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「その年、私たちは」グローバル配信の韓国ドラマの新境地

■ドラマの紹介

高校時代に、学年1位の秀才女子と、学年最下位のサボり男子がドキュメンタリーを撮されることになった。10年後にこのドキュメンタリー動画がバズり、世間では青春そのもの!と大人気になり、10年後の彼らが見たいというニーズに応えるように、再度2人は撮影されることになる。実は2人は当時、ドキュメンタリー撮影をきっかけに付き合い、破局から5年が経過していた。もう二度と会うことはないと辛い別れを経験した2人だったが、再会したことを機に、複雑な思いに揺れ動いていく。

■暴力のない世界

 唐突ですが、映画やドラマというのは、多かれ少なかれ、現実世界の暴力性を描くものだと感じています。権力に紐付いた暴力、言葉の暴力、人間関係の暴力、、、。人は傷つき、力をつけたいと願い、自分や誰かを守りたいと思うもの。具体的な暴力や敵を描くものもあれば、見えにくい場合もあります。繊細な表現で、暴力性に毅然とした態度で立ち向かうもの、立ち向かえるようになるまでのゆらぎを描くものなどもあります。

 このドラマで私が感じた印象は、世界にあふれている暴力性を排除しようと努めたということです。どこまでいっても世界は優しくあったように思います。高校時代に読み漁っていた、マーガレットやララコミックスの名作少女漫画を思い起こしました。

 付き合う相手に介入し続ける毒オモニは出てこず、会社では女性であることを潜在的恋愛対象として見ることなしに仕事の能力を評価してくれる、そんな世界です。要は、外敵がいない世界で、「自分はなにがやりたいか」を集中して考えられる、そんな環境構成になっているようです。

(後半のエピソードで、何気ない会社の同僚との会話で彼女はいないの?とプライベートなことを聞いているシーンがあって、異性愛者前提の介入で違和感ありましたが。)

 主要人物の感情の機微を追う美しい映像が続くので、その映像美に見入っているうちにエピソードがどんどん進んでいってしまう、そんなドラマです。

 オリジナル・サウンドトラック(OST)も、BTSのVはじめおしゃれで印象深いものばかりが効果的に挿入されています。(無音のシーンも多く、だから余計にOSTが印象的)

 【若者が「自分のやりたいこと」を「誰かのせいにせず」立って歩み進んでいく世界、そういう世界って美しい、それって怒鳴られたり、後ろ指さされたり、逃げ出したりしなくても出来るはず】そういう韓国ドラマ制作の次世代の人たちの示す世界観みたいなのを感じました。

個人的には、最近の韓国の作品の多くが、自己決定/自意識というテーマに確実にシフトしているように感じている中、若い世代が作った作品が「目標をもって生きることを良しとした(競争からは降りずにいく)」印象が残って意外でした。

■美しい、とっても美しい映像

 そして映像は、とにかく俳優チェ・ウシクが美しいのです。最後の最後まで。彼の表情が見たくて、最後まで見切った、そんな作品でした。

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