魚に人の薬なの? マカピーの日々 ♯1620
マカピーです。
12月初旬にマレーシアに戻る前のお話です。
ハナさんの臨時クリニック開催を経営するガソリンスタンドのかたわら、事務所開放でお手伝いしてくれるフロレンスの兄弟が持つ養殖池で最近その収穫が行われたのでした。
そのおこぼれで昼食にその魚をご相伴にあずかることになりました。
ちょうど季節外れの大型台風が来るので、その被害を避けて少し早いけど収穫する事にし多との事で、確かに小ぶりではありました。
ティラピア養殖の歴史
その養殖池で飼っていたのはこちらで最もポピュラーな淡水魚であるティラピアです。
以前にもお知らせしたが、もともとこの魚は中東やアフリカのナイル川が原産でイエスキリストの使徒であるペテロや他の2人もヨルダン川上流にあるガリラヤ湖の漁師でティラピアを獲っていたものと思われます。
今では世界的に養殖されている淡水魚の人気の高いのこの魚には、数奇な運命があったのでした。
それは1950年代に中東から日本に食糧増産の目的で寄贈され養殖されその淡白な味わいから「イズミダイ」の名前で広まりはしたのですが、そもそも海ん囲まれた日本であまり需要は無かったようです(今でも当時の末裔のティラピアが野生化して九州や沖縄の川に棲息してるのをテレビの旅番組で見た事があります)
ところが、この魚は皇室外交でタイ国の前プミポン国王に送られてから大変化をもたらします。
当時タイの内陸部は貧困問題が深刻で動物性たんぱく質が欠乏していた事もあり、ティラピアの養殖は大歓迎されたのでした。
背びれに鋭い突起があり、注意しないと怪我をする事がありますが白身の肉はとても淡白で上品な味わいがあります。
やがて、ホルモン処理で稚魚をすべてオス化させてしまう技術が確立されると爆発的に商業化して行くのでした。
何故この処理が必用かというと、メスは水温が高いと体が小さくても繁殖できるようになり交尾産卵ばかりして大きくならないから無駄だという考えです。
そうすると肉付きの効率が悪いので、ホルモン処理で全部をオス化してさせないようにしてしまったと言うわけです。
ティラピアにしてみたら、何の因果でここまでいじられるのか分からないでしょうね?
それからオスばっかりって、魚にとってむさくるしくないかしら?
さて冒頭にありましたようにフィリピンの各地、特に山間部の小川をせき止めて養殖池を作りそこでティラピア養殖しているのを見かけます。
ザンビアで世界中の魚を輸入していた「キャピタルフィシャリー社」を尋ねた際に、タイ産の冷凍ティラピアが大量に輸入されていました。
更に2019年にマカピーはヨルダンの死海近くの村々で「ティラピア養殖」事業に関わっていました。
つまり本家本元のヨルダン川の原種に近いものだったのかはわかりませんが、地元の人は「ナイル原産の魚は黒い!」と言ってましたけど、マカピーからするとヨルダン川減産なのか違いが分かりませんでした。
イラクの鯉料理
一方ヨルダンではイラクの戦火から逃れて来たイラク人が鯉料理を豪快に火で炙って食べるレストランがありました。
鯉の形が違うので、紹介してくれた魚の専門家に尋ねると「チグリス川流域では昔導入されたドイツ鯉が有名になってここでも養殖されるようになった」と教えてくれました。
何でドイツ鯉?なのかよくわかりませんでしたが、こうして生態系は人間の経済活動でかなり混乱する事が良く分かりました。
マカピーは「鯉」と聞いてあの細かい骨にウンザリしたのですが、ドイツ鯉はそれほど骨が細かくなく美味しくいただけました!
首都アンマンから大地溝帯を下って死海に到達する前に、大きなため池を作っているところがあって魚の専門家と一緒に見学に行くと「オレはサダムフセイン大統領の親衛隊にいたんだけどあのままいたら殺されちゃうんで、家族ともども逃げて来てこっちで鯉料理レストランを始める事にしたんだ。これはその養殖池なんだ」
ナルホド。
魚に人の薬を与えるのか?
ティラピア養殖では浮く餌を食べさせるんです。それは彼らが一度沈んだ餌を食べないからです。それでもやがて水にふやけた餌は沈殿し魚の糞と混ざり合って固まるのでした。
ヨルダンの灌漑用池を利用した養殖ではビニルシートの底から掻きだされた白い泥が固まって干からびてカチカチになっている様子を見て、何だか石膏を見ているような気分になりました。
養殖とは、単一種が大量に飼育される事です。
つまり自然な状態とは大きく異なるので、何年も魚養殖をしている養殖池が汚染されると、そこの魚も病気になりやすくなります。
ですから一度病気が発生すると、瞬く間に全体に広まり被害甚大となります。
ハナさんの親戚のピーターも養殖池の病気の事で頭を痛めていました。
ところがある日「ティラピア養殖で解熱剤のパラセタモール(薬)が効いているらしい」と聞いたのです。
マカピーは「あれって、人間の薬でしょう?」と不思議に思いました。
誰かが病気の魚を前に藁をもすがるつもりで試したら、効いたのかもしれません。
でも、そんな薬漬けの魚を食べて大丈夫なのかなあ?
ちょっと話題がわき道にそれましたが、こうして人に歴史があるように、数奇な運命を持った魚もいるって事ですね。
マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。ところで魚も風邪をひくと咳をするのかしら!?