見てくださる方もいるし、「その姿に元気をもらった」って言ってくださる方もいるので。見てくださる方や、同じまじめな方たちのためにも、頑張りたいです! そう思いながらも、やっぱり自信がない、もう無理!って気持ちもあるんですけど。

 苦しみとは闘い続けてきたのだろう。
 『EX大衆 2021年8月号』で彼女は自身の性格について、「考え込んでしまうほうだとは思います。『周りの目は気にしません』というタイプに見られがちだけど、本当は“気にしい”で。『どう思われたかな』とか『いまのひと言で嫌われたかもしれない』と考えてしまうんです。でも、最近は『考えたって変わるわけじゃないから』と自分に言い聞かせるよ うにしています。『思ってるより、みんな気にしてないよ』と自問自答を繰り返しながら、少しずつ自分を肯定できるようになりました」と述べていた [18]。
 また『B.L.T. 2022年4月号』では、「自己肯定感を高めていきたい」と語った上で、現状の自己肯定感について問われた際には「持ちたいし、持とうとしているけど持てないから、ちょっとつらいなっていう気持ちも、正直あります」と心境を吐露していた [11]。

 でも、それだけストイックに努力を重ねてきたからだろう、早川はお芝居・ダンス・歌・バラエティとあらゆる分野で活躍する姿を見せてくれた。あらゆる分野で活躍するその凄さは、乃木坂46の中でも随一だったと思う。
 『らじらー!サンデー』はいつも楽しませてもらっているし、たくさんの舞台やドラマでその演技を見るのは楽しかった。ライブも、『乃木坂工事中』『乃木坂どこへ』『ノギザカスキッツ』『乃木坂スター誕生』も、彼女のおかげで楽しかったことは何度もあった。イノフェスで活動復帰後の姿を見れたのも嬉しかった。

 特に、お芝居の仕事の評判はすこぶる高かった。早川が卒業・芸能界引退を発表した時、『乃木坂46版ミュージカル 美少女戦士セーラームーン2019』演出のウォーリー木下氏、舞台『スマホを落としただけなのに』脚本・演出の横内謙介氏、『スマホを落としただけなのに』原作著者の志駕晃氏、『ボーダレス』『アクトレス』原作著者の誉田哲也氏、ラジオドラマ『監視員しおりは座らない』演出の河カタソウ氏、朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない』劇中ドラマ監督の熊坂出氏らが惜しむ声をツイートした。(ミュージカル『CROSS ROAD』脚本・演出の藤沢文翁氏が早川休演の際に寄せた温かいツイートや、『アクトレス』演出の頃安祐良氏が早川とまた仕事をしたいと述べたツイートにも触れておきたい。)
 私は乃木坂46ファンとして多くのメンバーの卒業を経験してきたが、このような光景を見るのは初めてだった。それだけ、彼女が高く評価されてきたことの証だと言えるだろう。

 あんなにも努力を重ね、こんなにも評価されていたのだ。自分は偉大なアイドルだったと、どこまでも鼻を高くして卒業していってもらいたい。

参考文献

[1]乃木坂46公式書籍 10年の歩き方, KADOKAWA, 2023.
[2]B.L.T. 2021年3月号, 東京ニュース通信社, 2021.
[3]EX大衆 2021年2月号, 双葉社, 2021.
[4]日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2022, 日経BP, 2021.
[5]B.L.T. 2019年3月号, 東京ニュース通信社, 2019.
[6]ENTAME 2019年9月号, 徳間書店, 2019.
[7]B.L.T. 2020年4月号, 東京ニュース通信社, 2020.
[8]アップトゥボーイ 2021年8月号, ワニブックス, 2021.
[9]Platinum FLASH Vol.16, 光文社, 2021.
[10]blt graph. vol.71, 東京ニュース通信社, 2021.
[11]B.L.T. 2022年4月号, 東京ニュース通信社, 2022.
[12]日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2023, 日経BP, 2022.
[13]GIRLS STREAM 05, 玄光社, 2022.
[14]N46MODE vol.2 乃木坂46 デビュー10周年記念公式ブック, 光文社, 2022.
[15]日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special, 日経BP, 2019.
[16]BUBKA 2019年9月号, 白夜書房, 2019.
[17]FLASHスペシャル グラビアBEST 2020年初夏号, 光文社, 2020.
[18]EX大衆 2021年8月号, 双葉社, 2021.
[19]BUBKA 2021年3月号, 白夜書房, 2021.

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