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え、それでいいんだ? マカピーな日々#0310

マカピーです。

ウズベキスタンにいた頃の事です。

医療関係の仕事をしていたのですが、ある日州立病院へ行くと廊下で何やらグツグツ煮ているものがありました。

近寄ってみると、ずん胴鍋の中でぎっしりと使用済みシリンジ(使い捨て注射器)が煮沸されているので案内してくれていた看護部長に尋ねました。

マ:「これは、何をしているのですか?」

看:「注射器を煮沸しています」

マ:「どうしてですか?」

看:「再度使うための消毒です」

マ:「これって使い捨て注射器ですよね」

看:「はい、もったいないから使います」

マ:「いやいや、それってマズいでしょう」

看:「何故使ったらだめなのですか?」

マ:「これは一回しか使えないディスポ・タイプですから!」

看:「いえ、幾度でもこうして再利用できますよ」

マ:「そういうことではなく、感染防止のために使いまわしてはダメなんです」

看:「どこの病院でも同じ事やっていますよ!」

マ:「え、そうなの?」


ウズベキスタン共和国は特段貧しい国ではないのですが、医療設備や医療器具については疑問が多いところでした。

たとえば、日本人の看護師が配属された病院で驚くのが、やはりディスポのシリンジを幾度も煮沸して使用するので、プラスチックがボロボロになり針が落ちたそうです。

更に針も錆びつき、脂肪がつくのか、針が皮膚をうまく突き破らなくなると、砥石の上で針研ぎをしているのだそうです。

これって、ディスポの注射器でやる事ではありません。

彼女がひどい状態のシリンジをゴミ箱に捨てたら、それに気づいた医者がやってきて怒鳴ったそうです。

「誰だ?まだ使えるシリンジを勝手に捨てたやつは?」

彼女が、手術に立ち会ったときの事です。

患者に輸血されるパックを見るとまだ凍ったままの状態だったそうです。

彼女は必死になって輸血パックを自分の手のひらで温めて、もみほぐして溶かして流れるようにしたそうです。

息を吹きかけてパックを溶かしていながら、フッと見上げると手術室の窓が開いていて、そこから小鳥が出入りしていたのだそうです。

手術室なのに、これじゃあ無菌なんてとても無理だと悟ったそうです。


マカピーも日本に帰国した際に健康診断していたのですが、「ウズベキスタンでもできる」と聞いて、時間節約ができそうだと指定された病院へ行った時の事です。

でも、これまでの健康診断と様子が違うのでした。

まず、身長体重の測定での疑問です。

針がきちんとゼロを指していないヘルスメーターに乗ったのはまだいいのですが、次の身長測定では壁際に立たされるとそこに子供用の目盛りのあるキリンの絵がはりつけてありました。

当然、キリンの絵の目盛りでは120センチ程しか測れません。それでもそこに立つと、マカピーよりも背の低い看護師が伸び上って、持っていたノートを私の頭に乗せてそのあたりに定規を当ててキリンの目盛りまで測り足していました。

「おいおい、本当に普段から健康診断しているのかな?」

次に検尿をするというので、奥さんと一緒に別室へ行くと、トレイの上にガラスのジャムの瓶のような容器が並べられています。

トイレへ行きそれに採尿して、そこにあるトレイにおいておくように指示がありましたが、容器が未だ濡れたままなのです。

マ:「これ、濡れてます」

看護師:「問題ありません」

マ:「それに容器に私の名前のラベルもありません」

看:「ノープロブレム!」

怒鳴られてオシマイ。

次は視聴覚検査でしたが、最大の問題は採血でした。

採血した血液を試験管に入れて、試験管立てに置くのですがここでもラベルが貼っていないのです。

マ:「ラベルに私の名前がないですが、他のサンプルと混在し見分けられなくなりませんか?」

看:「私をなんだと思っているの。毎日たくさんの採決をしているプロなのよ!誰の血液かすべて記憶しているに決まってるでしょう」


数日たって顧問医師より連絡がありました。

顧:「悪い知らせがあります。お二人とも尿路感染症と糖尿病それに肝障害の疑いがあります」

マ:「え? ちょっと待ってください。先生も昨年の私の検査結果を見ているはずですから急激に数値が変わるというのはおかしいと思いませんか?それからあの病院の検査ではいくつか疑わしい点がありました。」

その後顧問医が検査に同行するからもう一度検査してくれと頼んできたのです。どうやら検査料を払い戻すのが嫌だった病院側が無料で血液と検尿の再検査することにしたらしいのです。

次の検診では検尿の容器は濡れてはいませんでしたがジャムの空き瓶でした。

採血の際に「私の名前を書いたラベル」を顧問医の前で要求すると、前回と同じ看護師が私の血液の入った試験管に、ルージュの口紅でベトーッと印をして

「フン、これで満足?」とそっぽを向いたのでした。

検査結果はすべて正常だとありました。

その検査の様子を、前述の日本人看護師に伝えると

「マカピーさん、うちの病院も同じです。血液採取でも試験管にラベルなんて貼ってません。当然係の看護師は検査数が多くなるとどれがどれだか分からなくなるんです。そうするといきなりグチャグチャに並べ替えちゃうんです。きっとそうやって罪の意識を消すんでしょうね」

つまり、最初の検査でマカピーと奥さんのまともな検査結果を取り違えられた疾患を持った患者は正常値の結果を貰って安心しているのかも知れないのです。

健康検査は何のためにやるのかいろいろ考えさせられた国でした。

マカピーでした。

最後までお読みいただき感謝します。日本では融通が利かないくらいしっかり検査してくれますね。




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