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テロの記憶 in New York (1): 始まり

少し時間が経ってしまいましたが、先日9月11日は、アメリカの同時多発テロから20年という節目の日でした。 何日か前から、テロ当日とその後の20年を振り返る特集の報道があちこちで見られましたね。 事件を間近で体験した私は、それらの報道や20年目の式典を見て、その時のことを思い返していました。

その時私はニューヨークで、World Trade Center から数ブロック、約 500m 先の大学構内にいました。

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これはその当時の大学のカタログです。 こういう距離感です。 後ろに見えているのがツインタワーですけれども、実際に見上げると、このカタログを縦に2~3冊並べたぐらいの高さに見えていたように思います。

ニューヨークに住んで2年目。 まさにその9月から、晴れて BMCC (Borough of Manhattan Community College) という大学の学生になり、秋の学期が始まったばかりでした。

2001年9月11日、火曜日。 その日の朝いちの授業は ESL (English as a Second Language)、英語が母国語でない人のための英語です。 8:00 か 8:10 頃に開始だったと思います。 先生はどこかの学校で校長か何かを務めて引退した、70代ぐらいのおじいちゃん、そして生徒は全員が英語を勉強中の、留学生の私と同じような立場の人ばかりが20~30人です。

その日もいつものように、教科書の長文を読んだり、設問に答えたりしていました。 忘れられない話ですがその日の長文の内容はなんと、広島の原爆の話! クラスで唯一の日本人だった私は、原爆のことを先生に訊かれて答えたりしていました。

すると突然、どこからか、どかん!というような、何かが爆発したような音が聞こえました。 その音は耳に残っていますけど、文字で表すことはできません。 その時、先生も生徒もみんなで一瞬顔を見合わせたのですが、何が起こったかわかるはずもありません。 誰かが、”It’s a bomb!” (爆弾だ!) と言って、皆が笑い、また授業に戻りました。

それから10分ぐらい経った頃でしょうか、よく遅刻してくるA君がその日も遅刻して現れました。 でもいつもと様子が違います。 「大変だ! ビルに飛行機が突っ込んで、大騒ぎになってる!」

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