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これは詐欺なのか、詐欺じゃないのか? はっきり言わないセールストークが日本(の田舎)っぽい

[文末に追記あり。]

少し前の土曜日、郊外のショッピングモールへ行った。 滞在中の地方都市の、さらに郊外である。 数多の店舗が並ぶ中、そのモールのメインのスーパーマーケットに入ってみたら、通路の脇に台を置いて、写真やポスターが貼り出されていて、作業着っぽい揃いのジャケットを着た人が2人、キャンペーン的なことをやっているのがわかった。 通り過ぎようとしたら、ポケットティッシュを渡された。
 
「お話いかがでしょうか。 粗品をお配りしております。」
 
何のキャンペーンなのかわからない。 ティッシュを見ると 「一軒家の方に もれなく粗品 差し上げます!」 とあるのだが、何の商品か、どこの会社か、何も書いてない。 目の前のテーブルを見てみると、
 
初期費用 0 円
 
ってでっかい赤字の表示があるのだけど、ここにもそれ以外の文字が何もない。 何の初期費用なのか?
 
「お住まいは一軒家ですか?」
 
「そうですね。」 私の自宅は集合住宅だけど、ティッシュを見て実家を連想していたので、実家のことを答えてみた。
 
「お風呂とかどうですか、ガスは電化ですか? オール電化とか?」
 
「ガスはプロパンガスですけどね、」 ここまできても何の話か全くわからないので質問してみる。 「これは何の話ですか? 初期費用 0 円って書いてあるけど。」
 
「そうなんですよ、初期費用なしで太陽光パネルを取り付けられるんです。 ご興味ありますか?」
 
おぉ、太陽光パネル。 そう言われてみれば、「初期費用 0 円」 の文字の下に、それらしい写真がある。 鏡の集合みたいな。
 
「興味はありますよ、だから初期費用 0 円っていうんだったら、どういうことか知りたいけど。 初期費用なしっていうと、支払いなしであの写真みたいなのを設置してくれるということ?」
 
「えーとですね、いまガス代をいくら払ってますか? 仮に 5000円だとして、まずこのガスを電化にしていただければ、元の電気代を 10000円とした料金と合わせた 15000円分を、全部このパネルでまかなえますよ、ということなんです。 太陽光ですから、天気に左右されるところはありますが。」
 
なんでいきなりガスの話? 「その話だと、ガスを電化にする工事も必要じゃないですか。 初期費用なしというのは、そっちの工事も含んで 『なし』 って言ってます?」 (そうなのか?すっごい変じゃない?と思いながら) 「初期費用 0 円って何ですか、何の初期費用? あのパネルを 0円で設置してくれるということですか?」
 
「パネルからの電気がありますから、電気代とガス代がかからなくなるということですね。」
 
はぁ? 何言ってんだこいつは。 質問に答えてない。 「ちょっとよくわからないんですよね。 初期費用ってどこの部分ですか?」
 
「そうですねぇ、あの、例えば車を買うローンってありますよね。」 ふむ。 「買ったあとに毎月ローンの返済をしますけれど、車があることでタクシー代やバス代を払わなくてよくなりますよね。」
 
ほぅ~、これで答えたつもりか。 馬鹿にしてるね。 初期費用 0 円 なんて嘘っぱちなのに、適当な説明ではぐらかしているのだ。
 
「なんだ、それだったらやっぱり始めはお金を払うんだけど、そのあと自分の中で相殺して元が取れるってだけでしょ。 太陽光パネルってものはいいと思うし、本当に初期費用が 0 円っていうんだったら興味はあったんですけどね。」
 
「そうなんです、新しい条例のこともあって、いま太陽光パネルはとても人気で、皆さんにご興味を持っていただいているんですよ。」 適当なこと言ってるとは認めずに、さらに話をはぐらかす。
 
「そうでしょうね。 でも 『初期費用 0 円』 っていう書き方はちょっと変ですよね。 法律的に問題ないんですかね?」
 
「うーん、うちは長年これでやってますからねぇ。」 長年やってるなら尚更問題ではないか。 でも、書き方が変だという私の指摘については否定しなかった。
 
これは不当表示にあたると思う。 この業者のほうも、きっと自覚があって、後ろめたさがあるのだ。 社名や商品名などがまったく表示されておらず、テーブルクロスにそれらしい名前とロゴがちょっと見えていたぐらい(私もその名前は覚えていない・・・)。
 
初期費用だけでなく、内容についての具体的な表示(説明文とか金額とか) も一切なかった。
 
あとで考えてみると、これって人の良いお年寄りなんかだと、はぁそうですねぇなんて言っている間に契約させられてしまうのではないだろうか。 この話のあと業者は、「ご興味ありましたら、後日ご自宅に担当の者がお伺いして、ご説明させていただきます」 と言っていた。 家に来られて、もっともらしく説明されたら、疑うよりも 「せっかく来てもらったんだし。」 「断ったら悪いから。失礼だから。」 「いい話なんでしょ。」 ということになってしまいそうだ。
 
ひと昔前からある、「家の瓦が危険だから修理が必要です」 とかいう悪質業者とまったく同じ。 「たまたま通りかかったらお宅の瓦が目に入ったのですが、ちょっと危険ですね」 とかいって修理の契約を結ばせて、大した仕事もせずに費用だけぼったくる。
 
今ネットを見てみたけど、そちらも詐欺だと認識されているのだね。
 
(屋根修理の詐欺に騙されるな!代表的な手口と被害を防ぐ5つの対策
https://yuko-navi.com/roof-repair-fraud
 
今回の太陽光パネルの業者は、明らかにおかしいのだけれど、堂々とショッピングモールでキャンペーンをしていたということで、信用してしまう人もいるのかも(出店するのに審査ってないのかな??)。 もし契約したらどうなるのだろう。 「初期費用以外に必要な費用が・・・」 とか言いながらぼったくるパターンなのだろうか。
 
太陽光パネルは、東京都で義務化が検討されていて関心が高まっていると思うが、こういう業者にひっかからないように気をつけよう。


[後日追記: あとになって、これって 「ローンを組むから初期費用が0円」 という理屈なのだろうと思い至ったので、タイトルを変更してみた。 また、当初、こういう一般的な(ちゃんとしてるはずの)営業トークの場で質問にまともに答えないなどのコミュニケーションの崩壊っぷりは、非常に日本っぽいと思ったのだけれど、これもよく考えたら古今東西の典型的な詐欺師の手法である。 実際にこれがローンだとして、本当に 「初期費用 0 円」 か? ローンなら頭金というものがあるはずでは? 説明する気は全くないよね。 そもそも何を売っているのかすら、一文字の表示もなかった。 景品表示法や製造物責任法などで、消費者に誤解を与えないようにする義務が定められているが、ここにそれらの法律の存在は全く感じられない。 法律遵守という点で言えば東京では対応する意識が浸透している印象があって、こういう経験は久しくしていないのだが、今回のこれは地方都市だからこそ起こり得た、地方っぽい問題と言えるかもしれない。]


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